川の畔でひと休み


 盗賊達を始末して先へと進んだ。道を進んでいる途中、馬車からひょっこりとシアが顔を出して話しかけてきた。


「お兄さんつらそう……大丈夫?」


「あぁ、大丈夫だ。それより、さっき怖くなかったか?」


「ううん!!お兄さんが守ってくれたから大丈夫!!」


「そうか。」


 満面の笑顔のシアの頭を撫でた。これだけでだいぶ癒される。


 しかし、人を殺すのは後からじわじわ来るものがある。気を強く持たないと、この負の感情に呑み込まれそうだ。


 それからは特に何事もなく、進むこと2時間程で川を見つけることができた。ここなら少し休憩してもよさそうだ。


「グレイス、そろそろ休憩しよう。」


「えっ!?自分まだまだ大丈夫っすよ?」


「いや、休憩はできるときにしておかないとな。この先休憩できる場所があるかわからないんだし。」


 いくらグレイスが疲れていないとはいえ。この先こういう場所があるかわからない。休めるときには休めばいいのだ。


「そういうことなら、わかったっす。」


 馬車を止めグレイスの装備をはずした。


「わーい♪冷たいお水!!」


 シアが川に足をいれバシャバシャと遊んでいる。


「あら、いいわね。ワタシも水浴びしようかしら。」


 ランも川に入ると翼を生やして水をかけたりしている。


「アタイも足だけ浸けようかねぇ~……ってつめたっ!!」


 ドーナは岸に座り足だけを川に入れていた。


 一方グレイスはというと……。


「とれたっす~!!」


 前足で器用に泳いでいる魚を川岸にうちあげていた。


 うん、熊かな?


「ふわぁぁ、グレイス凄い!!」


 その光景にシアが目を輝かせている。


「シアもやる!!…………えいっ!!やったぁ~お兄さん取れた!!」


 狙いすまして川の中に手を突っ込んだシアの両手には、大きな魚が捕まえられていて、ビチビチと激しく暴れていた。


「わっわっ!!あ、暴れにゃいで、ふにゃあ!!」


 そして、無情にもつるんとシアの両手から魚が逃げてしまう。


「おさかな逃げちゃった。」


「シア、魚を持つときはな?魚の顔の脇にあるエラに手をいれると逃げないぞ?」


「そうなの!?わかった、もう一回やってみる!!」


 するとシアはまた水面とにらめっこを始めた。


「あら?面白そうね。ねぇドーナ、ワタシとどっちが多く魚を取れるか勝負しない?」


「暇つぶしにはちょうどいいねぇ、やってみるかい。」


 また二人はここでも勝負をするようだ。休憩のはずだが……まぁ、楽しんでいるからいいか。

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