旅立ちの朝


 朝食を食べ進めているみんなに、俺はある話題を持ちかけた。


「食べながら聞いて欲しいんだが、次に行く場所をどこにするか決めたいんだ。」


「シアはどこでもいい!!お兄さんに着いていくから!!」


「ワタシもそうね、人間の国はそんなに詳しくないし。」


 シアとランはこちらの動向に合わせてくれるようだ。そんな中、ドーナがおすすめの場所を紹介してくれた。


「それなら1つ隣のなんかどうだい?あそこは近くに大きな湖があってねぇ、そこで取れる魚介が有名なんだよ。」


 湖が近くにあるのか……面白い場所だな。それに湖に住んでいる魚介も気になる。まだ見ぬ食材の気配がプンプンするぞ。


「うん、ならそこにしよう。ちなみに馬車でどのくらいかかるんだ?」


「だいたい1日ってとこだねぇ、まぁグレイスが馬車を引っ張るならもう少し早く着くと思うよ?」


 1日か、そんなに距離は無さそうだな。


「よし、それじゃあ次はそのシュベールに行こう。」


「おさかな楽しみ~♪」


「美味しい食べ物があるなら、それを更にヒイラギが美味しくしてくれるものね。賛成よ。」


「自分も大丈夫っす!!」


「そうか、それなら朝ごはんを食べ終わったら早速出発しようか。」


 次に向かう場所を定め、朝ごはんを食べ進めるのだった。


 シュベール……魚介の他にも何かあるのだろうか? まだまだこの世界には見たことのない食材がたくさんあるはずだ。今から楽しみで仕方がないな。







神々side


「ふふっ、どうやら次に行く場所が決まったようですね。」


 女神イリスは紅茶を嗜みながら下界を見ていた。自分がこの世界に転生させた彼を見るのが、最近の彼女の楽しみだった。


「それにしても、神華樹の種がまだ下界にありましたか。ヒイラギさんが育てる神華樹はどんな花が咲くんでしょうね。」


 神華樹は、その育てる人によって咲く花が変わる特殊な花である。


「神華樹が育ったらそこを神木にしてもいいかもしれません。」


 イリスはヒイラギが作る料理に強い興味があった。あそこまで食べている人を笑顔にする料理は、いったいどんな味がするのか。


「早く神華樹を育てて下さいね。」


 神華樹が育てば、いつでもそこに降臨できる。そして、降臨できれば彼の作るあの料理を食べることができる。


「ふふっ♪楽しみですね~。」


 イリスが笑みを浮かべているとそこへ、一人ある人物が現れた。


「珍しいわね。そんなに楽しそうにしてるイリス初めて見たかも。」


「あら、メルちゃん来てたんですね?」


「来てたもなにも、イリスが呼んだんじゃない。」


「そうでしたね、つい楽しくて忘れちゃってました。」


「まぁ、いいわ。それで話ってなに?」


「えぇ、どうやら今度貴女のところにヒイラギさんが行くらしいので、その報告です。」


「あの例の転生者?へぇ~、楽しみにしとくわ。」


「ふふっ♪よろしくお願いしますね?」


 今日は水の女神メルを茶会に迎え、話が弾むイリスであった。

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