カグロの漬け丼


 こちらの作業が終わったのでドーナとランの方に目を向けると、あちらでもどうやら決着がついたらしい。


「今回はアタイの勝ちだ。」


「~~~っ。つ、次は負けないんだから!!」


 ふふんと勝ち誇るドーナと、悔しそうな表情を浮かべるラン。今回の競り合いはドーナが勝利を収めたようだ。


「計り終わったか?」


「あぁ、今ちょうど計り終わったところだよ。」


「二人ともありがとう、助かったよ。」


「大丈夫さ、このぐらいなら任せてほしいね。」


「えぇ、是非手伝わせて欲しいわ。ぜーったいリベンジしてやるんだから!!」


 ドヤ顔を決めるドーナにランがバチバチと火花を散らしていた。


 ランのリベンジのチャンスを設けてやらないといけないだろうし、またお願いしてもいいかもな。


「あぁ、また次もお願いするよ。」


 さて調味液もできたから、漬けていこう。カグロの刺身を調味液の中に浸していく。


「後はご飯が炊き上がるのを待つだけだな。さぁ、それまで少し休憩だ。」


 ご飯が炊き上がるのを待っている間、みんなで飲み物を飲みながら休憩することにした。飲み物はドーナとランにはコーラ、シアはオレンジジュース、俺はコーヒーだ。


「なにこれ!!すごいシュワシュワしてるわ。」


「こんな飲み物があるなんて……。」


「それはコーラっていう飲み物だ。炭酸が口のなかで弾けて、飲んでて楽しいぞ?」


 二人は初めてのコーラに驚いていたが一口飲むと……カッと目を見開いた。


「これ、病みつきになりそうね。」


「暴力的なまでに美味しい飲み物だよ。」


 コーラの魅力にすっかり二人は虜になったようで。ごくごくと勢いよく美味しそうに飲み始めた。

 

 そしてつかの間をみんなでゆっくりしていると。ピーッと言うと音と共にご飯が炊けた。


「よし、それじゃあ盛り付けるぞ。」


 どんぶりにご飯をよそい、その上に大葉を一枚敷く。その上に調味液に浸けておいたカグロの切り身をのせ、最後真ん中に卵黄を落として回りにゴマを振りかければ完成だ。


「よし、食べよう!!」


「ふわぁぁ!!おさかないっぱい!!」


「凄い食欲を誘う匂いね、お腹減ったわ~。」


「ヒイラギの作る料理は見た目からもう美味しそうだねぇ。」


 みんなそれぞれ、自分のどんぶりを持ってテーブルへ向かった。後から味噌汁と箸を配膳していく。するとドーナとランの二人が配膳された箸を見て首をかしげていた。


「ヒイラギ、これなにかしら?」


「アタイも見たことないよ。」


「あぁ、それは箸と言ってな。俺の住んでいた所ではそれを使って料理を食べるんだ。」


「へぇ~、どうやって使うんだい?」


「ヒイラギお兄さん!!シアが教える!!」


「そうか、じゃあシアお願いできるか?」


「うん!!えーっとまずはここをこうやって……。」


 シアによる箸の使い方講習が始まった。すると驚くことに、二人ともすぐに箸を使えるようになったのだ。


 本当はめちゃくちゃ難しいはずなんだが……シアの教え方がよかったのかな?


「慣れるとこれ結構使いやすいわね。」


「うん、こんなちっちゃい物も掴めるよ。」


 二人は小さな米粒でもひょいひょいと、簡単につかめるようになっていた。箸をまるで自分の指のように扱えている。


「二人とも使えるようになったみたいだな、シアありがとう。」


「これでみんな一緒っ!!」


「あぁ、それじゃあ改めて食べるとしよう。」


 俺が手を合わせるとみんなも手を合わせた。


「「「「いただきます!!」」」」


 そしてみんな揃ってカグロ漬け丼を食べ始めるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る