ツナとキノコの和風パスタ


 コックコートに着替え厨房に立ち、何を作るか頭を悩ませる。

 いろんな場所を探し、食材を目にしては料理のレパートリーを頭の中から引っ張り出す。


 そんな時ある食材が俺の気を引いた。


「ん、ツナ缶か……。こいつがあれば和風パスタが作れそうだな。」


 さてそうと決まれば、材料の準備だ。


 玉ねぎは薄すぎず厚すぎず、ちょうどいい幅にスライスしていく。次に軸を切ったシメジをほぐす。

 食感にアクセントを加えるために水菜も入れよう。これはよく洗って3センチぐらいの長さに切りそろえる。


「よし材料はこれで切り終わったな。ちょうどお湯も沸いたし、パスタを茹でよう。」


 たっぷりの沸騰したお湯でパスタをゆでる。その間に今回のパスタのベースになるソースを作っていこう。


「まずはオリーブオイルで玉ねぎとしめじを炒めて……。」


 玉ねぎとしめじに火が通ったら軽く油を切ったツナ缶を入れて炒める。


「最後に醤油を入れて軽く焦がして香りをつける。」


 しっかりと醤油の香りがソースに移ったら、パスタの茹で汁を少し加えて、塩、胡椒で味を整えたら和風パスタソースの出来上がりだ。


「よし、パスタが茹で上がったな。」


 後は茹で上がったパスタを入れて、一緒に水菜も入れる。そして鍋を振ってパスタにソースを絡ませていく。


「よし、完成だ。」


 出来上がったパスタを盛り付けていると……。


「お兄さんできた!?」


「ほぇ~、いい匂いだねぇ。」


 厨房とホールを繋ぐ通路から、二人が興味深そうにこちらを覗いていた。


「もう完成したから、座って待っててくれ。」


「はーいっ!!」


「わかったよ。」


 二人が戻っていくのを横目で見ながら、俺は皿にパスタを盛り付ける。そして出来立てのパスタを持って、二人が待つテーブルへと向かった。


「ほい、今日はツナとキノコの和風パスタだ。」


「ふわぁぁ、おいしそ~。」


「つな?わふう?なんかわからないけど凄い食欲を誘う匂いだよ。」


 ドーナはツナという言葉も和風という言葉もわからないようだが、このパスタの放つ香りは彼女の胃袋を刺激しているらしい。


「さて、それじゃあ食べようか。」


「うん!!」


「「いただきます!!」」


「い、いただきます。」


 さっそくシアがフォークにパスタを大量にぐるぐる巻きにして食べていた。たくさんほおばったせいか、まるでリスのようにほっぺが膨らんでいる。


「それじゃあアタイも……はむっ、んっ!?」


 ドーナは一口食べた瞬間にカッと目を見開く。そして、絞り出すように言った。


「お、美味しい……。」


「ほっ……そうか、口にあって何よりだ。」


 おなかが空いていたのもあってか、二人はあっという間に食べ終えてしまう。満腹になった二人は眠くなってしまったのか、寄り添うように横になって昼寝を始めてしまった。

 風邪をひかないように二人の上に毛布を掛けて、俺はあの問題にとりかかろうと思う。


「さて、あの問題をかたづけないとな。」


 残っている一番の問題……あの蒼いドラゴンだ。

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