ミースは見たッ‥


 俺の魔力が回復し始めたころ、ドーナはふと思い出したように言った。


「あ、そういや今回のことギルドにはなんて報告しようか。ヒイラギの秘密もあるし……。」


「ドーナが倒したってことにしちゃダメか?」


「まぁできないことはないけど、それだと手柄が全部アタイに入っちまうよ?」


「別に構わないさ。手柄とかそういうのには興味ないから。」


「そう言ったってねぇ~……。」


 どうするべきかドーナがこめかみを押さえていると、突然後ろから声がした。


「あらら?またいい感じですかぁ~お二人さんっ♪」


「みっ、ミースっ!?なっ、なんであんたがここにいるんだいっ!?」


 後ろを振り返ると、後ろ手に短剣を携えたミースがくすくす笑いながら立っていた。


「さぁ~?なんででしょうねっ?もしかしたらお二人の甘酸っぱ~い恋の匂いに誘われちゃったのかも?な~んてっ、フフッ♪さてさて、驚異のほうは取り除かれたみたいなのですし?お邪魔なようなので私は失礼しま~す!!」


 言いたいことだけ言うと、まるで嵐のごとくミースは走り去っていった。


「はぁ~、ったくだからって無茶するよ、帰ったらきつく言っておかなきゃねぇ。」


「ミースは元金級の冒険者だったのか?」


「そうだよ、昔はあれでブイブイ言わせてたんだけどねぇ。」


 意外な事実発覚だな。まさかミースが元金級の冒険者だったとは。


「ミースのことだから、当たり障りのないように報告してくれると思うけど、いらん噂まで流されそうだねこりゃあ。」


「当分ギルドに顔を出せそうにないな。」


「ホントだよ。」


 そんなことを話しているうちに魔力が回復し、俺は動けるようになった。


「ありがとう、おかげで動けるようになった。」


「そ、それは何よりだよ。さ、さてとアタイはギルドに戻って誤解を解きに行こうかねぇ……。」


 そして歩き出そうとしていたドーナの腕を、俺は反射的につかむ。


「ど、ドーナ良かったらお礼をしたいんだが……ついてきてくれないか?」


「お、お礼って別に大したことはしてないんだけど……。」 


「いや、今までさんざんよくしてもらったからな。これは俺のだ。もちろん受けてくれるよな?」


「うぅ、そういわれると受けざるを得ないよねぇ。痛いとこついてくるよ本当に……。」


 そしてハウスキットのあるほうへと歩き出そうとすると、今度はドーナに手を掴まれた。


「ま、まだ完全に魔力は回復してないんだろ?アタイが支えるよ、転ばれちゃあ困るからね。」


 そう顔を真っ赤にしながら言ったドーナ。そんなに顔を真っ赤にするぐらいなら、やらなければいいのにな。

 内心そう思いつつも彼女のやさしさに甘え、人生で初めて恋人同士のように手を繋いで、俺たちはハウスキットのほうへと向かう。


 そしてハウスキットのある場所にたどり着くと、シアが中から飛び出してきた。


「お兄さ~ん!!おかえりなさいっ!!」


「あぁ、ただいま。」


 抱き着いてきたシアの頭を撫でていると、シアは俺がドーナと手を繋いでいることに気が付いた。


「あっ!!お姉さんもいるっ、シアもお手々繋ぎたいっ!!」


 シアとも手を繋ぎ俺たちはハウスキットの中へと入る。先にドーナとシアにソファーに腰掛けてもらい、俺は二人に飲み物を差し出した。


「ドーナはお腹減ってたりするか?」


「正直なところ朝から食べてないから、かなり腹は減ってるね。」


「そうか、なら都合がいい。お礼もかねて何か作ろう。少しシアと一緒に待っててくれ。」


 頭の中で作るメニューを考えながら、俺は厨房へと向かうのだった。

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