守るもの


 目の前でヒイラギが業火に包まれてしまったのを、見てしまったドーナはその場に崩れ落ちてしまう。


「あっ、あぁっ……。」


「クハハハハァ~、同族をかばって死ぬなんて馬鹿な野郎だ!!貴様が守ろうとしていたそこのメスも、すぐに殺してやるぞ!!」


 にんまりと笑ったドラゴンは、上空からドーナへ向けて急降下する。そして動けずにいる彼女の眼前に、その鋭い牙が迫っていく。


「オイ、お前ドーナを狙ったな?」


「なっ!?ぐふっ!!」


 俺の声に急停止したドラゴンの腹部に思い切り拳を叩き込んだ。不意の一撃をもろに喰らったドラゴンは、地面に叩きつけられ激しく転がった。


 そして口から血を吐きながら、ドラゴンは鋭い眼光を黒煙の中へとむけてくる。


 俺は無言で黒煙を払いながらドラゴンの前に再び姿を現した。今抱いている感情は純粋なまでの怒り。

 ただただ目の前の真っ赤なトカゲへ対する抑えの利かないほどの怒り。


「お前の相手は俺だろ?なんでドーナのことを狙うんだ卑怯者……。」


 怒りが増幅するたびに自身の心に潜む何かが、あるスキルを使えと訴えかけてくる。俺は己が感情の爆発に身を任せそのスキルを使った。


「ブレス……オブディザスター。」


 前に突き出した片手にどす黒いオーラが集まり始め、それと同時に体から大量に何かが抜けていく。その何かが黒いオーラと混ざり合って増幅する。


 その光景を見た赤いドラゴンは急にカタカタと体を震わせはじめた。


「な、なぜ貴様がそれをっ!!」


「五月蠅い、消えろ。」


 よろめいている体で何とか飛び上がり、逃げようとするドラゴンへと俺は容赦なく手に集まっていた黒い塊を撃つ。

 その黒い塊は一瞬でドラゴンを飲み込むと、一瞬にして跡形もなく消え去った。


「くっ。」


 ブレスオブディザスターを撃った後、ふらふらと足がもつれ、その場に前のめりに倒れこみそうになってしまった。


「っと大丈夫かい!?」


 倒れかけていた俺をドーナが受け止めてくれた。


「すまない。危険な目に遭わせてしまった。」


「謝んなきゃないのはアタイの方だよ!!アタイがしゃしゃり出なかったら……。」


 どうやら俺がドラゴンの攻撃を受けたのが、自分のせいだと思いこんでいるらしい。ボロボロと熱い涙が彼女から零れ落ちている。


「泣くなよ、結果的に助かったんだ。終わり良ければすべて良しだろ?」


「い、いや、それじゃあアタイの気が収まらない。い、今ヒイラギ魔力切れで動けないんだろ?せめて……回復するまでアタイが……。」


 彼女の言う通り魔力切れで動けない俺は、ドーナの膝枕に頭を乗せられてしまう。


「これはアタイなりのケジメってやつだから……甘んじて受けておくれよ。」


「……わかった。」


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