蒼いドラゴン

 

 ぐっすりと寝ている二人を起こさないようハウスキットを出た。

 そして、あの赤いドラゴンを倒した場所までやって来て提げているバッグへ向けて声をかけた。


「もう出てきても大丈夫だぞ。」


 そう一声かけるとマジックバックの中から、ぬっ……と先ほど保護した蒼いドラゴンが出てきた。やはり体は傷だらけでボロボロになっている。

 ひとまず俺はあの赤いドラゴンは倒したことを伝えることにした。


「あの赤いドラゴンは俺が倒した。」


「ほ、ホント!?ありがとう、助かったわ。あなた人間なのに優しいし、それに強いのね。」


「少しばかり腕には覚えがあってな。しっかし、まず自分の心配をしたほうがいいぞ?体中傷だらけのようだし、大丈夫か?」


「残念だけど、ワタシはアイツみたいに超再生を持ってないから。……この翼じゃあもう飛べないわね。」


 ボロボロになった翼を見て、蒼いドラゴンは悲しそうな声で言った。


 何とかしてやりたいが、薬草とかで何とかならないか?悲しそうにぼやくドラゴンを見て何とかできないものかと、頭を悩ませていると……。


 唐突に蒼いドラゴンのお腹の部分からグルルルル……とまるで地響きのような音が鳴った。


「はぁ、お腹すいたわ。」


「腹が減っているのか?」


「3日間飲まず食わずでアイツと戦い続けたのよ、戦ってだいぶ血も流しちゃったし……もうそろそろ限界。」


「そうか、なら俺が一つ腕を振るおう。」


「え?」


「こう見えて俺は料理人なんだ。」


 そう説明すると蒼いドラゴンは、少し驚いたような表情を浮かべる。


「しかし流石にドラゴンが入れる程ハウスキットは広くないし……どうするかな。」


「それなら心配しなくて大丈夫。ん~、よっと!!」


 突然蒼いドラゴンが光に包まれると、徐々に人間の形をかたどっていく。そして光の中から、一人の蒼い髪の女性が現れた。


「これなら大丈夫でしょ?」


「驚いた……それはスキルなのか?」


「そうよ~、ってやつね」


 この世界には、俺の知らないようなスキルがまだまだあるようだ。


「うん、その姿なら全然問題ないな。それじゃあ着いてきてくれ。」


 俺は彼女を先導するように歩き出した。


「わかったわ、人間になるのも久しぶりね~……って、きゃあ!!」


 後ろで派手に転んだ音がしたので振り返ってみると、何かにつまづいたのか彼女が尻餅をついて転んでいる。


「大丈夫か?」


「いったぁ~、もう誰よ~ここにこんな宝石置いてったやつ!!綺麗だけどっ!!」


 愚痴をこぼす彼女の足元には赤く丸い宝石のようなものが落ちている。まさかこれは……。


『鑑定』



・レッドドラゴンの宝玉



 まさかと思い鑑定してみるとやはりあの赤いドラゴンの宝玉のようだった。気づかない間にドロップしていたらしい。


 そっとそれをバッグにしまい、尻もちをついている彼女に手を差しのべた。


「あ、ありがとう。」


「気にするな、足元には気を付けろよ?」


「う、うん。」


 足元がふらつく彼女の手を引いて、俺はハウスキットのあるほうへと歩き出したのだった。

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