信用を得るため


 ギルドの地下にある闘技場にドーナと二人でやって来た。


 闘技場にはやはり鍛錬に励む冒険者が何人かいたが、彼女に声をかけてもらって闘技場から出て行ってもらった。


「よし、これで誰もいなくなったな。助かったよ。」


「このぐらいどうってことないさ。」


 さて、人払いも済んだことだしやってみるか。俺は森であのスキルを使った時と同じように、闘技場の壁に向かって片手を突き出した。


「サンダーブレス。」


 そう唱えると同時に、突き出した右手から雷をまとった光線が放たれた。それが放たれたと同時に闘技場に爆音が鳴り響く。さらには辺り一帯を覆いつくすような砂ぼこりも一気に舞い上がった。


 火力の調整ができないんだよなぁこれ……結構派手にぶっ壊してしまったが大丈夫だろうか?


 少しひやひやしながらドーナのほうを振り返ると。


「~~~っ。」


 彼女は顔を少し引きつらせ固まってしまっていた。


「これで信じてもらえたかな?」


 当の俺も顔から少し冷や汗を流しながら彼女に問いかける。だが、一向に反応がない。


「あの〜、ドーナ?大丈夫か?」


「……あ、あぁ大丈夫だよ。ちょっと驚いてただけ。」


 俺に声をかけられて、ようやく彼女は自分を取り戻したようだ。


「ちょっと……いや、結構派手に壁を壊してしまったんだが。」


「あぁ壁ぐらいだったらどうってことないよ。すぐに直るからね。この前アタイが壊した壁も元に戻ってただろ?」


 そういえばドーナが殴って壊した壁が、今日はきれいに元通りになっていたな。この分なら修繕費を請求されることもなさそうだ。


 ほっと胸をなでおろしていると彼女が言う。


「にしてもだよ、ヒイラギ……あんたホントに何者なんだい?」


 まぁ当然気になるよな。だがこれは話しても大丈夫なのだろうか。俺がカオスドラゴンのステータスやスキルを取得していることを話したら、危険視されないだろうか?


 でも秘密にしていたとしても、余計に……な。この世界でも信用できる人は作っておいたほうがいいし、ここはひとつドーナを信じよう。 


「ドーナ、今から話すことは他人に口外してほしくないんだが、約束できるか?」


 コクリと頷いた彼女に俺は自分がカオスドラゴンの力を扱えることを話した。


「信じられないかもしれないが、今話したことはすべて本当だ。」


「わかってるよ。大丈夫、この話はアタイの胸の中にしまっておくよ。さってと、そいじゃあミースたちに話をつけてこようかねぇ。」


 そう言ってドーナは闘技場を後にしようとした。俺もそれに続こうとしたが、急に意識が暗転してしまいその場に倒れこんでしまった。

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