犯人は‥‥


「ヒイラギ、エミル樹林で何か見なかったかい?」


 ドーナはついに今、忘れ去られていた本題を切り出した。その問いかけに対する俺の答えはもちろん……。


「いや、何も見てないな。」


「そうかい、ミースにエミル樹林に薬草採取に行った…って聞いたから心配したんだよ。なんかあそこでとんでもない魔力反応があったっていうじゃないか。」


 どうやら俺を呼び出した理由は、単に心配していただけらしい。


「下の受付嬢たちがあわただしく動いていたのもそれが原因か。」


「そういうことさ、今それを調査するために金級以上の冒険者に声をかけてるところだよ。」


 うーむ、ここは素直に打ち明けたほうがいいのだろうか。あまり問題が大きくなると困るのは自分だし……。


 そう頭を悩ませていると。


「アタイの予想だけど、おそらくあの森にはドラゴン系の魔物がいると思うんだ。」


「それはいったいどうしてだ?」


「うちのギルドに所属してるやつの情報でね、なにやら森で雷の光線を見たってやつがいるんだ。もしそれが事実だとしたら、そんなもんを扱えるのはドラゴンぐらいなものなんだ。」


 ……やっぱり見られてたか。まぁあんだけ派手にやってしまったから、見られてても不思議じゃない。

 それにドーナの予想であるドラゴンというのも的を射ている。もともとあのブレスはカオスドラゴンのものだったやつだからな。


 これ以上騒ぎが大きくなる前に、彼女にあれは俺がやったと打ち明けたほうがよさそうだ。


「ドーナ、俺から少し話があるんだが聞いてくれるか?」


「な、なんだい?急に改まって。」


 急に改まって話し始めた俺にドーナは動揺している。


「正直に言うと、その森で起きた魔力反応とやらの原因は間違いなく俺だ。」


「なんだって!?」


「まぁ、信じられないかもしれないがな。」


 驚きを隠しきれていない様子のドーナ。まぁこういう反応をするのは予想できていた。

 ドラゴンが原因だと思っていたのに、まさか目の前にいる俺が犯人だと言い出したんだからな。


「論より証拠を見せたほうが早い。地下の闘技場借りれるかな?」


「あ、あぁ大丈夫だよ。」


 ドーナに例のスキルを見せるため、地下にある闘技場へと向かった。

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