ざわめき


 依頼の完了を報告するためにギルドへと戻ってくると、ここでも受付嬢たちがわたわたとせわしなく動いていた。

 その中の一人で唯一名前を知っているミースに話しかけた。


「何かあったのか?」


「あぁっ!!ヒイラギさんお帰りなさい、心配してたんですよ!?薬草採取の依頼で森に行ったと思っていたので、あの……とにかく無事でよかったです!!」


「あ、あぁ……。」


「ホントよかったです~。あっ、そういえばドーナさんが呼んでいましたので、ギルド長室の方に行ってもらってもいいですか?」


 ドーナが呼んでいる?何か用事でもあるのかな?昨日話せる範囲で自分のことは話したつもりだったんだが、まぁ行ってみればわかるか。


「わかった、取り敢えず顔を出してくる。」


 ミースにそう告げて俺はドーナが待っているらしいギルド長室へと向かった。そしてその扉をノックする。


「ヒイラギだ、呼ばれたから来たんだが。」


「あ、ヒイラギか入っていいよ。」


 ドアを開けソファーに腰かけていたドーナと目が合う。しかしすぐに視線をそらされてしまった。

 

「ま、まぁ……す、座ってくれ。」


「あぁわかった。」


 今日のドーナは何故かとてもよそよそしい様子だ。初対面でもあれだけぐいぐい来ていたのが、まるで嘘のようだ。


 すると彼女は、テーブルの上に置いてあった湯気の立ち昇る飲み物と、焼き菓子のようなものを勧めてきた。


「こ、これ紅茶と菓子……だ。す、好きなだけ食べてくれ。」


 おぉっ!!この世界の紅茶とお菓子か。見たところ紅茶は元居た世界と変わらなさそうだな。お菓子のほうは……クッキーかな。


「ありがとう、ではいただきます。」


 クッキーのような菓子を手に取り口に放り込む。甘くてとても香ばしい、それにサクサクと食感も楽しい。普通においしいお菓子だ。


「うん!!美味しい。」


 かみ砕いたクッキーを飲み込み、少し甘さが残る口のなかに紅茶を流し入れる。葉の香りがダイレクトに伝わる、ダージリンより少し強めの香り。嫌になる渋味もなく、キチンと丁寧に淹れられたものだとすぐにわかった。


「紅茶もまた美味しい、いい香りだ。」


「そっ、そうかい!?それはよかったよ。じ、実はこれちょっとアタイが作ってみたん……だ。」


 少し顔を赤くしながらドーナは言う。どうやら彼女はお菓子作りもできるようだ。


「そうなのか、とても良い味だった。もっと食べてもいいか?」


「も、もちろんだよ!!好きなだけ食べてくれ。」


 サクサク食感のクッキーをつまみながら紅茶を飲んでいる中、俺はふとあることを思い出した。


「あ、そういえば何か用事があって呼び出したんじゃないのか?」


「よ、用事……あ、あぁ!!思い出したよ。ヒイラギ、あんたエミル樹林で何か見なかったかい?」


 ついに今の今まで忘れられていた本題について切り出された。

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