黒龍との死闘

 ドラゴンは嬉々としていた。この人間をどう殺そうか考えては笑みがこぼれてしまう。


 四肢を食い少しずつ喰うか……はたまた腹を裂き臓物を喰らいながら絶望する顔を眺めるか……兎に角考えるのが楽しい。

 腕を失いながらも逃げずに立ち向かってくるこの人間は、死ぬ間際どんな顔をするのか。楽しみで楽しみで仕方がない。

 さて、どこを狙おうか。一瞬で殺してしまっては勿体ない。たっぷりといたぶり、絶望を見せつけてやるのだから丁寧に丁寧に扱わねば……。







 ニヤリといやらしく顔をゆがませているドラゴンを睨み付け、俺は敢えて挑発する。


「さぁ、撃ってこいよ。」


 光のブレスは見てからでは避けれない。ドラゴンの筋肉の動き、細かな目の動きを見て予想する。すると再びドラゴンは口を開ける兆候をみせた。


 今だッ!!


 『縮地』を使い一瞬で間合いを詰め、ブレスを吐く直前に懐に潜り込む。


「ハアッッ!!」


 そしてドラゴンの口を残った左腕と両足で押さえ、無理矢理閉じさせる。


 すると吐く予定だったブレスが口の中で逆流し、行き場を失ったそれがドラゴンの体内で爆ぜた。


 ドパァァァァン!!

 

 激しい破裂音と共に俺は爆発に巻き込まれ、その衝撃で大きく吹っ飛び草原に投げ出された。


「ガハッ!!ざ、ざまぁみろ…ぐぅっ!!」


 黒いドラゴンは先程の爆発で木っ端微塵になっていた。いくらドラゴンといえど体内は脆かったらしい。


 しかし、モロに爆心地で爆発に巻き込まれた俺も無傷とはいかなかった。


「いってぇ、左腕もなくなった……。」


 爆発で左腕もが吹き飛び、受け身も取れず激しく地面に叩きつけられた衝撃で、肋骨も何本か折れている様だ。


「不味いな、血がとまらない。」


 左腕は右腕のように炭化しているわけではなく、血がとめどなく溢れ出していた。

 脳も限界を超えて脳内麻薬を出していたが、それももう尽きたようで全身を激痛が苛んでいる。


「詰みか。」


 半ば諦め寝ころがっていると、顔の横に何やら大きな黒い水晶玉のようなものがころころと転がってきた。


「なんだ?」


 それは覗いていると吸い込まれそうになるほど美しい。


 そしてその黒い水晶玉を眺めていると体の底から、今沸きあがるはずのないある欲求が沸き上がってくる。


「なんでこんな時に腹が鳴って……。」


 体が本能的にこれを食え。と言っているのだろうか?突然猛烈な空腹感が俺を襲う。


「これ、食べれるのか?」


 迷っている間にもどんどん血が失われていき、意識が朦朧とし始めている。徐々に死が近付くのを実感する最中、俺はある決意を固めた。


「試しに食ってみるか。」


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