秘密の中庭 その2

「ただの中庭だけど………どこにそんな重要な装置があるの」

「それは地下200メートルのところにあります。ここからでないとそこへは行けません」

「じゃあここは通路でしかないんだ」

「ふふふ、はいルナ、照明を暗くしてお空を見せて」

「お空? 」

 私は上を見た。

 真っ黒な梁が組まれた天井しか見えなかった。

「了解翁じい」


 一体なにが始まるのだろう?


 と、中庭を照らしていた照明が薄くなった。そして目を凝らしていると、だんだん天井の梁が消えていく。

 あ、梁が消えた。というか透明になったんだ。

 そして、天井に組んである木々も透明になり、瓦屋根の裏が見えたと思うと、瓦屋根も透明になり、やがて天井いっぱいに夕焼け空が広がった。夕日のグラデーションの先は濃紺の夜空が広がり、星々が煌めき満月が光っていた。


「わあああああ」

 思わず声がでた。

「今宵は満月ですな、月夜姫の故郷でございます」

 そうなんだ。

「お母様とお父様は、良くこの中庭で夜空を見上げておりました。その二人がけのチェアーにお座りになって」


 私はチェアーを見た。


 二人で座ると密着しそうだな………


「屋根は開閉もできますので、ドアを開けっぱなしにすると心地いい夜風が入り込むんですな。中庭にいる時はいつもドアを開けておられた。お二人だけの時間を邪魔してはいけませんので、じいやは時折ドアの隅から見守る程度でしたが、それでも何回かは御一緒にワインを頂いたものです、ルナの作った極上のおつまみとともに」

「………」

「十五夜のお月見は特に印象的でした。お母様は故郷を思い、故郷を愛し、故郷の為にご自身のお身体すら捧げておりましたのでね。お父様はそれを全て受け入れ一緒に研究しておりましたから」

「お父さんも科学者だったの? 」

「作用でございます。世界的にも有名な科学者でございましたが、地位や名声を全て捨てて、お母様とご一緒になり、かぐや一族のために全ての時間をお使いになられておりました」


「………」


「だから、十五夜の満月を見ながらこうしたゆったりとした空間で、二人だけで過ごすのが、何より大切だったのでしょう」

「十五夜かぁ………」

「いい時間でした」

「お母さんとお父さんは幸せだったの? 」

「それはもう、誰もが羨むような美男美女のカップルで、短い時間ではありましたが、お二人は愛し愛されていました」


 ふーん。


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