秘密の中庭 その3
「今度は月夜姫の番ですよ、素敵な出会いがあるように祈っております。天国のご両親も同じ思いだと思います」
出会い、か………うん、誰だこの顔、頭に浮かんでくるのは! あっ鉄ちゃん。
私は顔が熱くなった。
違う違う鉄ちゃんは
「そ、それで翁じい、その地下へはどうやって行くの」
「はい、これから先は私の声ではでセンサーすら出てきません。月夜姫がルナに命令して下さい」
「わかった」
私は月のペンダントを手に持った。
「はいルナ」
ペンダントに向かってそういうとペンダントが光った。
「月夜姫、御用ですか? 」
ペンダントからルナの声がした。
「地下に行けるセンサーを出して」
「では、発声経路を確認します。発生経路は月形ペンダントであると確認しました。続いて月夜姫の声紋を解析致します。ピピッ、ご本人であると確認されました。続いてカメラによる顔認証を行います」
カメラなんてどこにあるのかしら?
全くわからない、でもどこかにあるんだ。
「顔認証確認、骨格認証確認、身長体重スリーサイズ全て一致、100パーセントご本人であると認識されました。ではセンサーをお出しいたします」
と、小さな滝の中から石柱のセンサーが迫り出してきた。
「凄い」
「じゃあ月夜姫、右手をあてて」
「うん」
私が近づいて右手をあてると石柱が光った。
翁じいも私の後ろにぴったりついている。
「月夜姫の指紋、静脈認証全て合致、お印の波動も観測いたしました、では地下への通路を開きます」
お印から波動が出てるんだ………自分じゃわからないなぁ。
どこがドアなんだ? 竹林が開くのか、滝が開くのか、池の水が抜けるのか、ここにあるのはそんなもんだ。
と、思っていたら足元の芝生に穴が空いた。
えっ!
二人して真っ黒なその空間に、足から吸い込まれた。
「きゃあああああああ」
「わはははは! 」
「翁じい、知ってたな」
「もちろんでございます」
「で、なにこれ高速エレベーターなの? 」
「違います」
「じゃあなに? 」
「地球の重量を利用しております」
「じゅ、重力」
「はい、正確には二人して落ちてるのでございます」
「えええええええ」
「ははははははは、200メートル先まで落っこちるーーーー」
「え、なんて? 」
「落っこちるのです! 」
「翁じいのうそつき、十分怖いじゃん」
「ふぁっふぁっふぁっ、怖くなんてありませーん」
「きゃああああああああああ」
二人の体はどんどん重力に引っ張られていった。
「あああああああああああ! 」
そこに翁じいの声が響いてきた。
「ひゃっほー! 」
喜んでる、絶対喜んでる! やっぱりこのじいさんスピード狂だ!
数秒?
数十秒?
100メートルくらい?
真っ暗で全く対象物のないところを凄いスピードで落ちて行くから感覚がわからなかったけど、そのうち空気の層っていうかな、プールの中に足から落ちてスピードが弱まっていくのに近い感覚がおそってきた。
でも、体は濡れないからやっぱり空気の層か重力がコントロールされているんだと思う。
ちょっと安心した。このままどこかに叩きつけられる事はなさそうだ。
そりゃそうだ、叩きつけられるような事があったら、誰もこの先に行けないどころか、死んじゃうもの。
行くたびに死んでたら身がもたない、ってそれどころじゃないじゃん。
人生終わりだ、あはは………
うん、そうか、不審者が入り込んだ時はそんな事がありえるかもな。
落ちるスピードが更にゆっくりになってきたので、私は下を見た。
おや、何やら丸い光りが現れた。あそこがゴールに違いない。
と、足が丸い光りに到達した、すっぽりそこに体が入っていく。
腰まできて、胸まできて、頭が抜けたときには体が落ちるのをやめた。
なんの衝撃もなく、降下が止まった、そう、ちょうど滑走路に車が降りた時と全く同じ感覚でふわりと止まったんだ。車は横向きだったけど、今度は縦向き、その違いだけ。
とん、その後ゆっくりと地面に足がついた。
とん、背後で翁じいも降り立ったのが分かる。
真っ黒な中を落ちてきたので、目が慣なれていない。煌々と電気で照らされた明るい空間である事しかわからない。
一旦目を閉じてゆっくり慣らして行こう。
何があるのか楽しみだ。
えっ、楽しみ………なの、私、楽しんでいるんだ。
へー。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます