海の森 4

   〇海の森 海浜公園:昼


 激しく点滅するスポットライトに合わせて、切ったり、撃ったりする効果音が響く。

 ステージが一瞬だけ暗くなったあと、リーダーはステージ2段目の下手に移動していて、他のみんなはフェードアウトしていた。

 

「このヘヴリングは、固いウロコで身を守っているようだな」

 

 壁が割れる演出と共に現れたヘヴリング。

 リーダーは観客席のほうに向いたまま、ベゼルをわきの下に通しながら背後のヘヴリングを刺す。

 ヘヴリングはよろめきながら逃げ出そうとするけど、リーダーは追いかけながら何度も切る。

 

「こういった敵と戦うときは、ウロコの動きをよく見て、その流れとは反対の方向から攻撃を加えればいい」

 

 リーダーがベゼルをシューティングモードにして攻撃。

 撃たれたヘヴリングは、大きくジャンプして、背景側に移動する。

 

「マーガレット!」

 

 リーダーがベゼルを振ると、リーダーを照らしていたスポットライトが動き、ステージ1段目の上手で待っていたネコのヘルメットのヒトを照らす。


「任せて」

 

 マーガレットと呼ばれたネコのヘルメットのヒトは、大きなスナイパーライフルを構えた。

 同時に、ロックオンのマークがステージに投影されて、背景に小さく映るヘヴリングに重なる。

 

「狙いはカンペキよ」

 

 つぶやきながら、背景側に向いたマーガレットがトリガーを引く。

 放たれたビームはオーロラのような光に変わって、そのままヘヴリングに命中した。

 

「ウロコにヒビを入れたわ。 次はスペンサーね」

 

 マーガレットがランスみたいに構えたベゼルを振り、スポットライトが移動。

 そのスポットライトが、下手から走って来たスペンサーを照らす。

 

「ここからはおれとセネカの番だ」

 

 ハンドガンとオノが合体したようなベゼルを構えて、スペンサーは一気に段差を登る。

 そして、スペンサーの攻撃に合わせて、派手なエフェクトが投影された。

 

「セネカ!」

「はーい!」

 

 次は、ステージ2段目の上手から走ってきたセネカの持つベゼルに、スペンサーが自分のベゼルを重ねる。


「どんどん攻めるよー!」

 

 セネカがヘヴリングに連続攻撃をして、その合間にスペンサーが射撃をする。

 パンフレットで兄妹と紹介されていた二人は、兄妹らしく息の合ったコンビネーションで、ヘヴリングにダメージを与えていた。

 

「次はミナトとミサキだね」

「あのふたりでトドメをさせるはずだ」

「そうね。 次で決めるわ」

「ボクもがんばります」

 

 下手に現れたミナトさんが、セネカとハイタッチしながら交代。

 上手に現れたミサキは、スペンサーにおじぎをしながら交代する。

 

「このヘヴリングは逃げ回るばかりでやりにくいわね」

「お姉ちゃん、前に訓練でやったやつでヘヴリングを止められないかな?」

「じゃあ、試してみましょ」

 

 ふたりは、持っていたベゼルを手元でスピンさせる。

 そのあと、ミナトさんがミサキに向かってベゼルを構えた。

 

「どーん」

 

 ミサキがシューティングモードで構えたベゼルでミナトさんを撃ち、ミナトさんが弾をはじく。

 はじかれた弾は、逃げていたヘヴリングに当たり、ヘヴリングはその場に転んだ。

 

「おねがーい」

「はいはい」

 

 ミサキは次々とミナトさんを撃ち、ミナトさんはまるで踊るような動きでベゼルを操って弾をはじいた。

 はじかれた弾はつぎつぎとヘヴリングに命中して、ヘヴリングはどんどんボロボロになっていく。

 

「ここで決めるわよ」

「うん!」

 

 ボロボロになって動きを止めたヘヴリング。

 階段でベゼルを構えたふたりが、ヘヴリングに向かって突進する。

 

「はああぁ!」

 

 ふたりが同時にヘヴリングを突いた。

 だが、ふたりにトドメを刺されたはずのヘヴリングが、赤い光を放ちはじめる。

 

「このエネルギー反応!」

「あいつ、自爆する気よ!」

 

 ステージ1階のスペンサーとセネカがさけぶ。

 

「リーダー! ミサキをおねがい!」

「ミナト!?」

 

 ミナトさんはミサキを突き飛ばして、駆け寄ってきたリーダーがミサキを受け止める。

 

「お姉ちゃん!?」

 

 ミサキはミナトさんに向かって手を伸ばす。

 

「わたしは大丈――」

 

 ミナトさんがミサキに笑いかける。

 そしてヘヴリングが爆発し、ステージ全体が真っ白な光に包まれた。

 

「お姉ちゃん!? お姉ちゃん!!」

 

 ステージが真っ白な光から暗闇に変わっていく間、ミサキがミナトさんを呼ぶ声だけが響き渡った。

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