海の森 3
〇海の森 海浜公園:昼
「はぁっ!」
左右に動きながら青や赤に点滅するたくさんのスポットライト。
ステージ2段目の下手から現れたミサキが、剣の先を床にこすりつけたまま走る。
「低くいくのよ!」
「うん!」
上手側の段差を上がりながら、ミナトさんは剣を振り下ろしてヘヴリングを攻撃。
ミサキも、タイミングを合わせて剣を下から上にフルスイングした。
「これでもダメなの!?」
ヘヴリングは怯むが、すぐにその場から姿を消してしまう。
「あいつ、ステルスを使ったわ! 周りに注意して!」
「壁を背にしよう!」
ミナトとミサキさんは、それぞれ左右の衝立を背にして立つ。
すると、背景の壁にヘヴリングが現れて、エネルギーをチャージしはじめた。
「まさか、ビームを撃つ気!?」
「ヘヴリングにそんな能力はないんじゃ⋯⋯」
驚くミナトさんとミサキ。
ヘヴリングは、ミサキに狙いを定めて、ビームを撃った。
「ミサキ!」
ミナトさんがミサキの元へ駆け寄ろうとした瞬間、上手からサードレギオンの全員が出て来て、持っていたベゼルを構える。
それを合図にして、ミサキたちにバリアのエフェクトが重なり、バリアがビームをはじいた。
「待たせたな、ミナト」
「リーダー⋯⋯」
悪魔のヘルメットを着けたヒトが、腰を抜かしていたミサキを起こす。
「お姉ちゃん、この人たちって⋯⋯」
「わたしが居るチーム、サードレギオンのみんなよ」
「おれたちでアイツの足を止める」
「ミナトとミサキは、ベゼルを交換して」
まだミサキたちを攻撃しようとしていたヘヴリングを、イヌの男のヒトと女のヒトが追いかける。
ふたりがすれちがうとき、ミナトとミサキは、ふたりが持っていたベゼルと剣を交換した。
「そなたと弟のベゼルを持ってきた。 旧型のオジカでは不足だろ?」
「ありがとう、リーダー」
「すぐに準備します」
ミナトさんは三角形にも見える剣を天にかかげて、ミサキは杖の形をしたベゼルに手をかざす。
ふたりは、色とりどりのスポットライトに照らされた。
「準備オーケーよ、リーダー」
「ボクも戦えます」
ミナトさんとミサキは、ステージ1段目の上手と下手にそれぞれ移動。
「そなたも戦えるな?」
「⋯⋯がんばります」
ステージ1段目の中心に立っていたリーダーとミサキがすれちがう時に交わされたやり取り。
リーダーの問いかけに答えながら、ミサキはベゼルを器用に回してみせる。
「だが張り切りすぎるな。 そなたはまだ初等部の生徒なのだから」
ポジションについたミサキを見ながら、どこか寂しさを感じる声音でリーダーは言った。
「リーダー! ヘヴリングが止まらないよー!」
「さすがにふたりだけじゃムリだ!」
背景に映し出されたヘヴリングと、ステージ2段目に出てきたイヌのヘルメットの男のヒトと女のヒト。
「ミナト、ミサキにメンバーの名前を教えておけ」
リーダーは肩にかついでいた大きな剣を、観客席側に向けながら指示する。
「ミサキ。 イヌのヘルメットの男のヒトがスペンサー、同じヘルメットの女のヒトがセネカ。 遠いポジションに居るネコのヘルメットのヒトが、マーガレットよ」
「と、とりあえずコアにメモさせて……!」
「わかったから落ち着きなさい」
ミナトさんから教わりながら、ベゼルに付けられている丸い球体に触れるミサキ。
ミサキたちが扱う武器ベゼルには、コアというパーツがあり、そのコアは透明な球体で再現されている。
「さて、ヘヴリング1匹に時間をかけるわけにはいかないな」
リーダーが、まるで銃を撃つようなスタイルで剣を持つ。
ミサキたちの武器であるベゼルには、近接攻撃のアタックモードと、射撃のシューティングモードがある。
けれど、舞台の小道具として作られたベゼルに変形なんてギミックは仕込めない。
なので、舞台のキャストは、ベゼルの持ち方を変え、アタックモードとシューティングモードを切り替えるんだ。
「サードレギオン」
リーダーの号令を合図に、全員がベゼルをシューティングモードの持ち方で構える。
「戦闘開始!」
リーダーが叫ぶ。
ミサキたちは射撃をするようにベゼルを動かし、その動きに射撃の効果音が重なった。
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