海の森 2

   〇海の森海浜公園:昼

 

 ステージが暗転したあと、フェードアウトしたミナトさんとミサキに代わって、上手に白衣を着た女の人が現れる。

 女の人の名前は、コーストガード・アカデミーの教官『洲崎すざきももえ』。

 ももえ教官は、戦いが始まると、オペレーターとしてコーストガードのみんなをサポートする。

 

「偵察班より緊急連絡! 海浜公園にヘヴリングが現れたわ!」

 

 スポットライトに照らされながら、ももえ教官が話し出す。

 

「出現したヘヴリングは単体だけど、基地のレーダーで反応を探知できなかった。 このヘヴリングは、ステルス能力を持つ進化型の可能性がある」

 

 ももえ教官の説明中、下手側にスーツ姿の女の人が現れる。

 あの人の名前は、『三浦みうらアケミ』。

 ももえ教官と同じく、オペレーターをしている。

 

「ミナトとミサキは自分のベゼルではなく、公園に配備している緊急用のベゼルを使っているが、あの機体ではヘヴリングに有効なダメージを与えられないだろう」

 

 アケミ教官が説明している間に、ステージ2段目に剣を持ったミナトとミサキがやって来て、ヘヴリングと戦っていた。

 

「このヘヴリングは進化型よ! 緊急用のベゼルでは有効なダメージを与えられないわ!」


 ステージ中に、ヘヴリングのツメとミナトさんの持つ剣がぶつかる音が響く。


「じゃあ、どうするの!?」


 プロジェクションマッピングで投影されたヘヴリングの動きに合わせて、ミナトさんは攻撃を避けながら剣を振りつづける。

 ミサキは、足がすくんで動けないみたいだ。


「こいつを足止めして、サードレギオンが合流するまでの時間をかせぐのよ!」

「わ、わかった!」

 

 ミナトさんが攻撃するタイミングに合わせて、ミサキも剣を振る。

 そのあいだに、ステージ1段目に4人の人影が並ぶ。

 

「皆の者、準備は良いか?」

 

 センターに立つ、悪魔を思わせるヘルメットとシッポのアクセサリー、それとハーネスを着けたヒトが、左右に並んだメンバーに聞く。

 

「準備はできてる」

「はやくミナトを助けてあげないと!」

「私は帰って休みたいわ」

 

 次に、イヌのヘルメットを着けた男のヒトと女のヒト、ネコのヘルメットを着けた女のヒトが、順番に返事をした。

 この4人の所属するチームは、サードレギオン。

 海の森コーストガードのトップチームとして活動する、東京や関東を守る砦で、ミナトさんも所属しているチームだ。

 

「――サードレギオン」

 

 悪魔のヒトが号令をかけて、全員が武器を構える。

 

「出撃!」

 

 サードレギオンは下手側に走って行き、中央の段差をミナトさんとミサキが駆け降りる。

 

「サードレギオンが合流するまであとちょっと。 わたしたちで、こいつを食い止めるのよ!」

「うん!」

 

 ミナトさんがヘヴリングの攻撃を受け止めて、ミサキが剣で突き刺す。

 でも、ダメージは与えられない。

 

「海野ミサキくん。 初等部の生徒とは思えない戦いぶりね」

「実戦の経験は無いが、勇気はあるんだよ」

 

 照明が暗くなり、ももえ教官とアケミ教官が、スポットライトに照らされたミサキを見守る。

 ミサキは、持っていた剣をテニスのラケットみたいにくるりと回しながら、ミナトさんとステージ裏へ移動。

 同じタイミングで、ももえ教官とアケミ教官も舞台そでに引っ込んだ。

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