第26話 どうやらタツナミに向かった様です。

魔導具マニアのゴードンさんから譲って貰った例の転送装置を2つ合わせて完全に動かす事に成功したオレは、もう一つ完全なコピーを作った。これにより転送装置のある場所に行ける様になる。しかし制約があり、この魔導具では5kmぐらいが限度の様だった。まあ、5kmは中々使い勝手も悪くなさそうだ。オレはコイツに光学迷彩を施してどこに置いても相手から見えない様にした。いざという時の脱出用にも使えるからね。暇な時に小型化にチャレンジして見るのもいいね。


『コックスナル』から南南東にある『タツナミ』に向かう為に衣服の用意もしなければならない。

【ナバダット連邦国】は5つの州からなる連邦制で『州首議会』という合議制で国を治めている。『タツナミ』は国境の街で街に入れば国境を越えた事になる。

『コックスナル』から『タツナミ』までは普通の馬車で3週間チョイの行程である。まあオレ達なら1週間もあれば着く計算だ。向こうは亜熱帯の気候でその先は熱帯の赤道(この世界ではそういう概念は無い)を越えて行く行程である。


サテランティスには服を買っとけと言っておいたが買ってるだろうか?また、お菓子ばかり屋台で食ってて忘れてなければ良いのだけど…連絡してみるか。


「…はい。」


「おっ、『シュワ』ちゃん?サテランティスは服買ってる?」


「服を買わずに腹痛です」


「は?」


「冷たいお菓子の食べ過ぎのもよう」


「…そっち行くわ…」


何してんだアイツわ!!


一方のサテランティスはトイレに立て篭ってる状況で出て来てはまた入りの繰り返し。

俺が来るまで繰り返して居た様だ。


「…お前は何してんの?」


「うううぅ…急にお腹が…あああ!!」


とまたトイレに立て篭ってしまう。


「サテランティスさんや、回復魔法掛けたら如何ですか?」


少ししてサテランティスが真っ赤な顔してトイレから出てきた。パニッくって忘れてたな…自分が光の回復魔法も使えたのを。


「も、もう、だ、大丈夫なのじゃ…」


「…じゃあ服を買いに行くぞ」


「…分かったのじゃ」


こんな感じだった癖に店に行ったらアーじゃねーコーじゃねーとたっぷり時間を掛けて大量に買ってたよ。腹痛ですっかりお菓子を買うのを忘れてた様で「お菓子を…」と言ってたが、俺が一睨みするとシュンとしてて可愛そうだったからお菓子屋には寄ってあげた。


そのまま食料品や水などを調達した。特に水は樽を倍以上買い込んだ。1樽は部屋に置いて後は全部マジックポケットに。樽から水専用の魔導具冷蔵庫に瓶に移したのを入れて置く。サテランティスには冷えた水は飲み過ぎない様に言って置いた。


後は冒険者ギルドに立ち寄る。『タツナミ』までの道程を聞く為だ。受付のお姉さんは一本道の街道だから迷う事はないと言ってたが、魔物の出現率が高いので夜の移動は極力控えた方が良いと言っていた。まあ、オレ達は平気で行くけどね。


オレ達は食堂で夕飯をとる事にする。冒険者ギルドの受付のお姉さん情報で安くて美味いと評判の店らしい。少し早めに着いたから座れたけど直ぐに満席になって行列が出来てた。


「そっちさんは何にする??」


「オレはオークソテー定食ね」


「我もそれが良いのじゃ!」


「エール」


「ニャア!」


「猫語は分からねぇよ…」


タマにはオレの肉を半分上げた。オークの肉はココでも珍重されてるんだな。美味いからね豚だし。サテランティスも美味しいとオカワリしてたよ、良く食うな。『シュワ』ちゃんはエールをガブ飲みしてるのだけど、実はエールお腹に貯めてるのだ。後で取り出して魔導具冷蔵庫で冷やす。オレの秘密の楽しみにするのだ。


満足感で一杯のオレ達はそのまま馬車に乗り『コックスナル』を出発した。衛兵さんには危ないからと引き止められたのだけど、『シュワ』ちゃんが衛兵さんに


「地獄で会おうぜ!ベイベー!!」


と親指を立てて言ったら苦笑いしながら通してくれたよ。

そのまま進んで行くと直ぐにオークの群れが襲って来たけど、魔銃コルトをぶっ放してそのまま進んで行く。

結局、夜は寝ないで何度か魔銃コルトをぶっ放しまくった。確かに魔物の出現率高いわ…。

昼はサテランティスとタマと『シュワ』ちゃんに魔物を任せて、昼間は寝てるオレが夜は魔物を相手した。夜中はホントに忙しい。

5日目の夜には20体を超えるオーガの群れが襲って来てマジでヤバかった。特にオーガジェネラルは半端ない強さ。流石にタマも加勢してくれた。『シュワ』ちゃんは徹底して防御に徹してもらって、オレがオーガジェネラル、タマは他のオーガの相手をする。


オーガジェネラルは鎧を着けてデカい剣をブン回す。オレはミスリルの鋼糸で動きを封じなから魔銃コルトで撃つのだが中々効かない。傷口の回復力が半端ないからだ。仕方無いから魔銃コルトの威力を中くらいに上げて撃ち込んだら、避けたオーガジェネラルの左側半分位が吹き飛んだ。

そのまま返す刀でタマの居ない場所のオーガの群れに撃ち込むと5体位吹き飛んだ。イケね…弱に戻すの忘れてた…。


「ニャア!ニャア!!」


やっぱりタマに抗議されたよ…ゴメンて…ワザとじゃねーのよ…。

残りのオーガは怒りのタマにズタズタにボコられて、見るも無残な感じになってた。ホントにタマ、ゴメンて…。


魔石を取ったオーガは『シュワ』ちゃんがハンマー投げみたいに森の中にぶん投げてた。結局、サテランティスは起きて来なかった…まあ、大物だな。


それから3日後、魔物を倒しまくったオレ達はようやく『タツナミ』に到着した。オレはもうヘトヘトだよ…。

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