第27話 どうやら決定的な情報を掴んだ様です。

【ナバダット連邦国】の『タツナミ』は『ホウライ州』の州都である。

『ホウライ州』は元ホウライ帝国と呼ばれていた国であった。ホウライ帝国はその兵士の強さから傭兵王国とも呼ばれ、数々の戦争に傭兵を派遣していた。しかし、その事による国の空洞化や商業が発展しない等の問題を抱える国であった。その時に隣のレイミテ共和国(今の『レイミテ州』)との同盟話が持ち上がり、その同盟にレイミテの隣のカロ王国(今の『カロ州』)が入る三国同盟が設立される。ホウライの武力、レイミテの経済力、カロの資源力により三国同盟は瞬く間に発展し国が豊かになった。その為に三国はもう一段階結び付きを強くし【ナバダット連邦国】となった。

その後に隣同士の小国だった二つの国、リュピタル海洋国家とラージアス山岳連邦が【ナバダット連邦国】に入り『リュピタル州』と『ラージアス州』となり今の連邦国家となっている。霊峰『チモリヤ』の有るのは『ラージアス州』である。


『ホウライ州』は何となくではあるが、オレの前世の文化に通づる何かが有ったけど全く同じという訳ではないね。この国の”傭兵道”なるモノは”武士道”とは違って生き抜く事に重きを置いてるモノだ。傭兵だからね…生き残ってナンボだもんね。

でも、食文化はかなり似通っていて、堂々たるコメ文化で発酵食文化である。味噌と醤油も有るし、もちろん日本酒も有る。

腹ごしらえにと入った食堂に納豆が有ったのには感激したよ。サテランティスは匂いで卒倒してたが…。


「お客さん珍しいね、”腐大豆”を喜んで食うなんてさ」


「コレは健康食品なんだ。米との相性は抜群たよ。味噌汁に入れても良い。生卵を入れると美味いのだけどね」


「生卵??腹壊さないかい?」


「オムレツの中にチーズと入れても美味いぞ」


「ほう、それはやった事無いなあ。ちょっとやってみるか」


「しまった、腐大豆食ったから酒蔵見学出来無いな…」


「…良く知ってるねぇ…お客さん、ホントいくつなんだい?」


「ボク、7しゃい」


「またまた!ご冗談を!!」


ココでも定期の年齢詐称疑惑を掛けられた…。

食堂を出てからは酒屋に行って、全種類を酒樽で買った。味見しようと思ったら子供は駄目と言われた…悲しい。でもコレでギッデ親方やリッカさんに良い土産が出来た。

味噌と醤油は同じ店で売っていた。ここ『タツナミ』でも醤油は高級品らしい。味噌と醤油は樽ごと買ってマジックポケットにしまう。

”腐大豆”こと納豆は売り物じゃなくて各家庭で作る物らしい。残念だが仕方無い…まあ、毎朝の朝食でサテランティスが卒倒してても可愛そうだしな。

それにしても暑い、亜熱帯になる『タツナミ』のこの時季は蒸し暑い。オレとサテランティスは『コックスナル』で買った服に着替えているが、暑いのよね…マジで。仕方無いので氷菓子を探しに出るとサテランティスは直ぐにかき氷の店を発見した。コイツは菓子とかの嗅覚が異常に高い…。


「食い過ぎるなよ。また腹痛くなるぞ」


「大丈夫なのじゃ!痛くなったら回復魔法を掛けるのじゃ!」


「懲りないヤツだなぁ…」


「ニャア〜…」


「ほれ、タマまで呆れてるぞ…」


「タ、タマはそんな意地悪では無いのだ!」


タマは必死なサテランティスをシカトしてオレの方にやって来た。オレはタマをモフってやる。


「…サテランティスが腹痛になる確率が75.4%に上がりました」


「うう…『シュワ』ちゃんまで…」


「そろそろ冒険者ギルドに行くからもう止めとけよ」


「後で食べるのじゃ…」


と懲りないサテランティスであった。


オレ達は『タツナミ』の冒険者ギルドに向かった。傭兵が多かった『タツナミ』の冒険者ギルドはかなり規模か大きい。受付のお姉さんに『チモリヤ』まての道程を相談すると男性のギルド職員を連れて来てくれた。何でも『ラージアス州』の出身の人なのだという。これは有難い。


「キロエと言います。『チモリヤ』に行きたいとか?」


「はい、『チモリヤ』まで急いで行きたいのです。超特急で!!」


「超特急…そうですね…『タツナミ』からですと、ここの街道を通り、カロの『ミタリアス』を経由してラージアスの『リュセイユ』に行けば『チモリヤ』の麓の村『ターディス』までは直ぐですよ」


キロエさんは丁寧に説明しながら地図に色々と情報を書き込んでくれた。


「しかし良い時期に『チモリヤ』に行きますね!やっぱり『ターディス』の”闇竜祭”に行かれるんですよね?」


「”闇竜祭”??」


「おや?ご存知無いのですか?この時期なのでてっきりお祭りに行くのかと…」


「有名なお祭りなのですか?」


「もちろん!ラージアスでは一番古いお祭りですからね!」


「ほう、それは興味深いお祭りですね?どんな云われがあるのですか?」


「遙か昔の『チモリヤ』は魔獣達の蔓延る危険地帯だったのですが、”闇の竜神様”が天から罷り越し、魔獣達を平定したと言い伝えられていて、年に一度”闇の竜神様”に感謝を捧げるお祭りなのです」


「ほうほう…それはどのくらい前から言われているのでしょうか?」


「少なくとも千年以上は前ですね。ラージアス建国の頃には先住民族の祭りは始まってますから。今は先住民族はラージアスの民と一体化したので純血は居ませんが」


「実に興味深いですね。祭りも是非観たいです!ところで…『チモリヤ』に魔女の伝説何て有りませんかね?」


「魔女?う〜ん…あっ…アレかな…」


「有るのですか?」


「詳しくは知らないのですが、『ターディス』にある石碑に魔女の話が書かれてるとか…詳しくは村長に聞くのが良いと思いますよ」


「有難う御座います。大変面白い話をお聞きしました。お祭り楽しみです」


「羨ましいですよ…休み取りたかったのにギルマスが…」


その後キロエさんの愚痴を噂のギルマスが後ろからキロエさんの肩を叩くまでたっぷりと聞かされた。

しかし、色々と情報が入りオレの中での疑惑や疑念が一本に繋がりそうであった。オレ達は直ぐに馬車に戻り、『蜂影』先生とコンタクトを取る。


「おーい、『蜂影』先生、『ターディス』の石碑の画像を送ってほしい。石碑の文字が見えるようにね!」


仕事が早い『蜂影』先生は直ぐに石碑の画像を送って来た。それに依ると…


”勇者は魔女達と霊峰『チモリヤ』に向かったが、勇者だけが村に戻り魔女達の事は何も言わずに立ち去った。その後、『チモリヤ』の洞窟に誰も入る事は出来なくなり『魔女の呪い』と言われた”


と書いてあった。つまり、間違いなく魔女達と勇者はココに行ったのだ。そして魔女達だけが『チモリヤ』に残ったらしいと言う事である。かなり決定的な情報だよな。

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