第22話 どうやら国境の街で兄さんと鉢合わせした様です。

さて、夜に『アクロティナ』を出発して国境の街『レオクレータ』に向かったオレ達は夜中に何と盗賊団に襲われてしまった。

最初は襲われてる馬車が前にいると思われだが、実は襲われてるのも盗賊団の仲間と言う中々手の混んだ事をしていた。『シュワ』ちゃんに助けさせようとして盗賊団に立ち向かうと倒れてた連中が急に起き上がって『シュワ』ちゃんに襲い掛かって来たのである。『シュワ』ちゃんは突然の攻撃に暫く思考回路がストップしてしまった。所謂フリーズである。


「な、何だ!この野郎!急に動かなくなったぞ」


「関係者ねえよ!やっちまえ!」


「あ〜〜『シュワ』ちゃんフリーズしちゃったよ〜仕方ねぇなあ〜」


「ふ、フリーズって何じゃ?飲み物か?」


「お前面白い事言うね。飲み物じゃねーし。固まったって事だよ」


「アレスは時々変な言葉を使うのじゃな」


「このガキ共!!何クチャクチャ喋ってやがる!!おま…」


「うるさいな…」


オレは盗賊の前に素早く移動してミスリルの鋼糸で腕を落としてやった。


「ぎゃあああ!腕がああああ!」


「これ!ズルイぞ!我にもやらせるのじゃ!」


サテランティスはそう言うと空中にフワッと無詠唱で無数の氷柱を出して盗賊達に発射する。盗賊団はその攻撃で殆ど動かなくなった。


「おいおい!やり過ぎだよ!オレの分ものこ…」


「ニャアアアア!!!」


残りの盗賊をタマが物凄いスピードで切り裂いていった…タマさんや…オレの分は…。仕方無いので腕を落とされて大急ぎしてる盗賊の頭を落として終了とした。


「おーい!!『シュワ』ちゃん!!起きろ!!」


「…アイルビーバック…」


「アホかっ!!もう戻ってるわ!!」


そのまま死体を置いておくと魔物を呼んでしまうので『シュワ』ちゃんに全部一箇所に集めさせてからサテランティスに火魔法で焼き焼きしてあげた。盗賊団の連中に情は無用だからね。オレの中では魔物よりも下の扱いだ。汚れた『シュワ』ちゃんを水魔法でサテランティスに洗って貰って、オレとタマはお風呂に入って綺麗に洗った。やっぱり風呂は便利だな。


そのまま『レオクレータ』に休み無しぶっ続けで走らせる。途中で夜中、オレ達の馬車とすれ違う連中は灯りも点けないで物凄いスピードで走ってるので、幽霊と間違えたのも居たりして、暫く経ってからちょっとした街道の伝説っぽくなった。

そんなこんなでも倍以上早い2週間ちょいで何とか国境の街『レオクレータ』に到着した。『シュワ』ちゃんと鉄馬が頑張ったお陰だ。オレ達は中の部屋でのんびりとしてたからね。


『レオクレータ』は王国と隣の【トルキュトス=レーム連合王国】との国境の街で活気はあるが何処かのんびりとした街なのであるが

、今回は偉く厳しい厳戒態勢が引かれており馬車もかなり厳しく調べられている。

何でも小さな女の子に化けた魔族が虎の魔獣と共に国境警備隊を血祭りに上げたとかで、物凄い数の兵士と王宮騎士団や王宮魔法騎士団まで出て来て居るらしい。偉い騒ぎである。


「何か有ったのかのう。物凄い兵士の数じゃな」


「ニャア〜」


全く気にも止めてない様なので念の為に言いますけど…君らのせいだからね!!


とにかくサテランティスは結界内に入れて表に出さない様にしなければならない。タマは…良いかな…虎サイズじゃ無いし。中を調べても大した物は入ってないし、他の人間は結界内に入れないから大丈夫。しかしながら厳戒態勢なので時間が掛かる。物凄い長い列になってるので二日は掛かりそうな感じだな…。

タマをモフモフしながら『シュワ』ちゃんの隣でぼけーっとしてたら隣に見覚えのある馬車が横付けされる。


「アレス!!こんな所で何をやってるんだ??」


まさかのエリオット兄さんの登場である。

何でも今回の襲撃を重く見た王国政府で王国魔法騎士団の派兵を決断し、若手のホープである副官のエリオット兄さんが臨時の団長代理で派遣させられたと言う。

オレは兄さんの馬車の中でサテランティスの仲間を捜しに『チモリヤ』まで行く事、そして早まったサテランティスが国境警備隊と一戦交えた事とそれをタマが救出した件を話すとエリオット兄さんは頭を抱えていた。


「つまりはアレスのせいなんだねコレって…」


「兄さん、それは不可抗力と言うものですよ。オレはこんな大惨事になってるとは知りません」


「もう…良い…。しかし如何するかな…似顔絵は似てないけど、女の子連れはかなり調べられるぞ」


「そうか…まあ、そこでエリオット兄さんですよ!」


「は?」


「エリオット兄さんが団長代理の権限で通してくれれば問題無しです!」


「うっ!…そう来たか…私に悪事の片棒を担げとアレスは言うのだな」


「悪事とは…可哀想な女の子を一族郎党に会わせる慈善活動を悪事の片棒とは…兄さんには失望したよ…」


「可哀想な女の子が国境警備隊3隊を撃破するかね?」


「あんな小さな女の子を大勢の大人が寄ってたかって虐めたら逆ギレもしますよ。そうは思いませんか?エリオット兄さん!」


「…もう良い…お前と論争しても勝てる気がしない…誰に似たんだ…」


「では計画通りに宜しくね!」


頭を抱え顔色が悪いエリオット兄さんを馬車に残し、オレは『シュワ』ちゃんの隣に座り、他の馬車などが待っている中エリオット兄さんの馬車に先導されて街の入り口までやって来る。


「私は王国魔法騎士団団長代理のエリオット=ランカスターてある!!後ろの者は私の従者である此処を通して欲しい!」


「こ、これは魔法騎士団のエリオット様!一応身分証だけは拝見させて欲しいのですが…」


「おじさん、ハイこれ!」


「お、おじさん…おお、Dランクの冒険者ですか!これならば問題無しです。お通り下さい」


エリオット兄さんのゴリ押しと『シュワ』ちゃんのDランクギルド証が役に立った。やはりDランクともなると扱いも違うのだな。もちろんエリオット兄さんの力有っての事だけどね。


「いつの間にこんなオートマタを作ったんだ?しかも冒険者ギルド証まで偽造して…」


「偽造じゃ無いし!『シュワ』ちゃんが魔物を倒して認められたの!」


「ノープロブレム」


「…何言ってるか分からないけど…もう無茶しないでくれ。心配で夜も寝られないよ」


「エリオット兄さん、オレは大丈夫だよ。ホントに心配しないで。下手な連中じゃオレ達に傷も付けられないよ」


「過信しては駄目だぞ。アレスの力量は大体分かっては居るが…」


「エリオット兄さん有難う。油断せずに慎重に行くよ」


「では、私は行くぞ。しかし、犯人は逃げたから本当に無駄な遠征になるな…」


「お土産買って来るから…許してね」


エリオット兄さんはそのまま駐屯地に戻って行った。しかし自慢の兄さんが魔法騎士団の副官で団長代理とか凄すぎでヤバい。この街の連中に自慢したいくらいだね。


こうして無事に『レオクレータ』の街に入る事が出来たオレ達は食料品などを調達する事にしたのだ。

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