第21話 どうやらシュワちゃんがギルド証を手に入れた様です。

『蜂影』先生から送られてきた画像は『チモリヤ』の麓にある洞窟の画像だった。その洞窟に入るまでには何重もの結界が張られていたのを『ウォールスルー』で通り抜けて来たのだ。ココまでは想定内だったのだが、洞窟内を暫く進むと更に厳重な結界が張られていた。


「随分と結界を入念に張っているのだね…こりゃあ当たりかな?」


その結界を通り抜けた先に有ったのは扉である。かなり古くて重そうな扉である。早速その門を『蜂影』先生が通り抜けようとすると…通れない…まさかの『蜂影』先生の『ウォールスルー』不発である。


「ニャア!ニャア!」


いつの間にか来ていたタマが画像のモニターをネコパンチしながらしきりに鳴いている。

一体どうしたのだろう??

タマはオレに何かを訴えているのは間違い無いのだが、今迄これ程取り乱したタマは見た事がない…まさか…いやそのまさかか。


「タマ、彼処には何か居るんだね?タマの”知り合い”が」


「ニャア!!」


なるほどね…タマの”知り合い”がその扉の奥に居るのなら『蜂影』先生が扉を抜けられない理由も分かる気がする…。『蜂影』先生にはそのまま付近の調査をしてもらう事にして、オレ達が来たら合流って事にする。もしかすると瓢箪から駒って事になりそうな予感だな。


『シュワ』ちゃんの調整と馬の調整が終わったので食料品など諸々必要物資をマジックポケットに詰め込んでおく。

サテランティスはタマとの修業で見違える程動きが良くなった。魔法の使い方も相手によって一番効率の良い魔法を使う様になって来た。やっぱり優秀だな。

サテランティスの修業の成果を見ると同時に『タマダ弐号』の所に行き、オレのマジックポケットに繋がるマジックポケットを装着した。ミスリルが必要になった場合に鉱石を放り込んで貰えばオレに届くと言う算段だ。後、サテランティスの入ってた石棺のアダマンタイトを使った爪を装着して攻撃力アップさせた。心なしか『タマダ弐号』が喜んでる様に見える。



出発の日、マイケル兄さんとカノーが見送りしてくれた。二人とも忙しいのに…。


「マイケル兄さん、行って来ます。何か有れば連絡して下さいね。カノー、俺の居ない間マイケル兄さんを宜しくね」


「アレス、本当に気を付けてね。サテランティス、魔女族が見つかる事を祈ってるよ。もし見付かっても此処には君の居場所を残しておくからね。何時でも戻って来て良いんだよ」


「マイケル…有難うなのじゃ。必ず行方が分かったら帰って来るのじゃ」


「アレス様、コチラの事はお任せ下さい。狩りの件は代役を立てて置きましたので御安心を…」


「有難う!では行って来ます!」


「行ってくるのじゃ!!」


「ニャア〜」


こうしてオレ達は『チモリヤ』に向かって旅立って行った。最初の目的地は冒険者ギルドのある街『アクロティナ』である。

オレは『シュワ』ちゃんの隣で旅を満喫していた。サテランティスはタマをモフモフしている様だ。

途中、商人なのだろうかすれ違いに挨拶を交わす時、『シュワ』ちゃんが「アスタ・ラ・ビスタ、ベイベー」と親指を立てたのには大笑いしたな、商人?さんは「???」だったけどさ。


二日ほど休まずに馬車を走らせると最初の目的地である『アクロティナ』にやって来た。街の衛兵さんにはマイケル兄さんが書いた推薦状を見せて「冒険者ギルドに行く」と告げるとすんなり入れてくれた。


この街の冒険者ギルドは、まあ寂れた感じの小さな建物である。ここら辺は魔物の出るような場所も少ないので、そんなに依頼も来ないから冒険者も少ないのだ。受付の暇そうなお姉さんに『シュワ』ちゃんが近付く。


「冒険者の登録に来た」


「ハ〜イ登録ですね〜。この紙に名前と年齢と職種を書いて下さいね〜。後、推薦状とか有りましたら一緒に出して下さいね〜」


「推薦状はコレだ。見てもらえるか?」


「ハ〜イ…ランカスター家の御子息からの御推薦ですね〜。身元保証が完了しましたのでギルド証の発行は直ぐに致しますね〜」


「有難う」


受付のお姉さんは直ぐにギルド証を発行してくれた。ランクは最下位のHランクである。実はこのランクだと国境を越えられない。国境越えのランクはᖴランクからなのだ。したがってᖴランクになる為の試験か依頼をこなさないとならないのだが…。


「国境を越えたいのでᖴランクの試験か依頼を受けたいのだが」


「試験は試験官不在なので依頼になりますけど大丈夫ですか〜?」


「構わない。何の依頼か?」


「依頼はレッドデスベアーの退治ですね〜。結構な強さですけど大丈夫ですか〜?」


「ノープロブレム」


「はぇ?」


「問題無い」


「じ、じゃあお願いしますね〜期限は三日以内で〜す」


「アイルビーバック」


「ふぇ?」


「また、戻って来る」


『シュワ』ちゃんカッケー!マジ映画かと思ったよ!受付のお姉さんには全く伝わってないけどね!!


正直、『シュワ』ちゃんには楽勝過ぎる相手なのでお任せで依頼を片付けさせる方向だったのだが、昼過ぎても戻って来ないので探しに行こうとすると何かデカいのを二つ引きずってくるボロボロの『シュワ』ちゃんがやって来た。引きずって来たのは赤熊と一周り程大きいもう一頭はどう見てもアカンの上位種タイラントベアーである。どうやらタイラントベアーをやっつけた後で間違えに気付いて赤熊をわざわざ探したらしい。ドジな『シュワ』ちゃんだなあ。取り敢えず門番の衛兵さんは腰を抜かしてたけどね。


「獲物を狩ってきた。外に置いてある。後、違うのも狩ったので査定してくれ」


「あ~、ボロボロじゃないですかあ〜。外ですね〜ちょっとお待ち下さいね〜」


外に出て獲物を確認すると大慌てでお姉さんが凄い顔して戻って来た。


「タ、タ、タイラントベアーじゃないですかあ!!Dクラスでも手こずる相手ですよ!!」


「間違えた。赤いのも狩った」


「間違えたって…タイラントだけでも良かったのに…」


「ᖴランク昇格は?」


「少々お待ち下さい〜!!」


お姉さんはギルドの奥に入ってしまった。しばらくすると初老のおじさんがやって来て獲物を調べてから『シュワ』ちゃんに話し掛ける。


「ワシはギルドマスターのコーネルじゃ。お主が狩ったのに間違いないな?」


「間違いない」


「この水晶に手をかざしてくれ」


この水晶への対策もしてあるので大丈夫だ。コレは見た記憶を映し出す水晶なので記憶装置からのカメラ情報を出してやれば問題無いのだ。


「うむ、間違いないな。ワシの権限でDランク昇格させよう。報酬は二日待ってくれないか?」


「急いて居るので報酬はギルドで受け取ってくれ。ギルド証を至急欲しい」


「そ、そうか?それは有り難い。ギルド証は今直ぐ出すぞ。おい!ギルド証大至急作ってくれ!」


そう言うと挨拶もソコソコに獲物の方に行くコーネルさん。ホントはきっちりと査定して欲しいけど仕方無いよね。受付のお姉さんが大急ぎでDランクのギルド証を持って来てくれた。


「では、シュワ様のDランクギルド証です。ご確認下さいね〜」


「確認した。有難う」


「旅に出るのですか?お気をつけて下さいね〜」


「アスタ・ラ・ビスタ、ベイベー」


「ふぇ??」


「地獄で会おうぜ、ベイベー」


「ぢ、地獄はイヤかな…」


思わぬ『シュワ』ちゃんの活躍でDランクギルド証が手に入ってしまった。そのまま馬車に乗り出発する事にした。衛兵さんは危険だから泊まって行ったら?と声を掛けてくれたけど、急ぎの旅だからね。


さて、ギルド証も手に入ったので、次の目的地は最初の国境を越える為に立ち寄る、国境の街『レオクレータ』である。

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