第19話 どうやら無茶をする魔女がいる様です。
エルフの村のテラー村長に挨拶代わりに持ってきた、ギッデ親方謹製のミスリルの弓がエルフ達に大人気である。こんなに喜ばれるならもう何本か持ってくれば良かったな。この村で一番の弓の使い手なのかな…長身のエルフの男性が試しに矢を射っている。
「コレは凄い!!引きやすいし軽いしパワーも有るぞ!」
オレはエルフの弓の腕の方に驚いたよ。スパスパと当てた矢に矢を当てるって…まるで普通に当ててんだぜ。嘘でしょ…アハハ。
しかし、テラー村長には良い情報を聞いたよ。但し、ちょっと厄介な話になってそうだな。サテランティスには辛い話になる可能性も出てきたが希望は絶対に捨てない。
その後、エルフの村を出てから樹海を経てそのまま屋敷に戻ろうとすると、森からひょっこりとリッカさんが正吉と現れた。
「アレス君、どうだった??」
「あ~、心配して来てくれたんですね。結果は上々ってとこですかね」
「じゃあ、ちゃんと話せたのね。良かった」
「エルフの村の村長さん、テラーさんって言うのですけど、リッカさんに村に来る様にって言ってましたよ。実はエルフ村でギッデ親方の弓が大人気でしてね…多分取引の話も出ると思うので、向こうの品物も見て置いて欲しいんですが」
「そう、挨拶にね…分かったわ、私の薬品でも持って行こうかしらね」
「それも良いですね!リッカさんの薬はどれも品質が良いですからね。きっと向こうでも人気になりますよ」
「まあ、ギッデ親方には負けるけどね。エルフは弓が好きだから…ウフフ」
オレも行く時は付いて行きますよと言うと、エルフには同胞同士での連絡方法が有るらしく、それを使って出入り出来るらしいので大丈夫との事。まあ『よっこい正吉』が付いていれば安心だしね。
屋敷に帰ったオレはタマをモフモフしながら魔女族の調査の進め方を考えていた。そのままサテランティスと一緒に『チモリヤ』に行く事も考えてみるが…やはり難しいな。タダでさえ見た目がおこちゃまの二人で旅に出るのも問題有るし、準備が足りないかな。やはりココもウチの先生に一肌脱いで貰おう。
「『蜂影』さん、何処?」
『蜂影』はやはりオレの目の前に現れる。真面目だなあ。
「エルフの村での話は覚えてるかい?『チモリヤ』に行って欲しいのだけど」
『蜂影』はコクリと頭を下げてシュッと消えていった。流石は忍者だ。さすがの『蜂影』でも『チモリヤ』まで行くのは時間が掛かるのでしばらくは待機だ。サテランティスには辛いだろうが少しの間辛抱してもらおう。
と考えてると部屋の扉が開いてサテランティスが顔を出す。
「アレス…エルフの村で聞いた話だが…我は『チモリヤ』に行きたいのじゃ」
「そういうと思ってたけど、もう少し時間が欲しい。二人で旅に行くには準備が要る。小さい子供みたいなのが簡単には旅に出られんのだ。取り敢えず『蜂影』は既に偵察に出してるから暫く待って欲しい」
「アレスに迷惑を掛かるなら、我だけでも行きたいのじゃ…」
「迷惑な訳無いさ。オレも早く行きたいのだけど、準備万端で行かないと…他国の支配地に行くのには色々と必要な物がある。それが手に入るまでに時間が掛かるんだ」
「…どのくらい待てば良いのじゃ?」
「最低でも1ヶ月は掛かる。とにかく全て整うまで待って欲しい。一人で行った方が時間も無駄な労力も掛かった挙句に目的地に辿り着けない可能性が大だ。オレと一緒なら確実に行ける様に手配するからな」
「…分かったのじゃ…」
サテランティスはがっかりした様に部屋を出て行った。アレは分かってないな…今夜辺り抜け出す気満々だな。困った奴だ…。
「…タマ、サテランティスの事頼めるかな?どうせ国境辺りで揉めるからさ。痛い目に遭ってから助けてあげて」
「ニャア〜」
案の定、その夜サテランティスは屋敷から出て行った。地図も何も無い、ただ南東と聞いただけである。それで行こうとするのだからある意味凄い。
サテランティスは昼は目立たない様に、夜に本気を出して走っていた。
いよいよ国境付近に近付くと国境警備にまんまと見つかる。
「キサマ!!何をしている!!って子供じゃないか!」
「通らせて欲しいのじゃ」
「何をバカな!!帰れ!!」
「じゃあ、力ずくでも通らせてもらうのじゃ」
サテランティスは馬鹿デカイ魔力を出して魔法を使う。
「エルダーフェニックス!!」
辺りは巨大炎魔法で焼け野原になっている。そのままサテランティスは逃げようとしたが、国境警備隊がわらわらと湧いてきてサテランティスを取り囲む。
歴戦の勇者達が魔法攻撃を仕掛けながら剣や槍でサテランティスに物理攻撃と好きの無い攻撃だ。
「くっ…ブリザードドラグーン!!」
今度は一転して巨大氷魔法を仕掛ける。流石の警備隊も陣形をズタズタにされて一部の隊員は脚を凍らされて動けない。それでも残りの隊員達が必死の攻撃を仕掛ける。
「デモンズプラズマ!!」
上位雷魔法で何とか警備隊を倒したが、時間を掛けたせいで別動隊がやって来てしまった。流石のサテランティスも歴戦の強者達が数の暴力でやって来るので経験の差が出て来てしまう。
もう彼女の魔力もマズい状況だ。致命傷は喰らわなくとも確実に攻撃が当たり始めている。
「サンライズノヴァ!!」
サテランティス最強の光魔法放つと周りの別動隊は吹き飛んでしまった。ヨロヨロと魔力の尽き欠けた彼女はまたも別動の警備隊に周りを囲まれた。
彼女は悟った、アレスはこうなる事を見越して彼女を止めていたのだと。自分はまだまだ弱い事も。
そして彼女に警備隊が迫ったその時、物凄い魔力が突然現れて超高速で警備隊を次々と戦闘不能にしてゆく。
「ニャアアア〜!!」
其処には何時もよりも巨大化して虎の様になり、しかも色が変わったタマが出現したのである。タマは警備隊を威嚇しながらサテランティスを背に乗せてその場を物凄いスピードで去ってゆく。そのまま屋敷まで超特急で戻って行った。
屋敷で待っていたオレはサテランティスが戻ると大量のポーションで彼女の傷を治すとそのまま彼女の部屋に連れて行きベットに放り投げて扉を閉めた。
後はタマの労をねぎらってモフモフしてあげる。部屋で待ってたらイキナリ魔力を持ってかれたからタマが戦闘に突入したのも察知していた。結構キツいけど仕方無いよね。
まあ、コレで暫く大人しく待ってて欲しいよ。オレだって早く連れて行ってあげたいのだからね。
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