第14話 どうやら隠密に調査させた様です。

早速、『蜂影』にランデウス帝国のハウアー大臣を調査させる。

調査に来た3人は魔導具によって記憶が改ざんされているので「入った洞窟には何も無かった」と報告する筈である。

もし、魔法か何かで記憶の改ざんに気付く様なら気は進まないが全員始末させる予定だ。

と言うのもランデウス帝国は森と樹海を挟んだ反対側である西側に国を構えているので、下手に樹海開発に着手されたりすると面倒な事になるのだ。向こうの森も樹海自体も広大だし樹海をあまり突付くと魔物が暴走しスタンピードを起こす可能性も有るので余計な事は向こうもしないだろうが、ミスリル鉱脈が絡むとなれば馬鹿な事も考える可能性が出て来るのだから。取り敢えず何年かの猶予期間が必要なのでそれ迄はバレる訳にはいかない。


『蜂影』は樹海を真っ直ぐに進んで帝国領に入り込む。帝国の領土に入ってからは光学迷彩で姿を消し、無音化状態で帝都まで向かった。

途中で何箇所かの街の様子も映ってたけど、意外と発展してるし賑わっているのな。帝国は商業に力を入れてるのかな?


遂に帝都に着いた。デカい街だわ。

帝都の周りには魔物の結界やら色々と魔法壁で防御している様だが、【禁書】の『ウォールスルー』の効果で全ての防御や結界魔法を素通りしてしまう。

難なく帝都の潜入に成功した『蜂影』は3人から聞き出したハウアーの屋敷に向かう。

ハウアーの屋敷は帝都の西側にある貴族街の中の一際目立つ建物だ。やはり厳重な警備と結界が張られていたが『蜂影』には通じない。

屋敷内に入り込んだ『蜂影』はそれから20日間ハウアーの側で全ての行動を監視した。


ハウアーは帝国の財務担当の大臣である。帝国の財政を任されるだけあり、かなり有能な大臣である。各地に身分を隠して色々と調査に自ら行ったりし、貴族としての枠に捕らわれない異色の大臣である。

だからこそ王都に潜入してオークションに参加したりして経済情勢を探り、今回のミスリルにたどり着いている。

街の活気が有ったのもこの男が大臣だからこそなのかも知れない。

カノーに意見を求めたが、やはりこの男はかなりの切れ者とオレの見立てと一致した。


そしてあの三人が帝都に戻って来た。

ハウアーの屋敷に到着した男達は、オレが魔導具で刷り込んだ情報を一部始終報告した。


「本当に間違い無いのか??情報だと樹海の洞窟からミスリルを運んでいると聞いたぞ」


「少なくとも我らが調べた洞窟では無いかと…魔物があんなにいる場所で採掘など出来ません」


「人は居ませんでしたし、何かを運んだり採掘の音さえもしないのですから」


「う〜む…ではその洞窟では無さそうだな…もっと奥なのかも知れんが…」


「いやいや、あの奥は魔物がヤバいレベルですから!そんな所に行くのも大変ですよ!」


「ならばミスリルは何処に在るというのじゃ!!」


「…情報がガセの可能性も有るかと…」


「だがミスリルは有るのじゃ!あの剣を見たであろう??」


「確かに…しかしながらあの場所は無いかと…」


「むう…お前たちが言うならそこでは無いのかもな…仕方無い、また何れ王国に行き調査するしかあるまい。他にもやる事があるしな」


どうやら3人はハウアーの信頼を得ていた手の者だった様だ。

取り敢えず時間稼ぎは成功である。コレでまたハウアーが直に王国に入った場合は王国騎士団に捕まえさせれば良い。そうすれば王国の利益になる。これならハウアーを暗殺する必要は無い。この男はかなり有能な奴だし、敵国と言っても戦争してる訳じゃないからね。危害が及ぶ様なら躊躇なく殺るけどそうで無いなら全く必要は無い。


実はこの判断が後のアレスに大きな影響を及ぼすのだが、それは後のお話。


タダで帰るのも何だし『蜂影』には帝都の城を調査させる。

『蜂影』は難無く城に潜り込みランデウス帝国の皇帝ゼルバ=ランデウスを捉える事に成功した。

恐ろしく魔力が強大だ。天才エリオット兄さんでさえ足元にも及ばない。あの魔人でさえも敵わないだろう。

そして皇帝ゼルバは人を見る目が高い。ハウアーもそうだが、軍務大臣のラキアス、内務大臣のユーリアス等々…人材の宝庫であり、その人材を必要不可欠な所に登用し仕事をさせている。その為、内政はしっかりしており、経済活動も盛んだし、軍事力も相当なものだ。コレを一代で興したのだから大した手腕である。

ゼルバは綺羅びやかな物を嫌い、完全実用主義なので政務時以外は何処の街の者かと思う様な質素な服装で過ごしている。

魔法は判明しただけでも二つで火と風である。謁見中に退屈だったのか火を指先に出して遊んでいたので判明した。風魔法は髪の毛を乾かす際に使っていた。

また野心は相当なものだが、自国民を大事にする所はそこ等の独裁者とは一線を画す。


調査してる最中にこんな事があった。

帝国の西に有る小さな村がレッドホッパーの被害で食う物にも困っているとの報告されたのだ。するとレッドホッパーの殲滅と村人の救助及び食事避難所支援と3年間の無税化を即座に決定して実行させたのである。その間僅か5分程度…決断力と実行力が突出している。

我が王国も政治力は悪くないと思うが、ここ迄は素早くないね。

コレならマイケル兄さんの領地が安定したら帝国に移り住むのも良いかも知れない。ここなら冒険者として居着いても面白そうだ。


ここまで来て手ぶらで帰るのも面白くないので城の宝物庫にお邪魔してみた。色々とある中で魔導具の部屋があった。見た感じでは細工的にオレの魔導具よりは技術は下であったが、1つだけ壊れていたが明らかに今の技術では無い魔導具が有った。推察するに何か結界を発生させる様だが、ちょっと変わった回路構成である。オリジナルかな?埃だらけだし倉庫の肥やしだろうから貰っていこう。

後は中々貴重なオリハルコンの短剣や盾などを少し頂くとしよう。魔銃デリンジャーの進化に使わせてもらう。

余興だが頂いた物の場所に『クラウド』と書いた紙を残す。かの大盗賊の真似で有るが、盗みは盗賊の仕業とでも思ってくれれば倉庫番に被害は及ばないだろうとの願いを込めてだ。


後に帝国領内だけで無く各国において謎の盗賊が現れては鮮やかな盗みを働く事になる。まるで雲か霧の様にお宝が消え失せる事からその盗賊は『クラウドミスト』と呼ばれる事になるのだが…それもまた後のお話。


こうして『蜂影』の初任務は大成功である。そのうちまた帝国に飛ばしてハウアーの動きは常に探る事にする。


一週間後に帰って来た『蜂影』からオリハルコンの武具を受け取り、直ぐに【金属使役魔法】で使役してから魔銃デリンジャーの大改良に着手する。現在は中折式の二発だがコレを中折式の回転式六発に変えた。コレで連射が可能になった。まあ銃弾は破裂後にシリンダー内に戻って来るので弾要らずだけどね。

魔銃デリンジャーから魔銃コルトに変更かな?また魔銃の魔力を圧縮して放つやり方から魔力を魔導炉に貯めて増幅し、その力で放つやり方に変更した。新しくオリハルコンを増やした事で魔銃の魔力が上がった為だ。コレの方が効率良くパワーを使える。

中々良い切り札が出来たな。


そしてもう一つ、壊れている魔導具である。ある種の結界装置かと思っていたのだが、実際調べてみると、とんでも無い装置だと判明した。


それは【簡易転送魔導具】であった。

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