第13話 どうやらスパイが潜り込んだ様です。

マイケル兄さんの開拓地は開墾用と建設用オートマタによる休み無しの働きにより、森の3分の1は開墾出来ており、10数組の開拓者がやって来てくれた。

来た人達は最初こそオートマタにビックリしていたが、家付き農地が直ぐに手に入るので喜んてくれた。開墾地は綺麗に整地と区分けがされているので揉め事もない。用水路もしっかり完備しており水争いも起こさない。皆には早く作物で生計を立てられる様に頑張って欲しい。作物が出来るまでは食料品や生活雑貨は此方で支給する。この為のミスリル予算だからね。資金は豊富だ、この程度じゃまだまだ全然減らないどころか鬼の様に増えてる位だからね。


精製所を中心とした町にはギッデ親方の鍛冶場とカルタス商会の出張所が有る。

そして最近出来たのが薬屋である。この薬屋はリッカさんというエルフの女性のお店だ。


リッカさんは王都の方でお店を出していたのだが、薬草の研究者(マニア)であるリッカさんは薬草を求めて樹海を調べたいとやって来たのだ。樹海には色々と珍しい薬草や新種の薬草などもあるらしい。

オレはマイケル兄さんと相談して、ミスリル鉱脈の洞窟の反対側の樹海に限り立ち入りを許可した。立ち入りを認める代わりに薬草の効能や採れる地域などのマッピングを有償で依頼し、作った薬の販売許可や薬屋の建物を無償で提供した。

かなりの好条件にビックリしていたが、闇雲な開発により貴重な薬草が失われない様にする為にはマッピングは重要な事を説明するとリッカさんは素晴らしいと喜んて協力してくれる事となった。

但し、樹海は魔物の巣窟だし危険も多いのでリッカさん調査用のオートマタを作ることになった。踏み荒らしたくないとの事で二足歩行に決定。初めての言語機能搭載で意思疎通が可能。大きさはリッカさんと同じ位でマジックバック装備と自動マッピング機能、魔物探知と魔物避けを取付。腕は細くて伸縮自在のが4本付き、屈まずに下の薬草を採れる繊細な動きの下の腕と、ブッシュ地帯の道を切り開く上の腕が有る。また、対魔物用の魔法として古代魔法の1つで五感阻害の魔法【センシズジャマー】を搭載。相手に掛けると小一時間は五感が効かなくなる。このオートマタが居れば二人か三人なら守れるだろう。後はリッカさんに色々と教育して貰う様に頼んだ。カスタマイズはやって貰った方が良いもんね。名前は?と聞かれたので『よっこい正吉』って冗談で言ったらそれになってしまった…何か…済まないね正吉…。



しばらく経ってギッデ親方の『目一』の剣が完成した。

正直ヤバい。最初見た時にあまりの凄さに腰が抜けそうになった。マイケル兄さんは「国王の献上品にしたら爵位が貰えそう…」と言ってたが、確かに領土付きで貰えそうだな。

カルタスさんは涙目になって「こんな素晴らしい剣を取引出来るなんて商人冥利に尽きる」とか言ってたけど気持ちは分かる。

コレは王都のオークションに出すと言っていた。どのくらいになるのか本当に楽しみだ。

ギッデ親方にエリオット兄さんから取り寄せてもらった高級な蜂蜜酒を御祝いに持って行ったら凄く喜んでくれた。


「いやあ、良い仕事の後は美味い酒に限るぜ!」


「ギッデ親方の為に樽で取り寄せたから沢山飲んで下さいね」


「すまねえな!いゃあ、極楽極楽」


「ニャア〜」


「おっ!タマも飲むのか??」


タマは臭いを嗅いで直ぐに俺の所に戻って来て肩の上に乗った。


「何でぇ〜付き合い悪りぃな〜」


「タマは基本飲み食いしないからねぇ〜」


「ん?そうなのか?じゃあ何食ってんだ??」


「オレの魔力。大した量じゃないけどね」


「魔力って…何かタマも規格外だな…」


「いやあ、お待たせして申し訳ない」


とカノーとカルタスさんそれに俺が呼んだ薬屋のリッカさんがやって来た。皆で御祝いの宴会だ。料理を沢山持ってきたリッカさんは意外と料理好きでカルタスさんや親方にたまにお裾分けしたりしてた様だ。ギッデ親方とリッカさんは恐ろしく酒に強い。ザルである。マイケル兄さんが仕事で遅れてやって来た頃にはカノーとカルタスさんが潰されてた。


「この二人はだらしねぇぞ!なあ?」


「全くだよ!コレからが楽しいのにさ!!」


「…何か凄い事になってるね…」


「兄さん、オレ未成年で良かったよ…」


前世では酒は良く飲んだけど、こんなに飲まなかったよな…もう酒樽が1つ空きそうだからな。結局、朝まで飲み明かした二人は酒樽3つ空けちゃいましたとさ。良かったよ、ちゃんと3つ用意してもらっててさ!!


その後、『目一』の剣はオークションで王族の公爵家が競り落としたらしい。値段は跳ね上がり5000白金貨で落札。1白金貨は10000金貨なので5000万金貨が手に入った計算だ。コレは現在ウチの父の領土で一年間で入る租税が約100万金貨だからどれだけ高額で競り落とされたか分かる。



オレが7歳になる頃には、開墾地も人が増えて100世帯近くになった。もう村と呼んでも差し支えないので皆の投票でリラク村と名付けられた。町もカルタス商会が中心となり、色々なお店を出し始め賑わい始めた頃に一つの問題が起こった。それはミスリル洞窟への侵入者が現れた事である。


侵入者は3名で諜報活動を生業とした者達だ。彼等はミスリルの洞窟を探し当て、それを探りに来たのだ。オレは魔導具カメラで彼等の様子を見ながらタマと洞窟へと向かった。

3人は先ず、音のしているミスリル洞窟へと侵入。そしてタマダ弐号に遭遇する事となった。

先ずは光学迷彩で姿の消えてるタマダ弐号に気付いてない3人に麻痺のガスを噴射、更に拘束用の糸を吐いた。ビックリした3人の内1人は完全に拘束されて身動き撮れず。魔法を使って逃げようとするも発動した【サイレントキラー】により属性魔法は使えない。

慌てる2人をタマダ弐号が糸とガスで完全に拘束して終了となった。


洞窟に着いたオレとタマはタマダ弐号に出迎えられる。


「タマダ弐号、良くやったな」


「ニャア〜!」


捕まえた連中に魔導具の記憶抽出マシンを被せて、何処の何者で誰の指示で何の目的でここに来たのかの記憶を抽出した。彼等は西の強国であるランデウス帝国よりやって来たのだ。命令したのはハウアーと言う大臣だった。どうやら王都でたまたま来ていた大臣がオークションに掛けられたギッデ親方の『目一』の剣を見て色々と大枚はたいて情報を掴んだらしい。取り敢えず洞窟から離れた所に3名共に記憶を書き換えて何も無かったと報告させた。

しかし、このままで引き下がるとか思えない。取り敢えず洞窟に光学迷彩と結界を張り巡らせて見えないし行けない様にした。


それと共に諜報活動用のオートマタ製作に取り掛かる。今回のモチーフはオールミスリルのスズメバチだ。先ずは超極小の魔導炉を作り、極小魔導カメラ及びマイク、光学迷彩と無音の魔法に【禁書】の『ウォールスルー』という全ての防御及び結界魔法を気付かれずに素通り出来る禁術魔法の術式を魔法陣に組み込む。魔力感知レーダー装備し、ミスリルの極薄の羽を超高速で動かす事により動きは見えない程素早い。

そして魔導ポケットを出し入れ出来る極小魔導ホールを装備。敵の資料や貴重品なども持って帰れる様にした。

後は滅多に使わないだろうが暗殺用に症状が出ない毒を毒針に組み込んでいる。リッカさんお手製の猛毒だ。

防御魔法として古代魔法【ミラー】の魔法陣を組み込み相手の攻撃を反射させる事が出来る。


このスズメバチのオートマタは『蜂影』と名付けた。

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