第12話 どうやら計画通りに事が進んてる様です。
ギッデ親方が来てからミスリル製の武具を製作して貰い、それがかなり順調に販売出来ていた。その予算で新型の開墾&畑作り用オートマタを作って開墾作業を24時間続けている。
今日は鍛冶屋のギッデ親方がミスリルの鉱脈が見てみたいと言うので一緒に連れて行く事にした。ウチに来てから休まず頑張って作ってくれてたので、その御礼も兼ねてだ。
しばらく歩いてるとタマがやって来たので合流した。タマは狩りの空いた時間などにタマダ弐号と結構頻繁に交流しており、タマダ弐号の教育にもなってる様だ。
途中、倉庫にミスリル鉱石を運んで来たオートマタを見て親方は驚いていた。そりゃあ、樹海からイキナリオートマタが出てくりゃ驚くよな。
樹海を歩きながらギッデ親方の旅の話などを聞いた。
親方は優れた刀剣や防具で知られる極北のノーライト神国で、さる有名なドワーフの工房で修業し、工房から独立後もノーライトに残って欲しいと懇願された職人らしい。だが親方は工房に筋を通して東の国に渡ったのを皮切りに、流れ流れてここまで来たらしい。
つまり、凄腕の職人をウチはスカウト出来たと言う事だ。ギッデ親方がこの地に何時まで居るかは分からないが、出来るだけ長く居て欲しいし、工房を開いて根を下ろしてくれたらと考えている。
ギッデ親方の鍛えた剣は素人の俺が見ても素晴らしい剣だよ。
洞窟の入り口に到着すると、直ぐに下に降りる魔法陣に乗り下まで皆を転送する。
下に着くとタマダ弐号が姿を表す。それを見たギッデ親方は顔を引き攣らせた。
「親方、この子が此処のガーディアン『タマダ弐号』です。タマダ弐号、この方はギッデ親方だ。ミスリルで剣や防具の製造をお願いしてるんだよ」
「…もう何を見ても驚かねぇよ…」
タマダ弐号に親方を紹介したのでそのままミスリル鉱脈の方に案内する。鉱脈では採掘のオートマタが一生懸命働いている。
「こりゃあ凄えな!前に見せてもらった鉱山の鉱脈よりも質が良いし、規模もデカいな!」
ギッデ親方は東国のフロスと言う国で鉱山を見学した事があると言う。その親方が褒めるのだからウチの鉱脈は上等なのだろうね。
親方が見ている間にオレはタマダ弐号に光学迷彩を施す部品を組み込む。タマや魔導カメラの光学迷彩をタマダ弐号が羨ましそうに見てたので改造したのだ。後は関節の動きが滑らかになる様にマイナーチェンジした。
「オイオイ…何だ今のは??加工したのか?どうやったんた?」
ギッデ親方には、魔導具用の特殊技術ですよ〜と言ったが納得し難い様である。
オレの【金属使役魔法】は魔導具製造と恐ろしく相性が良い。魔導具を作る場合に金属加工は必要不可欠だ。それが【金属使役魔法】であればどんな形でもイメージを金属に伝えれば加工出来るし早い。あの【水やり】のおっさんは金属の声を聞けと言っていたが、今ならその意味が良く分かるな。案外、オレに魔導具の知識を与える様に仕組んだのかも知れないな…知らんけど。
マイナーチェンジしたタマダ弐号は光学迷彩を随分と気に入った様で、何度も繰り返し光学迷彩を使っていたが、驚いたのは教えてもいないのに一部だけ見え無くしたり、偵察用の蜂のオートマタも消したりしていた。天才かよ。
一通り見終わったギッデ親方は何故精製所を洞窟の上に作らないのか?と聞いてきた。確かに効率を考えればそうなのだが、其れは父との問題が有る為であるから仕方無しと話した。
「まあ、親子で拗れると修復は難しいからな…貴族なら尚更だ」
「何年かの辛抱ですから。もう既に向こうは詰んでる状態なので…後は移住者が順調に増えてくれればこちらの完勝です」
「…前から思ってんだけどよ…お前ら兄弟、ホントはおっさん何じゃねぇか?」
「…ボク6さいでしゅ」
「やかましいわ!その返しがどう見てもおっさんじゃねぇかよ!」
まあ、オレは前世の記憶があるから仕方無いのだけど、マイケル兄さんの若年寄り振りは異常だ。もしかしたらマイケル兄さんも転生者なのかも知れない。
帰りにもう一つの洞窟の事も聞かれたので地底湖の話をすると、親方は面白い話しをして来た。何でも東の国のミスリル鉱山の近くにあった洞窟の地底湖の底には色々な貴金属の鉱石が沈んでいたらしい。
今度、調査用のオートマタでも作るかな。
最近タマは狩りを俺の代わりに引き受けてくれてるが獲物を集めるのが大変そう。帰ったら獲物を収拾するオートマタを作成予定。そのまま屋敷に持って行かせても良いけど、使用人が腰を抜かすとイケないので今まで通りかな。今、屋敷にいるミレーナ姉さんや使用人の皆には良いもの食べさせたいからね。
そう言えばミレーナ姉さんにしばらく会ってない…元気にしてるのだろうか?
町に帰るとホクホク顔のマイケル兄さんとカノーが待っていた。親方の作った品が飛ぶ様に売れたらしい。今はカノーと知り合いの商人でカルタス商会のカルタスさんに王都やその他の街に商品を売りに行って貰ってるが、とにかく人気で剣などは取り合いで怪我人が出る程だという。「謎の鍛冶屋ギッデ」の武具はその正体が謎の所と品質の良さでかなりの評判だそう。カルタスさんは大喜びである。
「ギッデ親方、無理の無い工程で作って下さいね。もし、親方が最高級品を作る場合は他のを遅らせてでも其方を優先して下さい。値段は限度無しでも行けます」
「ほう、『目一』を作れってか?構わんぞ。一度試してみたかったんだ」
『目一』とはドワーフの隠語で”今のレベルでの究極”を表すらしい。全ての技術を注ぐので最低でも1ヶ月はその武具製造に没頭するらしい。それでも構わないと言うのだから相当な値段になるのだろう。どんな凄い物が出来るのか、オレも楽しみである。
その間、オレはタマの為に獲物収拾用のオートマタを作り出した。コレでタマの負担が減るだろう。そうすればオレとタマとの”もふもふタイム”の時間が増えるのだ。何よりも優先させなければならない。
早速、オートマタはタマの狩った獲物を効率良く収拾して歩く。有能。
「ニャア〜」
いつもより早く帰って来たタマを労う為に膝の上でもふもふタイムである。ホントに可愛い。
やっぱりタマとの時間はオレにとって何よりも大事な時間なのだな。
また、修業の時間がどうしても取れない時に、タマにオレの魔力を限界まで削り取って貰い、直ぐにまた魔力を戻して貰うってのを数回繰り返す。ドえらいキツいけど短時間で魔力量の増強の修業になる。
効率は良いけどコレだけだと身体強化や技術向上が疎かになるので、やはりキチンと時間を掛けるのも大事なんだよね。
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