第15話 どうやら地下湖で何か拾った様です。

【簡易転送魔導具】は転送装置を小型化した物である。と簡単に言ってしまえばそういう事なのだが、転送装置自体が作るのが難しいのに簡易って更に無理ゲーにしか感じない。

転移の魔法あるいは魔法陣は【古代魔法の書】にも【禁書】にも有るのだが、どちらも膨大な魔力を必要としているので簡単には使用出来ない。

魔石でやろうものなら伝説級の魔石(ドラゴンの上位クラスとか)がいくつも必要って事で無理なのだ。それを簡易でやろうとしてるんだからビックリである。

それを可能とするのにはこの独特な回路の組み方にヒントが有る様だ。最初はちんぷんかんぷんだったけど、一つ一つ区切って考えてみると実に面白い事をしている。増幅と圧縮を繰り返して魔力の増強を図っている。そしてある程度までになると限界が生じるが、コレを魔導炉に何回か押し込める事で魔力の核が出来上がり、この核を更に増幅すれば実用に耐え得る魔力が出来る。

しかしながらここからが問題でその大きな魔力を転送装置まで送り込む術が無いのだよ。そのまま送り込むと物理的に耐え切れないのだね。最終的にはオリルコンでも試したが耐えられずに蒸発した。

つまり、現時点ではコレを動かすのは不可能であった。残念だが仕方が無い…そのうち良い材料が有ればまた試せる。


しかしながらこの回路は思わぬ副産物を産んだのだ。

魔力の核までの製造法をそのまま魔銃コルトのシリンダーに応用してみたのだ。

六発に合わせて順番に圧縮を繰り返し、最後の六発目に魔導炉を組み魔力の核を作り撃ち出す方法である。

開墾する予定の森に撃ち出すようにしてテストする。何か嫌な予感がしたので鋼の棒を使って固定した魔銃を離れた場所から撃ったのだが、撃ち出した魔力の核が強大過ぎて銃口がラッパの様に裂けるわ、その威力で森が10キロ位だけど焼け野原になった。完全にやり過ぎです。本当に申し訳ありませんでした…。


その後、完全に調整してシリンダー内六発の一つ一つで回路を組み撃てる様にした。コレで6連発の連射が可能になった。反動は【禁書】の『ミラー』を付帯する事により反動を反射させて防ぐのと同時に威力も増す事になった。まあ、よっぽどで無いと最大出力では使えないな。普段は最小で…まあ、最小でも改造した時より倍の威力だからね…。


この応用で街や村で使う魔力を作り出す魔導炉の大きさを抑える事に成功した。敷地を取らずに魔力を豊富に排出出来る魔導炉は、今後の街の発展や、新たに出来る街にも寄与する事になるだろう。



エルフで薬屋のリッカさんはオレの作ったオートマタ『よっこい正吉』と樹海を探索しながら貴重な薬草群生地のマッピングを順調に作成していた。それと同時に万能薬の販売も開始していたのだが、この薬の評判がすこぶる良い。王都にある自分のお店で売り出すと飛ぶように売れ、瞬く間に看板商品へと踊り出たのである。

この薬は樹海でしか採れない新種の薬草をツナギで使う事で色々な効能の薬草を入れ込む事が出来たらしい。リッカさんにはこの薬草を安定して栽培出来ないかと提案してみた。


「う〜ん、本来薬草には魔素が必要なのよ。この薬草ももちろんね、だから普通の場所には無理かな〜」


「やっぱり樹海じゃ無いと駄目か…じゃあ樹海で育てるのはどうでしょ?」


「それも無理かもね〜。薬草には薬草毎の好みの魔素ってのがあるのよ。魔素の濃さとかね。その場所と同じとかはあり得ない。だから群生地は大事なのよ」


「むう…魔素の濃さか…あっ、そうか!じゃあ魔素の濃さを計れたらどうでしょう?」


「計る??そ、そうね…そんな事が出来たらやって見る価値はあるかも。群生地を作れるかもね!」


と言う事で魔導具の中に魔物を捉える魔導レーダーが有るのでそれを応用出来ないかと。

魔素は魔力の大元の様なものなのでレーダー感度を上げればと思ったが、そう簡単にはいかない…色々と試行錯誤して魔素の濃度計をやっと作り出した。2ヶ月も掛かったよ…。


リッカさんは魔素の濃度計を『よっこい正吉』に持たせて探索の終わってる地域の魔素の濃度を全て計らせた。それによって魔素の濃度が近く、他の薬草に被らない場所に薬草を埋めて群生地になるかを試している。結果は暫く後になるだろうね。



前にギッデ親方から聞いていた地下湖に貴金属が有った話しから、調査させるオートマタを作製した。水陸両用にするつもりだったのに色々と考えてたらアンモナイトみたいなのになってしまった…。『アンモ』くんは理論上何万mでも潜れる様になっている。水圧は全て『ミラー』の術式で反射させるので潰れる心配が無い為である。錆びない様にミスリルで作られている。拾った物は口に付いてる魔導ポケットに入れちゃうので大きさはボーリングの球位である。


オレはタマを連れて地下湖にやって来た。『アンモ』ちゃんのデビュー戦である。

モニターなどを置いて準備万端で『アンモ』ちゃんを着水させる。後は任せたよ『アンモ』ちゃん!!タマは飽きたのか何処かに行ってしまった…タマダ弐号のトコかな。


全長は3.8☓12.6kmと縦長で深さは最深部で200mと意外に深い。入口側から徐々に深くなって行き8キロ先に最深部がある。淡水で水質は弱硬質。生き物は少なめでヌマエビと目の無い小型の魚が数種類くらい。

底は砂地と泥地が有り、深くなるほど泥地。

特に何も無くそのまま進んで行き最深部まで到達。

こりゃあハズレかなあなんて思ってたら宝箱っぽいのが3つ有りましたよ!!

そのまま回収していると、その先にも石棺の様なのが有りそれも回収。

残念ながら貴金属類や鉱脈は無かったけどお宝っぽいのをゲットしたので『アンモ』ちゃんの帰り待ちとなった。


帰って来た『アンモ』ちゃんが持って帰ったのが宝箱っぽいのが3つ。石棺ぽいのが1つ。


宝箱っぽいのは開けるとそれぞれ中にはカチューシャと杖と軽鎧が入っており、それぞれはミスリル製のかなりの業物。3つとも物凄い魔力が込められている。ギッデ親方に見せたら喜びそうだな。


そして石棺だがコレがタダの石じゃ無かった。アダマンタイトの鉱石で作られた棺だったのである。むう…嫌な予感がする…つうか嫌な予感しかしない。開けるのを止めようかとも思ったが中身も気になるしアダマンタイトも気になる。


「ニャア〜」


一緒に来ていたけど飽きて何処かに行ってたタマが、タマダ弐号を連れていつの間にかやって来てた。どうも嫌な予感を察してくれたみたい。


オレは念の為に魔銃コルトを出して、タマは準戦闘態勢、タマダ弐号に棺を開けさせた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る