第7話 どうやらタマを飼う事になった様です。

ざっと歴史を振り返りながら、この城の仕様も頭の中に入っている。

この城は上層3階層に下層5階層の8階建て。

上層部には生活用の部屋や魔導具が揃っている様だ。

下層部には研究室が殆どで魔導具の実験や製造。生物や精霊の実験施設が入っている。そして一番下層部が動力室と管理室になっており、動力部を動かさないと全ての部屋が開かない。


「タマダ、動力室の動力を動かしてくれ」


『リョウカイシマシタ。ヨビドウリョクカラシュドウリョクニ、イコウシマス』


城の灯りが入っている。どうやら本格的に動き出した様だ。

取り敢えず図書ルームで色々と情報を探ってみる。魔導具の製造書はどえらい知識である。魔法に関しても失われた古代魔法や禁書みたいなのも知識として入れこんだ。マイケル兄さんが知ったら喜んだだろうなあ。古代文字と古代魔法の書だけでも製本するか。


但し、超魔導生物に関してのデータは一切無かった。恐らくはサターン本人が入れなかったのだろう。確かにそんな物を産み出せる知識を残しておいたら何に使われるか分からないからね。


取り敢えず色々と情報を貰ってから今日は屋敷に帰る事にする。明日は城の中の探検だ。


「タマダ、オレは家に帰る。ココは入り口を閉めて誰も入れない様にしてくれ。明日は朝早くからココに来るからその時に開けてくれ」


『リョウカイシマシタ。ケイカイタイセイニイコウシマス。アスノオコシヲ、オマチシテオリマス』


城を出ると入り口が閉まり城内の灯りが消えた。

オレはそのまま洞窟に戻って外に出た。屋敷に帰る途中でマジックバックに放り込んだ魔導具を調べた。一つは警備用の警棒で電流が流れる奴だった。そうか、あの部屋は警備室だったのか。もう一つは魔導ライトだった。


屋敷に入る前に昨日の獲物を半分出した。これでも少し多めだ。今日も美味しい料理が食べれるよ。


翌日は朝早くから洞窟に向かい、そのまま城に入る。


『オマチシテオリマシタ』


「うん、タマダご苦労さん。今日は城の中を案内して貰うぞ」


『リョウカイシマシタ。ドチラカライキマスカ?』


「うん、一番上から降りて行こう」


『リョウカイシマシタ。コチラデス』


タマダが案内してくれたのは魔法陣だった。乗るとタマダが操作して一番上の魔法陣に移動した。


『ココハ、サターンサマノプライベートクウカンデス』


やはり一番上は城主の部屋だったのか。

色々とあるのかと思ってたが、各部屋はスッキリとしてほとんど何も無い。生活感がまるで無い部屋ばかりである。唯一彼の執務室兼監視室の様な部屋には彼の物なのだろうか?杖の様な物が立て掛けられており、それだけがこの階に残されていたたった一つの物だった。


「タマダ、サターンはどうなったのだ?」


『サターンサマハ、オナクナリニナリマシテ、サイシンブノヘヤデ、ショウキョサレマシタ』


サターンは死んだ様だ。まあとんでも無い昔だから死んでて当たり前だが、当時の技術で不死不老とかは出来なかったのだろうか?


「不死不老とかの技術は無かったのか?」


『アリマシタガ、サターンサマハ、ミズカラシヲエラビマシタ』


なるほど…自殺って事かな。

やはり色々と悔いていたのかも知れない…世界を滅ぼすのは簡単なメンタルじゃ出来ないわな。そういう意味ではサターンはマッドサイエンティストでは無かったのだね。


2階は居住空間らしいのだが全く荷物は無かった。住んだ形跡も無かった。聞くとサターンは独りでこの城に居たらしい。誰も助けなかったのかそれとも拒否されたのか…今となっては理由は不明だ。


1階の開けてない部屋も開けてみると中からオートマタが出て来てビックリした。一応主人になっていたので攻撃はされなかったが、かなり強そうなのでヤバかったかもだ。取り敢えずこいつ等は警備に当たらせた。


地下1階は魔導具の研究室と試作用の生産設備が有った。色々と残されていたが生活用品が殆どだった。魔導キッチンは材料があると自動的に料理を作るので恐ろしく便利。大きさはドラム洗濯機位で自走可である。魔導服はピッタリサイズで快適温度を保ち、自動クリーニング機能も含まれた逸品だ。その他にも色々と有るので後で試してみるつもりだ。


地下2階は魔導具の生産ラインだった。設定をするとその魔導具を生産出来るラインが自動的に組まれる。但し材料が大量に必要になるので予め入れておかないと生産しない。

1階に居たオートマタも此処で生産されたみたいだ。


地下3階には色々な生物の生産場が有った。所謂人工子宮の様な物である。此処でどんな生物を作ろうとしていたのかは不明だった。と言うのも記録が完全に削除されているので知りようが無いのである。


地下4階には独房の様な部屋が沢山あった。上の階で造った生物を閉じ込めておく場所なのか?中には骨らしきモノも有ったが、今は全部見る気が起きない…


最深部は動力の部屋で魔導炉によるエネルギー供給が行われていた。まだ何年かは燃料である魔導石を取り替えないで済むようだ。


オレはそのまま上へと1階づつ周る事にした。何か見落としが無い様にする為である。


地下4階では1部屋づつ確認した。中は傷だらけの部屋とかも有り、暴れた者も居たらしい形跡も見て取れた。

最後から2番目の小さい部屋を開けた時に何かの気配を感じて警戒態勢を取る。見てみると小さな六角形のヒトデみたいな形をしたベンダントが転がっていた。真ん中と分かれてる6ヶ所に魔石っぽいのが埋め込まれている。拾うと魔力を少し吸われたのでビックリして放すとヒトデのベンダントが額に張り付いたような子猫が姿を表した。身体は実体なのか魔力が具現化した様な姿だ。


「ニャア〜」


『サターンサマノペットダッタ、チョウマドウセイブツデス』


おいおい…超魔導生物って世界を滅ぼしたアレじゃねーのかよ?と思っているとタマダはその技術で造られた試作生物だと教えてくれた。


『ナマエハナカッタノデ、アレスサマガツケル』


「じゃあお前こそタマだな」


『タマダナ、デスネ』


「ちげーよ。お前ワザと言ってんだろ?タマ!!」


『タマ、デスネ』


「タマ、おいで」


「ニャ〜」


呼ぶとタマは空を走る様に肩に乗って来た。触ると身体も実体化しておりモフモフだった。喉を撫でるとゴロゴロして猫っぽい。可愛い。


こうしてサターンの産み出した超魔導生物の試作であったタマを飼う事になったのである。

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