第6話 どうやら遺跡を発見した様です。

最後の洞窟は地底湖程ではないが、ちょっと長めの洞窟で1時間ほど走るとその先は物凄く広くなっていて巨大な建造物が有った。所謂古代遺跡の類だろう。


本来は冒険者や騎士団に調べさせる様な規模だ。とにかく周りと入り口付近は調べて置いて、その先は準備万端で来なければならなそうだ。今の状況では間違いなく回復薬が足りない。それとトラップに対しての準備やガス系の装備も要る。


周りを灯りを灯しながら捜索していると魔物が出て来た。狼系の魔物だが色は真っ白だ。早速ミスリルの棒で応戦する。中々素早く動き回るのでコチラの攻撃が当たらないね、結構強敵じゃないか。何回かの遣り合うと狼君が遠吠えで仲間を呼んだ、こりゃマズいな。

結構居るのかワラワラ出て来てちょっと見でも20匹位居る様だ。

こうなれば仕方が無い…関節の動きを妨げない様に薄いミスリルの鎧を身体中に張り巡らせてミスリルの鋼糸を両手の指から出した。

狼君たちは一斉に飛び掛って来た!が、何匹かはスパッと斬られてしまう。張り巡らせた鋼糸の罠に飛び込んで自爆したのだ。

驚いた狼君に飛び掛り切り裂いてゆく!


「シャウ!!」


例の高音と共に狼君たちの身体がバラバラに刻まれてゆく。

10数匹倒したくらいには何匹か逃げ出してゆく。一頭だけ隻眼のデカい狼君がオレの前に立ち塞がり、他のを逃しているようだ。

オレは隻眼君と相対したまま動かない…いや、その威圧感と隙が無いので簡単に動けないのだ。

その内に他のが逃げてオレと隻眼君の一対一になる。

先に動いたのは隻眼君である。一瞬で距離を詰めてきた!スゲぇ!

オレは隻眼君の爪を交わしながら鋼糸を振るうが隻眼君に避けられた。何度かその様なやり取りが有ったが、隻眼君の爪はオレの身体のミスリルを引っ掻くが、オレの攻撃は当たらなかった。どうやら隻眼君はオレの攻撃を見切った様である。


「ほう、オレの○斗水鳥拳を見切ったか!中々やるな!!」


隻眼君は唸るだけで何も答えない…

ま、まあ、狼だからね…多分オレは馬鹿だ。

仕方無いので奥の手を出す事にする。鋼糸を棒状に戻してから筒の様な物に変えてゆく。所謂ライフル銃だね…『此処まで来て飛び道具かよ!』とかと言うお嘆きの貴方に言っておこう。


”結構ヤバい状況なんだよ!!”


隻眼君は何を思っているのか全然動かないので狙いをつけて魔力を込める。

鋼の時には強度不足による魔力の圧縮不足で無理だったが、ミスリルならこの弱点を補ってくれる。

隻眼君がいきなり攻撃して来た!!卑怯な!!

が、オレは隻眼君の動きに「慣れてきた」目で狙いを定めていた…。


「パシュッ」


サイレンサー有りの様な音がしてミスリルの弾が隻眼君にヒット!そのまま体内で弾が

込めていた魔力で爆発して隻眼君はボロボロになって倒れた。


「中々強かったぜ…」


オレは隻眼君の牙と爪を抜いて亡骸を丁重に埋めた。他のは知らん。その後は狼君たちは襲ってこなかった。


それからオレは周りを丁寧に調べ上げたが、遺跡までの入り口はオレが来た洞窟のみで、遺跡の入り口は一箇所だけだった。遺跡は巨大な石を綺麗にを切って積み上げた様なオーソドックスな形だね。上は3階層位なのかな…下は不明だ。


入り口から遺跡内に入ると中はひんやりして空気はカビ臭い感じがしない…魔導ランタンで照らしながら進むと、壁に古代文字の羅列が有った。何が書かれてるかさっぱりだが何となく気になったので、鋼の薄い膜で掘ってある古代文字を型にして持ち帰る事にした。

1階を捜索している内に何箇所かの扉が有ったのだが、気配無しの場所だけ扉を開けてみた。中には魔導具らしい物がいくつか置いてあって動きそうな物も有ったのでマジックバックに放り込んだ。


先に進むと台座の上にハンドボールの球位の大きさの鉛色の玉が置いてあった。触るとヒンヤリしている。

金属っぽいので使役しようとしたら、その玉がイキナリ話しかけてきた!ビックリしたなあ!もう!


『オマエ…ダレダ?…ワタシ…ウゴケナイハズ…』


「オレはアレスだ。お前こそ誰だ?」


『ワタシ…コノシロノ…カンリシャ…ヤクメオワッタ…ネムリニツイタ』


「じゃあ起きる時間だ。オレの案内をしろ」


オレは【金属使役魔法】で完全に支配した後で魔力を入れてやった。

すると玉の少し上が開いて目の様なものが出て来た。


『アナタ、ゴシュジンサマ。ワタシ、ナマエナイ。ゴシュジンサマガツケル』


「ご主人様じゃなくアレスと呼べ。お前は…そうだなぁ…タマだ!」


『タマダ、デ、トウロクシマシタ』


「いや…その…タマなんだけと…まあ良いか…タマダ!この遺跡は何だ?」


『コノシロハ、シャミールジンノ、カクレザトノシロデス』


「良く分からんなあ…歴史とかこの城の事とか分かる本とか有る?」


『トショルームアル。コチラデス』


タマダは急に浮き上がり先の方に行くのでついて行った。するとタマダは1つの部屋の前で止まった。


『イマアケマス』


するとタマダの左右からタコの足みたいな腕が出て来て扉に触れるとシューっと音がして扉が開いた。自動ドアみたいだなぁ。

その部屋には備え付けの立派な椅子が置いてあるだけだった。


『アレスサマ、ソコニスワル。ナニノジョウホウホシイカイウ』


言われる通り椅子に座る。先ずは古代文字を覚えないとな。


「ココの文字を憶えたい」


『カシコマリマシタ』


タマダが壁に向かい操作するとオレの頭の中に一気に何かが刷り込まれていく!!頭痛い!時間で5秒ほどか…痛みが治まると壁の文字が読める様になってる!


「図書ルーム。使用者は管理者の許可の元、正しく使用する事…か」


『アレスサマ、ツギハナニヲヨミマスカ?』


「シャミール人の歴史だな。後、この城の情報全て欲しい」


『カシコマリマシタ』


古代シャミール人は高度な文明を持ち、強大な魔法を扱い、高度な魔導具を造り出してこの世界を支配していたらしい。だが所詮はエゴに塗れた人間、戦争や開発による世界と自然の破壊を繰り返し起こしたのだ。

その文明の末期に一人の天才魔導学者が現れる。名前をサターンと云う。

彼はこの世界の未来を案じ、六体の超魔導生物を産み出した。光、闇、風、火、水、土の能力と理性と秩序を持った超魔導生物は全ての選択肢の中から戦争を止める事が世界を救うと結論付けた。

そう、彼らの導いた究極の答え…それは古代シャミール人の抹殺と文明の破壊である。

六体の超魔導生物は『終焉の十日間』で古代シャミール人の約9割を抹殺し文明を破壊し尽くした。

古代シャミール人に迫害されて少数で生き残っていた、今の人間と動物、魔族や魔物と精霊達は生かされて全世界に散らばっていった。

生き残ったシャミール人は各所の地下に隠れ里の城を建設し生き延びていたが、かつて迫害して来た人間や魔族、そして超魔導生物により滅ぼされた。


(多分、サターンてゲーム機の名前みたいな奴はあの【水やり】が使わした奴だな)


ん?ちょっと待てよ…サターンて名前…さっき見たな…。


そう、最初に古代文字が書いてあった壁!!

今なら読める!あの気になってた奴だ!!早速鋼の膜を取り出して見てみる。


(…この城は愚かなる罪深き同胞殺しの者の最期の居城なり。世界に秩序と平和を求めた者の墓標なり…サターン)


そうか、この男の最期の城か。自分の同胞を滅ぼすってどんな感じなのかな?

後悔も有りながら信念も感じる台詞だ。

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