最終話 用務員さんの結婚相手は学園で聖女と呼ばれていた幼馴染です

「晃太さ〜ん? 準備出来ました?」

「ん? あぁもう少しだ」

「早いですね。私はまだ時間かかりそうです。なのでもうちょっと待ってて下さいね 」

「あいよ」


 ……さて、待ってる間にあれからの事を話そうか。


 あの後、秋沢の義父の追求から逃れるために柚の部屋に移動した結は、ベランダ伝いに俺の部屋に通っては、以前と変わらない生活を続けた。

 すぐにバレるかと思ったけどそんなことなく、そんな義父の行動を知った秋沢が、余計なことはするなと文句を言ったおかげで、それ以降の追求はなくなった。

 

 だからまた元の生活に戻ろうか? って思った夏の矢先、他の生徒に見られないように遠くの海まで行ったのに、何故かそこに篠原がいて俺と結の事がバレた。

 これで終わりか!? って思ったけど、結と篠原が二人でどこかに消え、戻ってきた篠原は何故か、全力で俺達を応援する感じになっていた。結はその隣で白いビキニを着ながらニコニコと笑うだけ。

 

 それからも何度か二人の事がバレそうになったり、危ない場面もあったのだが、俺がなんとかしようとする頃には結が解決していた。


 凄い。俺の彼女が凄すぎる。普通のラブコメだったら、ケンカとか破局とかすれ違いの原因になってもおかしくない無いような事が起こりそうになると、それ全部壊していく。まるで横槍フラグクラッシャー。


 例えば、秋沢に会いに来ていた香澄とバッタリ会ったら所を見られても、「元カノと会うなんてやっぱり未練が……?」とはならずに、「あぁ、妹さんに会いに来たんですね」と、即座に理解。


 秋沢が用務員室でいきなり俺の上に乗っかってきて俺の手が秋沢の胸に触れてしまっていても、部屋を見渡して、「あぁ、床のタイルが少し剥がれているからそこに躓いたんですね」と言って納得。


 柚が他校の男性教諭に言い寄られてそれを回避する為に俺の事を彼氏だと言ってしまい、その為に彼氏のフリをしてくれと頼まれた時も、嫌がることなく結が計画を練り、見事撃破。

 強すぎる。まじで俺の彼女強すぎる。


 そして今日、三月三日。俺達は入籍する。ちなみに卒業式は来週だ。

 だから一応まだ高校生なんだけど、結は今日がいいらしい。そして、既に自由登校だからバレる事も無い。あと、卒業証書を貰う時に、「天音結」って呼ばれながら、(ふふっ、本当はもう真峠結なんですけどね〜)って思いたいらしい。

 このお茶目さんめ。メンタル強すぎるだろ。


「晃太さ〜ん! 準備できましたよ〜」


 結にそう声をかけられる。さて、話はここまで。


「あいよ」

「どうですか? この格好♪」


 そう言った結の姿は──


「え? 制服!?」

「はい。制服です。だって今しか着れませんし! そしてその、今しか着れない瞬間の結婚ですから!」

「いや、まぁそうなんだけど……さ? 役所の人になんて思われるのやら」

「大丈夫です! 気にしたら勝ちです! 気にしなくても勝ちです!」

「なにその最強理論」

「ほら、いいから早く行きましょう! 私の苗字を真峠にする為に!」


 そして俺は結に背中を押されてそのまま一緒に部屋を出る。

 向かう先は市役所。

 そして婚姻届の受理の受付まで行くと、俺と結は一緒に届けを提出。受付のお姉さんの確認作業の後、「おめでとうございます」の言葉と共に受理され、これで俺と結は夫婦になった。


「なんかあっさりでしたねー」

「んー、向こうは仕事だからな。そんなもんだろ」

「ですね」

「じゃあ帰るか」

「はい。またすぐに来ますけど」


 ……ん?


「すぐに?」

「はい。すぐにですよ?」

「なんで?」

「母子手帳を貰いにです」

「………………え?」

「晃太さん、いいですか? これで私達は夫婦です。そして高校も卒業します。そして、ここ最近の私が言っていた「安全日だから大丈夫」って言うのは全て嘘です」

「え……ちょっ、まっ……え?」

「さ、帰りましょう。これから忙しくなりますね〜♪」

「あ、ちょっと結さん!? そのってとこもっと詳しく話してくれませんかね!?」


 ニコニコしながら俺の先を歩いて行く結。俺はそんな結を困惑しながら追いかける。

 ──口元がニヤけるのを自覚しながら。


 fin




 ━━というわけで最終話です。

 ズルズルと一年弱に渡る連載に付き合って下った読者様には感謝しかありません。本当にありがとうございます。

 この作品は私の書いた作品のなかでも一番伸びた作品でもあり、感慨深いものがあります。

 この二人はこれからどうなるのか、どんな生活をしていくのか、それは私にも分かりません。

 ですが、きっと幸せになってくれるだろうという確信はあります。だってほら、ヒロイン強すぎですから()


 最後に、投稿開始から追いかけて読んでくれた読者様。途中からでも興味を持ってくれた読者様。

 本当にありがとうございます。応援や感想はほんとに作者にとっての力になります。リアルが辛くて書けない時でも、「よし、頑張って書こう」ってなれるのです。

 本当にありがとうございました!

 では、また他の作品や次作でお会いしましょう。

(フォロー、星評価など頂けると嬉しいです)


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