第37話 「ど、どどどういうことですか!?」

「ボクが……用務員さんを? え?え? どうしてそんな事を……え?」


 いきなり話を振られて戸惑う秋沢。無理もない。俺もよくわかってないんだから。俺が二人と付き合う? つまり三人でってことか? 何を馬鹿な事を……。胸が大きいとかそんなの理由にならないだろ。

 まず第一に香澄とやり直すつもりが無い。秋沢だってそんなのに付き合わされる義理もない。こいつはホントに何がしたくてそんな事を言ったんだ?

 まとまらない頭をフル回転させてると香澄が秋沢を見ながらニコニコと微笑みながら話し始めた。


「だって真澄はこうちゃんの事好きでしょ? そうじゃなかったら、こうちゃんと一緒にご飯食べてる事とかわざわざ挑発じみた事を言ってくるはずないじゃない。それはね、独占欲って言うのよ?」

「あ、あれは……その……」

「やっぱりわかってない。そうねぇ……例えば、もう二度とこうちゃんと一緒にお弁当食べるのもダメ。会いに行くのもダメ。連絡先の交換なんてもってのほか。何とも思ってないならこれが普通でしょ?」

「えっ、それは……いや……」


 香澄が言ったのは、俺が昼に秋沢に話した内容と同じ用な内容だっただった。俺が話した時と同じように否定の言葉を口にする秋沢。目元には涙も滲み始めていた。

 そんな秋沢に対して、香澄は更にこんな言葉を続けた。


「なんだったら学校に電話しちゃおっかな? おたくの用務員さんは生徒と……って内容を」

「い、いやっ! お願い……やめてっ! ボクの好きな人をボクから離そうとしないでっ!あ……好きな……人。あ、あぁ……」

「や〜っと自覚したね」

「おいっ! お前いいかげんにしろよっ!」


 さすがに我慢できん。姉妹だからって言って良いことと悪いことがあるだろ!


「そんな怒んないでよ〜。冗談だって。さすがにそんな事するわけないでしょぉ? けど、これでわかったでしょ? この子がこうちゃんに惹かれてるって事。どう? あたしとヨリ戻せば巨乳女子高生がついてくるんだよ? 」

「っ! た、例えそうだとしてもまず話の前提が間違ってる。わけわからんことばかり言ってくるから頭が回らなかったけど、別にお前とヨリを戻す必要はないんだからな? 付き合うなら秋沢とだけ付き合えばいいだけの話だ。それとはっきり言っておく。俺はお前ともう一度付き合うことはない。これは絶対だ」


 ガシャンッ!


 そう、付き合うなら秋沢とだけ……んを? あれ? なんか変なことを口走ったような……。

 つーかさっきなんか割れたか? フロア内から音が聞こえたけど……。

 まぁいい。フラれた後あんなに考え込んだのが馬鹿みたいだ。二年も付き合ったのに、こんな奴だとは思わなかった。

 こいつとはここで完全に関係を絶つ。


「え、なに? 冗談なのになんでそんな熱くなってるの? そんな姿初めて見たなぁ……。付き合ってる頃はいつも淡々としてあたしの言うことを聞いてくれてたのにね。はぁ、もういいや。なんか冷めちゃったからあたし帰るね。あとは二人でごゆっくり〜。あ、会計よろしくねん♪……ばいばい」


 香澄は言いたいことだけを早口で言うと、すぐに立ち上がり、早足で俺の横を通りすぎて背後にあるドアを抜けると店を出ていってしまった。そしてその後すぐに店を出る人影が見えたけど……なんか見覚えあるような? ってそれよりも今は秋沢だ。ちゃんとフォローしてやんないと。

 そう思って秋沢のほうに振り返ると、テーブルの脇に人が一人立っていた。……え?


「ど、どどどういうことですかっ!? ちゃんと説明してもらえますよね? ここここ晃太さんっ? 秋沢さんと付き合うとかってどういう事ですか!?」


 なぜここに結がいる!?


 


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