第29話 「えっと……ご、ご主人……様?」
さて、どうするか……。考え込んでいると、横から服の裾を引っ張られる感覚。見れば結が俺を見上げていた。
「じゃあ……せっかくですからちょっと見て……見ますか?」
「あー、そう……だな?」
断る理由も無いため、頷いて少し前を歩く結についていく事にする。
「うわぁ! これ可愛いですねっ!」
結がそう言って指をさしたのは、フリルとリボンがたくさん付いた、ミニスカートで胸元が大きく開いた黒いメイド服みたいなやつ。
た、たしかに可愛いけど露出が凄そうだなコレ。もし結が着たら凄いことなるな……。
「あっ、コレも〜♪」
今度はロングのドレス風のやつだ。それにしても目がキラキラしてるなぁ。こういうの好きなのか?
「なぁ、結もこんな感じの好きなのか?」
「ん〜、見てる分には可愛いですからね。着るのはちょっと恥ずかしいですよ」
「ふ〜ん……似合うとは思うけどなぁ……」
「えっ!?」
「え? あ、いや、ほら! 結は可愛いしスタイルもいいから似合いそうだなぁ〜とな? 」
「か、かわっっっ!」
「あ、いやっ! 別に着て欲しいとかでななくてな?」
「そ、そうですか……う〜ん」
いかん、願望がそのまま出た。おかげで変な空気になってしまった。彩那カムバァーック!!
「二人ともなにしてんの?」
「ひゃっ! あ、彩那ちゃん……」
おわっ! ホントに来た。しかも手には大きめの紙袋を持って。
「お前それ……」
「これ? 買ってきたの。ちょうど欲しいホワイトブリムがあったから! お小遣い全部飛んでったけど!」
「なにそれ?」
「ほら、こーゆーの!」
そう言って紙袋から出したのはメイドさんが頭に着けてるようなやつだった。
ん? それ一つにその袋はでかくないか? まぁいいか。
「あぁ、それそんな名前なのか。まぁ買ったならもう用事は済んだろ? そろそら店出るか」
「ちょっと待って! せっかくなんだしさぁ、結ちゃんも着てみようよ! ほら、さっき見てたやつでいいんじゃない? あ、店員さんすいませーん! 試着したいんですけどー」
「え? へ? ちょっ! 彩那ちゃん!?」
いまいち理解出来てない結を彩那が手を引いて引っ張っていく。
俺は何も言えない。だってちょっと見たい気持ちもあるもの。すまん結。
けどさっき見てたやつってどれだ? まさかあの際どいやつじゃないよな? 多分、あのロングのドレスみたいなやつかな?
そんな事を考えながら試着室の前で待ってると、中から二人の声が聞こえてきた。
『え! 彩那ちゃんコレ!? 恥ずかしいって!』
『大丈夫大丈夫! 結ちゃんスタイルいいから似合うって!』
『けど、これなんかこれこぼれちゃいそうだよ!?』
『上にワイヤー入ってるからちゃんと固定されるから大丈夫だよ。それにしてもホントにおっきいなぁ……。Eってこんななんだ。柚ちゃんのは彩那のよりちっちゃいのに。ちなみに彩那は最近Cになったよ〜』
『そ、それ、おねぇちゃんに言っちゃダメだよ? 』
『言ってないけど、こないだ会ったときに震えながらサイズ聞かれたよ? 「いいなぁ……」って言ってた!』
『お、おねぇちゃん……』
ゆ、柚……そんなこと聞いてたのかよ。そして結はE……か。
そしてこぼれるってなんだ!?
つーかこの二人、外に聞こえてるって気付いてないのか!?
そうこうしてる内に先に彩那が試着室から出てきた。
「おにぃお待たせ! 結ちゃんすんっっごいよ?」
「そ、そうか……」
「(どうせ会話聞こえてたでしょ?)」
「(ノーコメントで)」
「(はいはい) ほら、結ちゃん出て来て〜」
「う、うん。うぅ……恥ずかしいぃ〜」
そんな声と共に、試着室の中から白く細い指が見えた。
その指が中と外を隔てるカーテンを掴むとゆっくりと横に開いていく。
やがて全て開ききった時、俺は絶句した。
「あ、あの……どうですか?」
そこにいたのは、ミニスカートで胸元が開いた露出の高いゴスロリ風のメイドさんだった。
これ、最初に見たやつじゃねーか!
しかも恥ずかしがって少し前屈みになっている為、谷間がしっかり見えている。こぼれそうって胸の事だったんだな……。確かにこれは……危険だ。
「こ、晃太さん?」
やば。なんて言えばいいんだ……。
「ほら、結ちゃん! さっき教えたみたいに言ってみて!」
「えぇっ!? ホントに言うの!?」
「もち! その服着たら言わないと! これ常識!」
「が、がんばるぅ……」
おい、何を言わせようとしている!?
すると、結はさっきの体勢のまま顔を赤くして上目遣いで俺に向かってこう言った。
「えっと……ご、ご主人……様? どうですか?」
最高ですっ!!
「あ、あぁ……可愛いぞ……すげぇ似合ってる……」
「……っ! も、もうおしまいっ! 着替えますっ!」
そう言ってすぐに後ろを向いて試着室に戻ってしまった。その時勢いよく後ろを向いた為、ミニスカートがめくれて白い何かが見えたのは内緒だ。
それにしても、アレはやばいだろ……。
破壊力が半端ない。
「おにぃどうだった? 妹に感謝してよ?」
「……やかましい」
「ふっふっふ。素直じゃないなぁ♪ 結ちゃーん、もう着替えたー? 着替えたら服渡してねー」
「あ、うん! ありがと」
試着室の中からメイド服だけ出て来て彩那の手に渡る。
「じゃあ彩那はコレ戻してくるね」
そう言って彩那はその場を離れていった。
それと同時に試着室から結も出てきた。
「お、お待たせしました。はぁ、恥ずかしかったぁ……」
「なんか、ごめんな。彩那が強引でさ」
「けどいいです。晃太さんに可愛いって言って貰えましたし♪」
「っ! そ、そうか」
「はいっ!」
その後、彩那が戻ってきてからすぐに店を出て、昼食をとるために近くのファミレスに入った。
学校の友達とかとバッタリ会ったりしても大丈夫なのかを結に聞いたが、「気にしないでください。彩那ちゃんも一緒だから大丈夫ですよ。むしろ……あ、なんでもないです。行きましょう」だってさ。
そして注文を終え待ってる間……
特に誰も声をかけてくる奴はいなかった。
視線は感じたがな。ただ、視線のほとんどは彩那に集中していた。
まぁ、そうだよな。わかる。
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