第25話 「おかえりなふぁい……」

 柚達を見送った後、俺と隼人は近くのラーメン屋に入った。


「さて晃太。なんであそこで結ちゃんの名前が出たのか説明してもらおうかな?」

「はぁ、わかったよ……」


 そこから俺は、ことのあらましを隼人に伝えた。さすがに告白やキスされたことは言ってないけどな。それとなく好意を受けてる事だけ伝えた。

 その結果、


「あははははははははは!!」


 大爆笑された。なぜだ!?


「お、おい、いくらなんでも笑いすぎだろ」

「いや、だってさぁ……いや、なんでもない。これは俺は口を出さないことにするよ」

「ちっ、言い損じゃねぇか」

「そう言うなよ。さすがは晃太だ」

「はいはい」


 やっぱり言うんじゃなかったや。


「それにしても、今夜はお前の部屋に泊まらせてもらおうかと思ったけど、女子高生と同棲してるんじゃあ無理だな」

「悪いな。てか同棲じゃねぇよ! 共同生活な!」

「そう思ってんのはお前だけだよ」

「そうかよ。つか、そろそろ終電だぞ。急がねぇと何倍もの額をタクシーで払わなきゃいけなくなるぞ」

「うわっ、それはまずい! 比奈に怒られる!」

「はっは! 大変だなぁ! 新婚さんよ!」

「お前もいずれわかるって」


 俺達は会計を済ませ、駅に向かって少し早足で向かう。俺と隼人は逆方向の為、改札のところでお別れだ。


「じゃあな隼人。また時間が合えば飲もうぜ」

「そうだな。あ、晃太!」

「なんだ?」

「天音も言ってたけど、お前は少し受け身すぎる。もう少し自分の意思をしっかり持った方がいいぞ。そしてそれを伝える努力もな」

「……わかったよ」


 俺も変わらないとな。


 隼人と別れた後は終電ギリギリで電車に乗り、今住んでる街の駅についた。あの、俺がよく行ってたコンビニが近くにある所だ。

 ついでだし、酔いも覚めちまったから追加で酒とつまみでも買って帰るか。

 そう思って店内に入る。週末だが、こっちは割りと田舎なのもあってか、客は俺しかいないみたいだ。


 店内をぐるりと歩き、酒を数本。つまみにサラミとジャーキーにチョコ。後は適当な漫画雑誌を一冊カゴに入れてレジに向かう。

 レジには二人いて、一人はパートらしきおばさん。もう一人は……


「秋沢?」

「ん? ……あ。こんな時間になに?」


 秋沢だった。


「いや、それはこっちのセリフだ! お前こんな時間に何をしてるんだ? バイトか?」

「ちがう。読書」

「いやいやいや、今現在何をしてるかじゃなくてだな?」


 とんだ見当違いの返答をしてくる秋沢。

 すると、隣のおばちゃんがニマニマしながら秋沢に話し掛けた。


「あらあら? もしかして真澄ちゃんの彼氏?」

「違う。学校の用務員」

「あらそうなの?」

「はい。それで秋沢はなぜここに? 親しいようですが……」

「えーっとねぇ……」

「いいよ。自分で言うから。ちょうど客もいないし、休憩してきて」

「あらそう? じゃあ休憩もらうわね?」

「ん」


 おばちゃんは秋沢にそう言われると、裏に引っ込んでいった。これで二人だけだ。


「で、どういうことなんだ? ただの日中のバイトならともかくこんな夜遅くに」

「ん、バイトじゃない。ここ、母親がやってんの。三階が自分の家」

「そ、そうなのか?」

「そう。今は暇だから、さっきのおばちゃんと話しながら本読んでただけ」

「なのか、てっきり何かしら深刻な理由でもあるのかと……」

「漫画じゃあるまいし。で、そっちは?」

「俺は友達と飲みに行ってただけだ。で、終電で帰った来たとこだ」

「大人だね」

「大人だからな。で、俺が持ってきた奴は誰が会計してくれんだ?」

「……あ」


 その後、秋沢がさっきのおばちゃんを呼んでくれて、そのまま会計を済ますと俺は店を出る。秋沢は、「また」とだけ言うと再び読書に戻っていった。

 よし、帰るか。


 歩いているうちにアパートが見えてきたから、ポケットの中の鍵をだす。……鍵を……鍵……あれ? ない? 落とした? 忘れた?

 記憶を辿ってみる。たしか玄関までは持ってた。その後サンドイッチを食べて、結に見送られて……あ! 鍵は結がしめた!

 ってことは俺の鍵は玄関の棚の上か……。

 やっちまった……。

 結、起きてるかな。

 もし寝てたらすまん! そう思いながら結の部屋の方のチャイムを押す。

 ………出ないな。もう一度押すが反応がない。

 まじかぁ……。どうする? ってどうしようもないか。一応ダメ元で結のスマホに電話をかけてみる。

 ………。中々出ないな。


 もう一度だけかける。これでダメならネカフェだな。そう思って再度ならしてみる。すると、


『ふぁい……』


 出たっ! よかったぁ……。


「あ、結? ゴメン寝てたか?」

『ん〜〜寝てましたぁ……。どしました?』

「悪い! 鍵開けてくれないか? 玄関の鍵忘れちゃってさ」

『はぁい、今あけますねぇ〜』


 しばらくすると……ガチャ


 何故か俺の部屋の扉が開いた。そっちかよ。


 玄関に入ると、そこには眠そうな顔をしたパジャマ姿の結がいた。


「ただいま。ホントごめんな」

「おかえりなふぁい……寝ますぅ……」


 そう言うと、何故か俺のベッドに向かう結。ベッドを見てみると、朝起きた後に綺麗にしておいた掛け布団が捲れていて、まるで誰かが元々寝ていたかのような感じになっている。


 そして結はそのまま俺の布団に入っていった。

 え? ちょ! なんで?

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