第21話 「畳んであげようかな?って」
偶然って運命? 偶然は偶然だろ? 運命とかは信じないから、なんとも言えないな……。
「それがどうかしたのか?」
「なんでもない。じゃ」
それだけ言うと、秋沢は倉庫から出ていった。よくわからんことを言うなぁ。まぁ、いつもそうだが。
俺はすぐに思考を切り替えて午後の準備に入る。午前中の作業で汚れたし、午後から少し暑くなるみたいだからTシャツだけでも変えておくか。
上を脱いでソファーに投げる。次にカバンからボディシートを出して体を拭く。その時、入り口から声がした。
「ねぇ晃太、今の秋沢さんじゃ……ひゃあっ!」
「ん? 柚か。どうした?」
「ど、どうした? じゃないわよ! 早く服着なさい!」
柚は顔をそむけてこっちを見ない。
「おい、こっちはラッキースケベの被害者だぞ? きゃあーーえっちーー」
「ばっっかじゃないのっ!!」
「何を今更。初めて見るわけでもあるまいし。彼氏ので見慣れてんだろうが」
「んなわけないでしょ!」
「なんだ。まだなのか」
「あ、あんたはほんとにっ……!」
こいつは何一人でテンパってんだ?
俺の裸体なんぞ昔から見てきただろうに。
「ほら着替えたぞ。で、用件は?」
「まったく……。今日の事聞いた? 私は
「あぁ、飲み会のか。昨日、
柚が言った比奈は、【
「そう。ねぇ、行くの?」
「そりゃ行くだろ。明日は休みだし、久しぶりに話したいしな」
「そうなんだ。私も行くんだけど、少し遅れそうかも?」
「なんかあんのか?」
「テスト作成がオワッテナイノヨ……」
「そ、それは頑張れ?」
「うぅ……。キンキンに冷えたビールが待ってると思えば……」
どんだけだ。そういえば柚と外で飲むのは初めてだな。連休で帰ってきても家で飲んでたし。
まぁ、そもそも滅多に帰ってきてなかったが。
っと、用事がそれだけなら俺はそろそろ作業始めないとな。そいえば、こいつがここにいるってことは次の時間は授業ないのか?
「用件はそれだけか? 俺は作業に戻るけど、お前は?」
「私は次の時間はフリーなの。それで、ちょっとココ貸してくれない? 職員室だとなんか集中できなくて」
そう言いながら肩から下げていたバックを見せてくる。
なぁる。準備は万端ってことか。
「まぁ、いいけど。じゃあ俺は行くぞ」
「うん、行ってらっしゃい。あ!」
「はぁ、今度はなんだよ……」
「そんなため息つかなくてもいいじゃない……。ねぇ、さっき出ていったの秋沢さんじゃない? なんであの子が? あんたまさか!?」
「あほか。ここで飯食って行っただけだよ。他はなんもなーし。オーケー?」
「なんで秋沢さんがあんたの所でご飯食べてるのよ」
「知らねぇよ。なんかいたんだよ。あんま喋るタイプじゃなさそうだし、まだクラスに馴染めてないんじゃないか?」
「馴染めてないのにココには来るの?」
「俺とはわりと話すぞ?」
「なんで?」
「知らんがな」
「ふ〜ん。巨乳だからって手をだすんじゃないわよ?」
「そんな理由で手を出すわけあるかっ! じゃ、俺は行くからな」
「あ、うん」
まったく、人をなんだと思ってんだ。いやでも、確かにでかいよな。まだ十六歳だろ? いやはや……あ、ソファーにスマホ忘れた。取りに行かないと。
俺はすぐに倉庫に戻り、ドアを開けた。
「おい、そこに俺のスマホ……お前なにしてんだ」
「……へ?」
なんでこいつ俺の脱ぎたてTシャツ握りしめてんだ。なんだ。臭いのか? 臭くて捨てようとしてるのか? やめてくれ。それ、接触冷感とか付いててちょっと良いやつなんだから。
「な、なななななっ! なんで!?」
「なんでって、スマホ忘れたから取りにきたんだよ。お前それ……」
「ち、違うから! 畳んであげようかなって思ってただけだから! ほら、投げて置いてあって汚かったし!」
「いや、汗臭いからいいよ。てか汚いって……」
「え、別に[スンスン]臭くてなんて。むしろ私は好……や、やっぱり臭いわよ! 臭い! こんな所に置いとくんじゃないわよもうっ!」
そう言って俺にTシャツを投げつけてきた。
お、お前、自分で持っておいてそれは無いだろ。
「いや、わざわざ嗅ぐなよ……」
「うるさいっ! ほら、早く作業に戻りなさい!」
「へいへーい」
そしてスマホを持ち、再び倉庫から出ていく。
それにしても、臭いのか……柔軟剤、もう少し高いやつ買ってみるかな。香り付け用のもあるみたいだしな。後で結に聞いてみよう。
あ、そいえば今夜の飲み会の事言ってなかったや。早めに言っておかねーと。
俺はツナギのポケットからスマホを出し、結に送るメッセージを打ち込みながら、次の作業場所に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます