第22話 元カノ
今日は仕事が終わり次第すぐに帰って来た。俺と柚の職場である学校は地元からは離れてるから、どっかに寄ると間に合わなくなるからな。
ちなみに飲み会の場所は、俺が住んでる所と地元の中間あたり。電車で三十分くらいのところだ。
「ただいまー」
俺が部屋に入り、声をかけると隣からパタパタと足音が聞こえる。
「晃太さん、おかえりなさい」
晃太さんか。ずっと晃太おにぃちゃんだったからまだ馴れないな。けどなんか……悪くはない。
「うん。昼にメッセ送った通りに今日飲み会だからさ、悪いけどシャワー浴びたらすぐ行くわ」
「わかりました。もうタオルとか置いてありますから」
「お、ありがとさん。あ、後コレ」
俺は鞄から空になった弁当箱を出して、結に渡すと同時に感謝の言葉を告げる。
「弁当ホントにうまかったよ。ありがとな」
「あ、は、はい……また頑張りますね」
「あーうん。ありがたいけど、無理だけはするなよ? 今日は学校で大丈夫だったか?」
「はい! と言いたいですが、お昼の後はちょっと眠くて大変でしたね。ふふ」
「明日は休みだけど今日は早く寝るんだぞ?」
「もう、わかってますよ」
その後はすぐにシャワーを浴びて着替える。最初はジャージで良いかと思ったけど、さすがにそれは……っと考え直して、無難にジーンズにジャケットにした。よし、準備完了!
後は結に声をかけて行くだけだ。
「結、俺そろそろ行くわ」
「あ、はぁーい。ちょっと待ってください」
「んー?」
玄関で靴を履いて待ってると、結が何かを手に持ってきた。
「晃太さん、はいコレ。サンドイッチです。帰って来たばっかりでお腹すいてますよね? お酒飲む前に軽く食べた方がいいですよ? 」
「あ、おぅ。ありがとなぁ」
な、なんだこのいい子は!?
「じゃあ、もうここで食べて行くかな」
「なら、今飲み物もってきますね」
そう言うとまた自分の部屋に向かっていった。
俺はそのまま玄関先に座ったままサンドイッチを食べる。
……うまっ! なんだこれ!
俺が適当に作る、とりあえず色々挟んだサンドイッチとは全然違う! なぜ!?
「お茶持ってきましたよー。どうですか?」
「すげぇうまいよ! 俺が作るのと全然違うわ! 全然ベチャベチャしてないし」
「最初にパンにマーガリンとか塗っておくといいんですよ? そうすれば野菜の水分でパンがベチャベチャになりにくいんです。っておねえちゃんが言ってました」
ほへ〜なるほどね。しっかし、柚がねぇ。
高校の時に作ってもらったサンドイッチは凄かったんだが……。成長だなぁ。
そんな知識を教えてもらってるうちにサンドイッチはなくなっていた。食べた食べた! そろそろ行かないとな。
「ごちそうさま。うまかったよ。じゃあ行ってきます」
「はい、行ってらっしゃい。気をつけてくださいね?」
「わかってるって。戸締まりしっかりな」
「はい」
俺は結に見送られて部屋を出た。
そして電車に揺られて目的の駅まで約三十分。そこから歩いてすぐの居酒屋。そこが集合場所だった。
店内はいってスタッフに名前を告げると、すぐに案内してくれた。どうやら先に来てるらしい。
案内された先の扉をあけると、そこには……
「やあ晃太。久しぶりだね」
「やほー♪ 晃太くん元気?」
「よう新婚。爆発しやがれ」
村上夫妻がいた。
隼人は、短髪メガネの爽やか系。比奈はショートカットで活発な感じだ。昔とあまり変わってないな。ちなみに柚と比奈は、胸の大きさで意気投合したらしい。この事に触れてはいけない。俺と隼人は、中学から部活が一緒でその繋がりがずっと続いている感じだ。
「ねぇ、柚は? 晃太くん同じとこで働いてるんでしょ? 佐々木の学校で」
「あぁ、なんか遅れるって言ってたな」
「そっか。じゃあ、先に飲んで待ってようか。晃太は? ビール?」
「当たり前!」
そして数分後。久しぶりに会ったことで上がったテンションもあって、色々とこっちに来る事になった経緯を簡単に話していると、
「「どんまい」」
二人同時に言いやがった。この野郎。
すると隼人がニヤニヤしながら口を開いた。
「さて晃太。もう少し詳しく話してくれよ」
「なんでだよ」
「リストラ! フラれた! 帰ってきた! だけじゃわかるわけないだろう。それに元カノとしては色々気になるんじゃないかな? ね?」
「は? なんでお前が俺の元カノになんだよ。キモいわ」
「馬鹿か君は! 俺だって嫌だね。俺じゃなくて……ほら、後ろ」
比奈もなんかニヤニヤしてる。後ろ? なんだ?
俺は言われたままに後ろを見る。……あ。
「……なによ」
俺の後ろには、おそらく仕事が終わってからそのまま来たんだろう。昼間見たままの服装の柚が立っていた。ジト目で俺を見ながら。
「なんでもねーよ」
元カノね……。まぁ、間違ってはいない。
正確には、元カノの前の元カノだけどな。
「ふ〜ん。ちょっと! 比奈に隼人君もやめてよ。何年前の話だと思ってるのよ……」
まったくだ。
俺と柚が付き合っていたのは、高校三年の時のほんの僅かな期間だけだったのだから。
しかも、フラれたのは俺だ。
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