「狼たち〜The Dirty Black Lone Wolves〜」

第1話

「狼たち〜The Dirty Black Lone Wolves〜」


故郷を失くした者たちは

都会の片隅で草を藉いて眠る

狼藉者たちにさえ涙を流す理由(わけ)があると云う


否定の王冠を被った小さなお前

緑青色の鬱壊した夢を見る

ちゃちな身体を捻じ曲げて、

首から下げた、鍵が邪魔で。


今日もまた、傲慢な太陽が

おれたちを灼くだろう

言葉を失う程の悪臭が、

灰色の毛から立ち上れば、

誰もが避けて、道が避け、

顔を見合わせたら少し微笑えた


漫ろ歩きの振りをして

八本の手足は献血車を目指す

血色不良の真夏の午後に、

腹を空かせ、頭(こうべ)を垂れて


血は循環る

何が変わるでも無く一食が浮き

吠える事さえ赦されず


見えない枷は壊す事も出来ない

躓いた路面が砥石の代用(かわり)さ

おれたちの牙も未来も

研ぎすまされた、内付(ナイフ)の繊細さで


行こう

おれたちの事を絶滅したと思っている、

あの我利我利(ガリガリ)に肥えた奴等(アッパークラス)を血統書ごと喰い千切ってやる為に


真実ならその瞳に映っている

だけどお前だけにはそれが見えない

況してや左脚の瘢痕(ケロイド)が野生を忘却れられずにいるうちは


夕暮れを待つ

六月、南天、水平線近く

狼座が輝くのをおれたちは待っている

業突く張りな陽射しの中、瞳を凝らせ

太陽の腰に素手でぶら下がったCentaurusの膝元へ、今

息を殺し、躙り寄る

涎も牙も、隠せているか?

阿(おもね)らず、

そうさ、諂(へつら)ったりしない

共謀した凶暴が破綻を来すその前に


なぁ 知ってたんだろ?

おれたちの星座は此処からじゃ見えない

だから其れを、

社会という名の詭計(トリック)に擬えはしない

何も無い空を飾ろうとしたんだ

陳腐でcheapな修辞(レトリック)など、

剥がされ、燃やされ、塵と化し、

灼けた舗装路(アスファルト)の上

おれたちは、其れに塗れ、来た道を辿り、

でも何処へ?



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



また、唯の夜になって


夢の中に、扉が在った


微かに光が、確かに光が洩れている


浅い眠りを除けて、互いの名を呼び合う


お前は首から、鍵を外した


「あの向こう側に、何が在ると思う?」


弟よ


今日からまた、生きて行こう

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