第7話 懐疑

――――帝蜀ていしょく市 ??――――

放課後、健吾の指示でバスに乗せられた2-3のクラスメイトたち。

バスが停止し、健吾の指示により下車した彼ら見たのは見慣れない大きな建物の姿だった。


「ここがお前たちが特訓することになる『ホール』だ。

ここではいろいろな設備が用意されているし、要望を出してくれれば俺の上司がとりあえず用意してくれるらしい。

ここに来る方法だが、今回は送迎させてもらったが次は自分たちで来てもらう。

後で地図を渡しておくからな」


健吾の案内でトレーニングルームや機材がたくさん置かれている司令室のような部屋を紹介された。

大きな体育館のような部屋に案内され、集められると


「一応、形として公共の施設だから警備員もいる。

まあ正直お前たちの全力や昨日の件のヌルやゼクスを押さえられるレベルではないがな。

お前たちがまともに暮らせるようにするため、力を押さえる方法を探す技術者もいる。

だが何分、こんなことは初めてなんでな。

うまくいくとは限らないし、どうしようもなくなるかもしれない。

まあ、あまり期待はしないでくれ」

「大丈夫ですよ。

そもそも人に頼らなくとも僕らだけでなんとかしなくてはいけない問題ですし。」


友輝の反応に健吾はうなずくと、


「竹山、お前は何か気になることはあるか?」


と尋ねた。レイラは、


「そうですね、私たちの強化とはどのようにするのでしょうか?」

「ああ、そのことか。それについては、とりあえずは模擬戦をさせてもらおうかと思う。魔法を絡めた実用的な戦い方の指導なんてできないしな」

「そうですか、分かりました」

「ともかくみんな、10日ほど試しでやってみるか」

「はい」

「おっと、そういえば」


友輝が声を挙げる。


「賢治、<禁忌魔術>について聞いてなかったな。聞いてもいいか?」

「え、ああ分かった」


賢治は懐から本を取り出し確認しながら話し始める。


「そもそも<禁忌魔術>とは身体的、そして倫理上問題があると魔道委員会で認定された、強力な代わりに代償のある魔法らしい」

「魔道委員会?」

「そうだ。魔法の力はその大きすぎるが故に規制されるものがあり、それを決定する会議だな。はら、こっちでもBC兵器やクラスター爆弾なんかが規制されてるだろ?あんな感じだ」

「なるほどな。で、<禁忌魔術>には何が含まれるんだ?」

「そうだな……まず、<血液魔法>。これは単純に体への負荷を代償に血液を集めそれを武器へと改変する。だがまあ<錬金魔法>と組み合わせ、強化するのが前提に近いのかな」

「ほうほう、それで他の<禁忌魔術>は?」

「ああえっと……!」


ページをめくった賢治は顔色を変えた。


「?どうした?」

「ちょっと待ってくれ、誰か俺の本に触ったか?」


もちろん、彼がずっと持っていたため誰も触れられるはずはない。


「本から文字が消えているんだ。しかもピンポイントで<禁忌魔術>の項だけ。お前たちの誰かが消したんじゃないか?」

「そんなことして何になるんだよ。だが、その情報は大事だろお前は全部覚えてるよな?」

「……いんだ」

「え?」

「覚えてないんだ」

「覚えてないってどういうことだよ」

「ページが消えたところだけピンポイントで記憶がない。もしかしたら何か干渉されたのかもしれない」

「へ?」

「だから、<禁忌魔術>ってのはやばい魔法の集合体みたいな感じなんだ。その中には記憶に干渉できるものがあるなら俺程度簡単に記憶操作されてしまうかもしれない。ましてや相手は<血液魔法>を使えるんだ。その他の<禁忌魔術>を使えてもおかしくない」

「そんな……

じゃあ俺らは為す術ないってことかよ……」


重い空気が全員にのしかかった。










――――帝蜀市 某所地下室――――

密室の中に所狭しと機器が納められている。

その中の一つ、大きなケースと5つの球体がつなげられているものが大きな音を立てる。ケースの中の絵画から絵が抜け落ち、まるで注入されるように球体につながるそれぞれのチューブを通り球体へ何かが入った。

それらは青赤黄などそれぞれ違う色を持っている。


「チンッ」と電子レンジのような音が鳴るとナーシャが顔をのぞかせた。


「やっと完成したようね」


彼女は球体を手元のアタッシュケースに入れると背後の男に差し出し質問する。


「ボス、これはどうするのです?」

「あなたには話していませんでしたね。これらは計画を確実なものにするための鍵ですよ。魔族や亜人、それに人間。それぞれの肉体の性能差はあっても、生身の肉体では強化に限界がある。だったらその肉体を改造すればいい。そのためこのアイテムを使うのですよ。まあ実用性は試作段階なので完成形が作られるまで期待はしきれませんがね」

「なるほど。?ちょっと失礼します」


ナーシャは近くのPCを触り、メールを確認する。


「ボス、ダンの準備が整ったようです」

「そうですか。では繋げますか」


ボスと呼ばれた男が手を壁の方へかざすと黒い穴が発生する。

しばらくすると金髪の真っ黒な服を着た男が現れ、二人に声をかける。


「やあ、宰相殿、それにナーシャ様。暗殺部隊隊長ダンでございます。お呼びいただき感謝します」

「久しぶりですね、ダン。部隊の他のメンバーはどうしました?」

「それが全員任務が入りましてね。それがやっかいな相手でやっと終わったのですが後処理が大変でしたよ。できるだけ早く来るよう命令されていたのでとりあえず私だけ来ましたがね」

「ハハハ、それは申し訳ない。後で何かねぎらいをしなくてはなりませんね。それで、あなたには『勇者』たちの抹殺だけでなく他にも頼みたいことがあります。それは……」

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