第4話 因縁
小さな部屋にテレビの声が響く。
「昨日16時頃、大男が暴れているとの通報があり、警察が到着したところ4名の男女が倒れているのが発見され、緊急搬送されました。このうち、40代の男性と10代の女性は軽い怪我、30代の女性は重傷、30代の男性が死亡しました。また、通報者の女性も軽傷を負っており、警察の発表によると、通報者ら5人はインターネットの裏掲示板のアルバイト募集で集められたそうです。依頼者の男性が現れると、男性はおもむろに被害者らを殴り始め、隙を見て逃げ出した女性に通報されたそうです。警察は逃げた男の行方を追っており‥」
「裏掲示板を利用したまでは良かったですが、軽々しく行動すればこのように事件になります。
仕事がはやいに越したことはないですが、ここまでの騒ぎになれば今後の活動に支障がでます。
『勇者』を倒せばおわり、というわけではないのですよ?
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そう話す男ーーヌルは手元のメダルを背後に投げつける。
人形はゼクスの姿をとった。
「申し訳ありません」
「まあ、リスクに釣り合うのであれば問題ないのですがね。あなたの力を振るうのには大量の血が必要です。ですが今回『勇者』の活動範囲で活動し、彼らに我々の存在が露見した挙句、得た血液は極微量。あなたの力を十全に使いこなすには足りないでしょう?仕方がないので、今後はこちらで活動してください」
するとヌルはゼクスへ折りたたんだメモを渡す。
メモを開いたゼクスの表情は驚愕に染まる。
「ここは‥‥!」
「そうです。準備にかかる時間も、ここなら稼ぐことができるでしょう‥‥」
――――
朝、レイラが教室に入ると友輝が声をかけてきた。
「あ、おはよう、竹山さん。昨日はよく眠れた?」
「ええ、まあ。なぜそんなことを?」
「いやぁ、昨日あんな場面を見ちゃったからね。
「まぁ向こうではこんなこともありましたがね」
「あはは、確かにね。おっと先生が来たみたいだね」
健吾が教室に入ってくると、生徒たちは静かになった。
全員の着席を待ってから話し始める。
「昨日すぐ近くの路地で男女が襲われるという事件があった。
この件で、うちのクラスの竹山と蒲原が現場で応急手当をした。ということで感謝の手紙が届いている。後で渡しておく。
だが、この件で問題なのは犯人とされる男は『
竹山、お前たちが『向こう』の力を使った時周囲に霧が出現する。
そして、能力の存在を知らない者にはその光景は常識的なものに改変される。
そうだな?」
「はい、ですから蒲原さんが助けた女性には件の男と戦うために抜いた剣は竹刀や木刀に見えていたはずです」
「説明ありがとう。
そこで蒲原、もしも警察に話せなかったことがあればいってくれ。
どうしても一介の警察官には話せないことがあるだろうしな」
「わ、わかりました。
男の目的は、俺たちの抹殺。その理由は不明だが、穏やかなものではないでしょう」
その話を聞くと教室内がざわつく。
すると、一人の男子生徒が声を上げる。
「じゃ、じゃあその話しぶりからいくとそいつは」
「いや、男は倒されている恐らく仲間の手によって‥‥」
「はぁ?どうなってんだよ?」
「分からん。でもその仲間の男は別格だった。
その男――ヌルは、俺と互角に戦ったはじめの男――ゼクスを一撃でたおした。
その後俺と戦ったが勝てるビジョンが全く浮かばなかった。
竹山さんが助けてくれなきゃ正直、まずかった」
「マジかよ…
それじゃ俺らには歯が立たねぇんじゃねえか…
俺らは襲われたらどうしたらいい?」
「その点はまだ問題ない、と思う。ヌルは俺らを始末するには準備が必要だと話していた。恐らく、今はまだ準備期間なんだろう。だったら今から俺らも用意すればいい。先生、なんとかなりませんか?」
「ああ、分かった。それについては後で話そうと思う。まだ時間があるみたいだからな、できれば早く終わりたいんだがまだ何かある奴はいるか?」
すると
「なんだ?」
「一つだけ質問が。友輝くん、そいつらってどんな能力を使ったんだ?」
「ああ、そのことか。蒲原、どうだったんだ」
「えっと、どちらも<血液魔法>とか言うものを使っていた。ヌルについては<錬金魔法>を使っていたな」
血液魔法、その名を聞いた瞬間賢治は息をのんだ。
「うん?どうしたんだ?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
賢治は自らの鞄を探りだして一冊の古びた本を取り出し、その中の一ページを開く。
「えっと、あった!」
そのページの見出しは<禁忌魔術>と書かれており、十の魔法が紹介されている。<時空魔法><催眠魔法>、そして<血液魔法>。様々な種類の魔法の説明がされておりその能力、そして禁忌と呼ばれた由縁も書かれていた。
「これは……?」
「魔道大全。いつの間にか持ってたんだが、魔法についてかなり詳しく書かれている」
「それはほんとに正しい情報なのか?」
「それについてだが、俺の知っている情報はすべて一致しているから恐らく信用してもいいと思う」
「だったら聞きたいことが……」
そのとき、チャイムが鳴る。健吾は友輝の話を遮った。
「おっと、ホームルームの時間が終わったみたいだな。一時間目は鹿山先生の地理だな、みんなしっかりと挨拶して‥‥」
「ここが2-3の教室かぁ!落第したクズどもがいっぱいだなぁ」
「おい、止めてやれよケン。こいつらも必死に生きているんだからw」
教室の扉がいきなり開くと、二人の男子生徒が入ってきた。
「君たちもしかして、1組の生徒かな?」
「そうだよセンセ。
このクラスの落ちこぼれどもと一緒にしないでよ?」
「フーンじゃあお前らはこのクラスの奴らに勝っているとでも?」
「当たり前だろ?
この学校では二年生のはじめにテスト結果や体力測定でクラスが分けられるんだ。
優秀クラスの俺らが3番手の3組の人間に負けるはずないだろ」
するとレイラが声を上げた。
「なんでそんなことを言うんですか?
落ちこぼれだのクズだの同じ人間なのに‥‥」
「はぁ?この学校で落第した生徒なんてあんたらしかいないの。
そんなしょーもない奴らに付き合うのもめんどくさいのに何で自分たちがクズって理解してないんだよ?」
「で、でも‥‥」
「いいだろう」
健吾が声をかける
「6時間目に話そうと思っていたが今月末、球技大会がある。
そこで勝負したらどうだろうか?」
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