第79話 結成! 無色の翼
受付嬢に誘われて元の窓口に戻ったシュウ達に改めて受付嬢が言葉を掛ける。
「お疲れ様でした。ではこれから無色の翼の皆様に識別札を発行させて頂きます」
受付嬢はそう言うと、後ろに控えていた制服を着た同僚と思われる女性に声を掛ける。
「準備を」
「はい」
女性は数種類の金属片……首から下げるタグのような物を手に窓口前までやって来る。
反対の手には魔導筆と呼ばれる筆を持っていた。
どうやらこの女性は方陣士らしい。
「では登録させて頂きます。先ずはクムト様から」
方陣士の女性は金属片から鉄のタグを選び手に持つ。
タグの表面には剣に蛇が絡まった意匠が施されていた。パーンドギルドの紋章である。
女性は裏面に魔導筆を当てと、
「
魔導具の起動を宣言する。と同時に魔導筆に光が点り、光が寄り集まって小さな魔方陣を描く。
「転写」
紙片に書かれたクムトの文字が鉄札の裏面に描かれる。
まるで文字を焼き付けた様に綺麗にクムトの字が記載された。
女性は再び別の鉄札を取ると、再び魔方陣を描く。
「転写」
今度はデュスの名が刻まれた。
方陣士の女性はその後も銅札に同様の作業を行いティルの識別札を作成する。
「では、続きましてシュウさんとシュペルの登録を行います」
残されていた青銅の札に各々の名前を刻んでいく。
「はい。これで完了となります」
頭を下げると少し後ろに下がり、受付嬢に場所を譲る。
受付嬢はタグを纏めて取ると、一つずつチェーンを通していく。
出来上がったタグをクムトに差し出しながら、受付嬢が最後の締めの言葉を述べた。
「お疲れ様でした。これで手続きは終了となります。これより後は壁から依頼票を持って受付にいらしてください。何かご質問ありますか?」
「うむ。先のスキルブックの魔導具は販売しておらんのかの?」
「あちらは販売致しておりません。必要があればまたお申し出頂ければお貸しする事は出来ますので」
「それは残念じゃのう」
デュスはそう答えた。
他に意見が無い事を見計らって受付嬢が挨拶に移った。
「では今後もパーンドギルドを宜しくお願い致します」
受付嬢は一つ深く頭を垂れながらも決して笑顔を絶やさずに、シュウ達がギルドを出る迄見送るのだった。
こうして新たなパーティ『無色の翼』は正式にパーンドギルド所属となり、シュウ達は新たに冒険者として活動する事になるのだった。
「ならばシュウは六種の野獣と合成しとって、各三つずつ合計で十八個のスキル……いや、アビリティかの……を持っとると言う事じゃな」
図書館への道すがらデュスはシュウにそう説明され頭を抱えていた。
「……シュウよ。はっきり言って、お主は目茶苦茶じゃよ。普通では考えられんわい」
「それよりあの方陣士の人って凄かったね。あんな風に魔方陣って使えるんだー。知らなかったよ」
「そうだね。方陣士はティル以外で初めて見たかな。使い方次第で色々出来そうだよね」
デュスの言葉をスルーし会話を始めた二人に、デュスが呆れた様に言った。
「お主らはシュウについては、それでいいんかの……」
「だって、シュウだし!」
「シュウさんについては、そう言うモノなんだと思った方がいいと思うよ、デュス」
「全く……お前らは人の事を何だと思ってんだ? 一度確りと聞いとく必要がありそうだな?」
シュウは二人の反応を見て、冗談めかしてそう言ったが、シュウをよく知るクムトはその言葉が半分くらいは本気だと気付き、慌てて言葉を継ぎ足した。
「いや違うんですよ。シュウさんの持つアビリティはあの施設の実験が元じゃないですか。今シュウさんの体には不都合が起きてない様なので、それよりも魔方陣について知った方が懸命かと……」
「……モノは言いようだな、まぁいい。それよりこれから図書館に向かうが、調べ物は各自が優先して調べたい物を調べてくれ」
クムトの精一杯のフォローに溜め息は吐きながらシュウが今後の予定について話す。
「シュウよ。ワシはお主の調べ物に付き合おう。お主は字が読めんじゃろ?」
「ぬっ……た、確かにそうだった……ならデュスは俺のアビリティに付いて調べるのを手伝ってくれ」
デュスの提案にシュウは言葉に詰まりつつも肯定し手伝いを申し出る。
「ふぉふぉふぉ。了承じゃ」
「なら僕は神話とかを調べてみます。何か神に関する事が分かるかも知れませんからね」
「あっ。私は魔方陣について調べたい」
「すまんがティルにはその前にやって貰いたい事がある」
ティルの意見をシュウが阻み、頼みを申し出た。
「えっ? な、何?」
「そんなにビクつくな。単にさっきの方陣士がやってた様に、本の内容を複写出来ないかを試して欲しいだけだ」
「あぁーっ、そんな事かあー。うん、任せてよ。ふっふっふっ。私の新しいスキルの出番だね!」
かなり自信ありげに言うティルの様子に、興味が湧いたのかデュスがスキルについて問い質す。
「ティルや。そのスキルとは何じゃ?」
デュスの問いに、鼻息も荒くティルが自信満々にいい放った。
「よくぞ聞いてくれたわ。新しいスキルの名前は想像転写! 思ったり、見たりした物を転写出来るのよ! さっきの方陣士を見て気付いたわ。おそらく!」
「いや、おそらくって何?」
最後の最後で弱気な発言をするティルにクムトがツッコミを入れる。
「まぁ試してくれ」
「任せときなさい!」
満面の笑顔で言うティルの様子にそこはかとない不安を感じつつも、シュウはそう言うのだった。
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