第77話 アビリティ


「なら、次は俺だな。一応ヒューマ族の血は流れていると判断される筈だ」



〈スキル〉



〈ア◆リテ○〉


角粘軟(○▼、◆□、¥▼)


鬼巨人(◇▲、#◆、▲△)


鎌蜘蛛(%▽、◆#○、■◇▲)


風牙狼(●◇#、%▼■、#○)


影蝙蝠(□#◆、○◆%、◆▽)


愚者火(#◆、○¥、□▲)



 そこに浮き上がってきたのは、文字化けしたものだった。



「で、何と書いてある?」


 シュウは期待しながらクムトに問いかけるが、クムトはどこか困惑している様子だった。


「……いえ、その……」


「……何か文字化けしてる……」


「……何?」


 シュウは二人の反応に当惑してしまう。

 何と言ったのか、文字化けがどうのと言っていた気がしたが。


「スキルが文字化けしているのか?」


「あっ、いえ。スキルは空欄です」


「うん。スキル無いね。代わりにア何とかリテ何とか、って書いてあるよ」


「その下は野獣の名前があります。その横には……文字化けしてて読めないですね」


 何とも要領を得ない。

 よく分からない何かの下に野獣の名前が記載されており、その横も文字化け。


「あ……何だって」


 もう一度ティルに問いかける。


「ア、何とか、リテ、何とか、だね」


 アから始まるモノで、その下には野獣の名前。


「クムト。野獣の名前は何と書いてあるか分かるか?」


 シュウは脳をフル回転させながら、クムトに野獣の名前を問う。


「はい。見知ったのだと角粘軟コルノリモ影蝙蝠ソンブシェラゴ何かがありますね」


 その名前には心当たりが有る。有りすぎた。

 その野獣達はシュウに合成された野獣の名前だ。


「六つか……ア何とかリテ……合成元の野獣……能力……あ、び、りて、い……アビリティか!」


 シュウが悟った様に呟いた。

 そう、アビリティ……つまりは能力。シュウが持っている能力を示しているのだ。


「……成る程。確かにそうかもしれませんね。だとすると……横にあるのは……野獣の個別の能力ですか?」


「ああ、成る程ね。だから三つずつ書いてあるんだ。ならシュウって……えっと…十八……えっ? 十八個も能力が有るの?」


 ティルが能力の数を数えて唖然としている。


「……そうらしいな。だがそれが何かは文字化けしてるんだろ」


「はい。数だけしか分かりません」


 クムトが残念そうに言うが、ここまで来たらシュウは焦らない。

 野獣の名前が分かっただけで選択肢は増えるのだ。

 調べる方法などいくらでも思い付く。野獣の名前から能力を逆引きすればいいだけなのだ。


「なら名前だけでも覚えててくれ。後で図書館で調べてみよう」


「そうですね」


「うん、覚えたよ。私、記憶力には自信があるんだ!」


「助かる」


 元気に言ってくるティルに、どこか安心してシュウが頼んだ。


「なら今は……って、おいデュス! いい加減戻って来い!」


 軽くデュスを揺すって、現実復帰させる。

 思考の渦に嵌まっていたデュスが漸くシュウ達の事に、自分が何処に居るのかに気付いた。


「ん? おお、すまんな。ちょっと考え込んでしもうたわい」


「もう! ちょっとじゃなかったよ! こっちは大変だったんだだから!」


「うっ……す、すまんの。で、何が大変なんじゃ?」


 ティルの剣幕にデュスは素直に頭を下げる。


「それは後で話そう。今は登録に関してだ。俺はスキルは公表しない方面で進めて行きたいと思う」


「ですね。僕も賛成です。特にシュウさんは説明出来ませんから」


「私も同じかな。属性持ってないなんて言いたくないよ」


 三者の意見にデュスも反対はなかった。言わないに越した事はないとすら思っていた。


「ならば、スキルは無しで登録だけ行うかの」


 デュスはそう言うとクムトを連れだって受付嬢の元へ向かうのだった。

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