妙な依頼人

 そろそろ「証拠のかわりに」の内容に入っていくことにしましょう。安楽椅子探偵がどうの、助手の役割がどうの、と話を広げてしまいましたが周辺の問題はこのあたりで区切りをつけます。

 あらすじはこんな感じ。ネロ・ウルフ(田中訳ではニーロ・ウルフ)のもとに夫婦だという依頼人がきます。男は共同経営者に命を狙われていると主張。ネロ・ウルフにボディガードを頼むのかと思いきや、そうではありません。男は共同経営者の優秀さを理解していて、共同経営者の男なら必ず自分を始末するだろう、というのです。じゃあ、男の依頼はなんなのか、というのが導入部。

 以前に少しハードボイルドとの類似に触れましたが、ハードボイルドの入り口も妙な依頼というのは一つのパターン。探偵が最初の依頼から外れて徐々に事態が妙な方向に展開していくのもありがちです。「証拠のかわりに」が具体的にどう展開するか詳しくはここには書きませんが、さまざまな捻れをへて、真相にたどり着きます。

 冒頭から作者が仕掛けてきていて、結構、本格ミステリの香りが漂うのですが、ゴリゴリの本格ミステリマニアからすれば、ちょっと許しがたい点がありそうです。

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