クイーンの悲劇

 今回、「危険な連中」(「危ないやつら」)の真相に少し触れます。センシティブな箇所の前に再度、注意喚起をしますが、未読のかたはご注意ください。


 クイーンの場合、誤った推理は悲劇を生み出しました。これはクイーンという作家が遊び心はあるものの、基本的には「ど」がつくほど真面目だったからでしょう。あくまで筆者の推測ですが。

 以前、英語に詳しいミステリマニアの人に「原文を読めばわかるけれど、クイーンの文章は真面目」ということを言われたことがあります。

 対してフレドリック・ブラウンはどうか。

 少なくとも「危険な連中」(「危ないやつら」)で試みているのは、悲劇ではありません。


        !!!注意!!!



 この先、フレドリック・ブラウン「危険な連中」(「危ないやつら」)の真相に具体的ではありませんが言及します。未読のかたはご注意ください。






  !!!!!センシティブな部分、ここから!!!!!






 むしろ、喜劇なのです。

 施設から抜け出した犯罪者がどこにいるかもわからない。目の前にいる男が逃亡者かもしれない。そんなシリアスな展開から一転して、ニヤリとさせられる結末に繋がるこの話の妙は、オチだけではありません。

 フリの部分にあたる、視点人物がベルフォンテーンからジョーンズに切り替わるところ、さらにその先の第三の人物に切り替わるところにこそ、喜劇の核があるように感じます。

 だからこそ、入り口はサスペンスを装う必要があったのではないでしょうか。





  !!!!!センシティブな部分、ここまで!!!!!




 短編集『真っ白な噓』の収録作には、かなりダークなものがあります。フレドリック・ブラウンのしゃれたセンスにより、いわゆるイヤミス的な雰囲気ではなく、読後感は胃もたれするようなものにはなっていません。

 全体として軽妙洒脱に仕上げられていますが、「笑う肉屋」や「叫べ、沈黙よ」、「世界が終わった夜」などは単体でじっくり読み込むと泣きたくなるような作品。

 クイーンの野心的な取り組みが頭にあると「アリスティードの鼻」なんて、ひどく噛みごたえがあります。

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