推理せずにはいられない

 今回は「危険な連中」(別題「危ないやつら」)の中盤の内容に触れます。真相や結末は明かしませんが、事前に情報がなく味わいたいというかたは、今回はここで読むのをやめることをおすすめします。

「なんだよ、せっかくのぞいたのに」というかたに申し訳ないので、《!!!!!!!!!!!》で中盤の展開について触れた部分を挟み、最後に問題のない形で少し「危険な連中」について書くことにします。


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 ベルフォンテーンは、ジョーンズと名乗った長身のやせた男性の素性を推理します。

 この推理は手堅いものに思えます。手がかりというピースがきれいにピタッとはまるように感じるのです。

 少なくとも私にはそうでした。なにより重要なのは、推理をしたベルフォンテーンが自らの仮説が妥当であると感じていること。

 だいたい、自分が思いついた考えというものは正しいと信じて疑わないものです。

客観的に検証すると、ベルフォンテーンの推理は、まず彼の頭のなかに真相・結論という絵が漠然とあり、手がかりというパーツを検証していくスタイルです。

 ぼんやりとでも絵という全体像があるがゆえに、部分は全体像に合致するように歪められて解釈されがちです。不明瞭な部分を補正のような現象が生じます。







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「危険な連中」で展開される推理の一部は、仮定した結論が正しいかどうか、部分を検証するというものです。

 細部を検証して、結論が間違えていないか確かめると言い換えてもよいでしょう。

 この推理方式はなにも「危険な連中」だけで展開されるものではありません。ミステリの基本的なフォーマットとしても差し支えないほど、ありきたりなものです。

 注意すべきは「結論が仮定してある」ことを意識しないと、細部の検証から結論を導き出したように感じてしまうことです。

ここに名探偵の落とし穴というか、推理せずにはいられない人間のはまる罠があるのです。

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