乱歩からの出題

 この『世界推理短編傑作集』シリーズに取り上げられている作品の前には、選者の乱歩による短い作品紹介があります。

一部でネタばらしをしているのはご愛嬌。乱歩だからこそ許されるのかもしれません。

「危険な連中」の作品紹介は、こんな問いかけでしめられています。引用しましょう。



 コリアー、アイリッシュ、ヘクト、ブラウンと並んだ推理短編の質的変化に、読者はお気づきであろうか?


 『世界推理短編傑作集5』(江戸川乱歩編 創元推理文庫) P.190



 継続的にこの連載を読んでくださるかたには説明不要かと思いますが、少し補足します。

 ジョン・コリアーは“Back for Christmas”、ウィリアム・アイリッシュは“The Fingernail”、ベン・ヘクトは“Miracle of the Fifteen Murders”が収録されています。

 せっかくですので、しばらくは乱歩からの問題を考える形で進めていきます。

 正直に打ち明けてしまえば、この「危険な連中」も紹介が難しい作品なのです。とても好きな作家の、それも、個人的に上位にランクインする作品なので、あまり細かいことを書かずに読んでもらいたいのです。

 乱歩の投げかけに対する答えを探すということで、お茶を濁そうというのが奥底にある魂胆。

 まずは「危険な連中」の簡単なあらすじから。

 ベルフォンテーン氏は小さな駅にいます。そこに鳴り響くサイレン。五マイル先にある病院から、犯罪者が脱走したのです。

 ベルフォンテーンは列車でジョーンズと名乗る男に出会うのですが、どうもこのジョーンズという人物には気になるところがあり……

このあたりにしておきましょう。

 さて、乱歩の問題ですが、今のところ、ぼんやりと私の頭の中にあるのは「スリルと諧謔」の配合の比率の変化です。

 この仮説が正しいのか、他にアイデアが出てくるのか、「危険な連中」を深読みしながら考えていくことにします。

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