真っ白な噓

 今回から「危険な連中」を取り上げます。まずは基本情報から。

 作者はフレドリック・ブラウン。SFでもミステリでも、短編でも長編でも、なにをやらせても達者な小説の達人。

 発表は1945年。巻末の戸川さんの「短編推理小説の流れ 5」によるとダイム・ミステリ・マガジン1945年3月号に発表後、短編集『真っ白な噓』(1953)に収録とのこと。

 この短編集が大傑作。収録作品に名作が多いうえに、短編集トータルとしてみても非常にいい。具体的にどう「いい」のかは、この企画では踏み込まないことにします。

 少しややこしいのは旧訳の創元推理文庫『真っ白な噓』にオリジナル版にある「危険な連中」がカットされていること。これは同じ創元推理文庫の『世界短編傑作5』(今の『世界推理短編傑作集5』)に「危険な連中」が収録されているからです。

 このあたりの重複する作品を削る理由はクイーンの「いかれたお茶会の冒険」のときに触れました。

現在、創元推理文庫には二つのバージョンの『真っ白な噓』があります。2020年に越前敏弥さんによる新訳が出ているのです。

 越前訳では「危険な連中」が「危ないやつら」という新訳で読めます。

 この作品を選んだ乱歩はどう評しているのか。「話術の妙だけで綴った短編と評しても、いいすぎではないだろう」(P.190)と扉の作品紹介にはあります。


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