戦争の影
このお話では、医者たちの告白が開催される「Xクラブ」の最後の会合の模様が描かれています。
なぜ謎の集会が開かれなくなったのか。それは戦争の影響。
それどころではなくなった、というわけです。
おおぜいの人が簡単に死んでいく戦争と、叡智と経験を駆使して一人の人間の命を救おうとする医療というものの対比は、作者の狙いだと思います。
どうも作者のベン・ヘクトはひねくれた人というか嫌味の達人というか、この作品にも凝った表現が見受けられます。いくつか紹介しましょう。引用はすべて『世界推理短編傑作集5』(江戸川乱歩編/創元推理文庫)からです。
研究材料にされているのではなくて治療してもらっているのだという妄想のもとに、薬品やメスや呪文のわけのわからないたわごとに身をまかせている、われわれ大昔からのモルモットども(P.157)
集合地に向かう途中の爆撃機乗りにも劣らないほど、口がかたい(P.158)
医業で高位に立つことは、せいぜい、高い山頂に花を咲かせているエーデルワイスの茎のように目立つ程度(P.160)
医術は依然として
と、まぁ、こんな感じです。
登場人物のキャラクターづけでやっている部分はあるのでしょうが、これはベン・ヘクト自身の考えに近いのではなかろうかと邪推してしまいます。
きわめつけは戦争のことを「世界は、生活様式と魂との再検討にとりかかった」(P.158)としていること。
結果的に最後となった会合に初参加の医師が加わるというのも、ひねくれています。
ここでは真相に触れませんが、読後、タイトルにも皮肉がこめられていると気付きます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます