乱歩とヒッチコックの接点

クイーンの「いかれたお茶会の冒険」のときに江戸川乱歩は『不思議の国のアリス』とどの程度、接点や思い入れがあったのかといったことを書きました。

 そのとき、乱歩関連の文献からアリスに関する言及箇所を探すという試みをしました。このチャレンジは片っ端からしらみつぶしに読むというよりも、アリスやルイス・キャロルについて触れていそうなところに見当をつけるというアプローチをしました。

 今回もやってはみたのですが、なかなかうまくいきません。

 ……と、ここまで書いたのは、つい先日のこと。

 講談社文庫から出ている【江戸川乱歩推理文庫】シリーズの目次をパラパラやっているうちに、手がかりとなりそうなものがずいぶんと出てきました。

 まずは58巻の『乱歩随筆』から【ヒッチコックのエロチック・ハラア】。これはヒッチコックが来日した際のパーティーに乱歩が出席し、ヒッチコックと顔をあわせたときのことや、映画世界社「映画の友」の座談会に乱歩が急遽、出席したときのことなどが書かれています。

 ハラアってなんだよ、というかたもいるはずですので説明しますと、ホラーのことです。乱歩が「ホラア」と発音したところ、ヒッチコックには通じず、「ハラア」と訂正されたという話から、そうなっています。初出は「宝石」昭和三十一年二月号。

 続いて63巻『子不語随筆』から【ヒッチコック技法の集大成】。これはパトリシア・ハイスミス原作の映画「見知らぬ乗客」評です。初出は「アサヒグラフ」昭和二十八年四月二十九日号。

 もう一つ『子不語随筆』からは【ヒチコック「ダイヤルMを廻せ」評】(ヒチコックと小さな“ッ”がないのは原文のまま)。初出は「アサヒグラフ」昭和二十九年九月十二日号。そして、【「間違えられた男」を観て】。初出は「大阪新聞」昭和三十二年六月九日。

 変わり種ですと48巻の『悪人志願』から短編「ラムール」。これは小酒井不木との合作。初出は「騒人」昭和三年。

 なぜこれがヒッチコックに関連するかといえば、日本版「ヒッチコック・マガジン」昭和三十一年一月号のために乱歩が書いたショートショート「指」の原型だから。このあたりの事情は『乱歩随想』収録の【あとがき「江戸川乱歩全集」(桃源社版)】に書いてあります。

 なんだか「クリスマスに帰る」本編よりも乱歩とヒッチコックという話ばかりしています。この問題はこの企画ではなく、別の企画を立ち上げて掘っていたほうがよさそうです。

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