完全犯罪のオチ
今回から“Back for Christmas”を取り上げます。
旧版(『世界短編傑作選』)ではないもので読んだ記憶があるんだよなぁ、と心当たりを調べますが、なかなか見つかりません。
ネットで調べると早川書房さんから出ている『炎のなかの絵 異色作家短篇集1』に「クリスマスに帰る」は収録されているようですが、どうもこれのような気がしない。ネットに出ている書影のイメージが違う。
さまざまなアンソロジーに頻繁に収録されているんだろうな、ということだけはわかりました。
珍しく初回からあらすじを紹介します。
カーペンター博士夫妻は旅行に出ることになります。夫人は近所の人にあいさつをして回ります。「クリスマスまでには戻ってきますので」と。以上です。
簡単すぎましたでしょうか。でも、ここまでにしておきます。とても短い作品ということもあり、これが限界という気がします。
もしかすると「ん? それ読んだことはないけれど、知っているぞ」というかたがいらっしゃるかもしれません。おそらくTVドラマシリーズ「ヒッチコック劇場」でご覧になったのでしょう。扉裏の作品紹介で乱歩がヒッチコックの名前を出しています。引用しましょう。
この短い小説は推理小説の条件を充分備えている。犯人も被害者も完全犯罪も。そしてまた、ヒッチコック好みの痛烈なオチも。
『世界推理短編傑作集 5』(江戸川乱歩編 創元推理文庫)P.92より
傍点部は私がつけたのではなく原文のまま、つまり、乱歩が強調しているのです。
ちょっと嬉しくなるのは「完全犯罪」という四文字があること。完全犯罪への憧憬は乱歩を語るキーワードだと思うのです。
少なくとも、さきほどの文章を読む限りでは、完全犯罪が推理小説の条件であると乱歩が考えていたとすることはできそうです。どういう形で完全犯罪というものを扱うか、というのはさらに考えていく必要はありそうですが。
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