ルールの共有

 ミステリにおいてルールというのは重要です。こと特殊設定ミステリ、SF的設定を持ち込む場合、ルールの明示と共有というのは大事です。

 ジャンルというマクロなことでなく、もう少しミクロな話でいえば、ゲームを扱った作品ではゲームのルールを過不足なく説明する必要があるでしょう。

 前回『ひらいたトランプ』を紹介して、興味深い試みをしているのに世評が低いといったことを書きました。理由の一つは、ブリッジのルールが日本の読者になじみが薄い点でしょう。

 解決の一つの手としては、ルールを説明する、というものがあるのですが、じゃあこれを作品内でやればいいのかといえば……これも違う気がします。推理小説としてのバランスを欠きます。

 ブリッジに親しんでいる文化圏の人々にとっては、よく知っているルールの説明が作品内にあるのはうっとうしいはず。

 翻訳の悩ましいところでもあり、いいところは、文化の壁を越えることです。

 なじみの薄いゲームのルール問題で、はたと膝を打ったのは国書刊行会から出ているパーシヴァル・ワイルドの『悪党どものお楽しみ』。付録として作品に登場するカードゲームのルールの簡単な解説がついているのです。

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