聖者の知名度

 今回からレスリー・チャーテリス作、“The Mugs’ Game”、「いかさま賭博」を取り上げます。

 聖者セイントことサイモン・テンプラーを主人公とするシリーズで有名……というのは、ミステリ研究書などを読めば出てくる知識なのですが、日本での知名度はどうでしょうか。

 文庫の短編集が出ていて、書店の棚にないと厳しいのかもしれません。アンソロジーピースともいうべき、この作家ならまずこれ、という目玉の作品がないとつらいのかもしれません。

 セイントものなら、やはり「いかさま賭博」だよなぁ、となるほど他の作品を読んでいないので苦しいのですが、「いかさま賭博」が「密室の行者」や「ズームドルフ事件」みたいな歴史的名作かといわれれば、うーん、違う気はします。

 この企画で読み直す以前に、旧版(『世界短編傑作集』)で「いかさま賭博」を読んだほかに、二、三、セイントものを読んでいる記憶があるのですが、どこで読んだか思い出せない。

 単著ではなくアンソロジーに違いないと『ミニ・ミステリ傑作選』(エラリー・クイーン編/中村保夫・吉田誠一・永井淳・深町眞理子 訳/創元推理文庫)を引っ張り出してきました。

 この『世界短編傑作集』シリーズの収録作家でいえば、こんな感じ。

 ダンセイニ「演説」、チェーホフ「子守歌」、カー「パラドール・チェンバーの怪事件」、アリンガム「見えないドア」、ベン・ヘクト「シカゴの夜」、クイーン「角砂糖」、レックス・スタウト「サンタのパトロール」。

 パトリック・クェンティン(Q・パトリック)の名前もありますが、セイントものは入っていない。

 はて、どこで読んだのだろうかと首を傾げます。神保町で適当に買った雑誌で翻訳が載っていたのかとも思うのですが、さすがにそこまで引っ張り出すわけにもいきません。

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