細かな目配り
軸となるアイデア以外にも、細かな目配り、気配りがされている作品はいいものです。書き手としては本当に勉強になります。
この「好打」にも実に繊細な配慮がされています。一つ挙げるならば、死体発見現場の近くに採石場があり、しょっちゅう爆発音がしているため、落雷の衝撃音がしても誰も気付かなかった、という設定。これにより、雨が降っていないのに雷が落ちて被害者をしに至らしめたという可能性が排除しきれないのです。採石場があるという点は、もう一つ重要な意味を持つのですが、それはここでは書かずにおきます。
他にもゴルフコースの起伏のため、死体周辺は周囲から見ることができなかったことも大きいでしょう。被害者は死の直前にナイスショット、好打をしたと思われる状況が語られるのですが、プレーしている姿は誰にも見られていないのです。
あれ、ゴルフってペアなりグループなりでやる競技じゃないの、と私も思ったのですが、無類のゴルフ好きで一人で毎日のようにコースで練習しているという設定がここで生きてくるわけです。性格には、一人でコースにいさせるために、そういう設定を作者が用いたというところなのでしょうが。
目撃という点では、もう一つ、面白いことがあります。実は被害者らしき人物が一人でプレーしているところを見ていた人物がいるのです。ただ、その人物は飛行機で上空から見ていたため、はっきりと被害者だったと証言することができません。目撃した時間と被害者の行動パターンから、推測できるだけで正確には被害者を目撃ではないのです。
作品内では「問い」として設定されることはないのですが、疑り深い読者ならば「飛行機の操縦士が目撃したのは本当に被害者なのか」と考えることでしょう。
また、書きようによっては、はるか上空の目撃者による視線の密室みたいな雰囲気に持っていくこともできたでしょう。
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