訳と雰囲気と古典と新しい読者と

 今回から世界推理短編傑作集の五巻に入ります。いよいよ最終巻です。

 この連載を始めたのが昨年の六月のことですから、一年以上経過してしまいました。ようやく終わりが見えてきました。

 さて、五巻の巻頭は“The Border-Line Case”です。作者はマージェリー・アリンガム(1904~1966)。1936年の作品です。

 旧版(世界短編傑作選)と新版(世界推理短編傑作集)とでは、この作品の訳が変わっています。「ボーダーライン事件」だけでなく、新版では新訳になっている作品がいくつかあります。

 言葉というものは変化していくものなので、より現代に使われている言葉に近いものにするという工夫は必要であり、大事だと感じます。特にこのシリーズは古典を読み継いでいこうという狙いもあるので、新訳は歓迎すべきこと。

 もちろん、なじみのある旧訳で読みたい、古典なので今の言葉でないほうが雰囲気に合致している、などという声もわかりますが、新しい読者の入り口としてどうあるべきかと考えると、新訳はのぞましい試みだと感じます。

 旧版で翻訳を担当したのは、宇野利泰さん。古くからの海外古典作品ファンにはおなじみの名前ですね。新訳は猪俣美江子さんが担当しています。

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